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第11章 向き合う覚悟
78話・塗り替えられた思考
しおりを挟む異世界に残ると表明した諒真に創吾が詰め寄る。至近距離で睨み合いながら、諒真はクッと笑って聞き返した。
「おまえ、オレに黙って何しようとした?」
「何のことですか」
「しらばっくれんな。全部知ってんだよ」
「だからって、君が異世界に残るなんて。由宇斗たちも何故あんなことを」
「あんなん嘘に決まってんだろ」
全てはルノーを騙すための嘘に過ぎない。
油断させ、事を急がせないための方便。
「そんなことをする必要がありますか?君たちは大人しく元の世界に帰ればいいだけなのに!」
ギリ、と肩を掴む創吾の手に力が入る。
諒真は逃げることなく真っ直ぐ目の前の男を見据えた。数日会わない間に少し痩せたようだ。眠れていないのか、薄っすら隈が出来ている。何より目に光がない。
「おまえが一緒に帰ろうとしないからだ」
「え?」
「オレたちだけを帰そうとしてるだろ。勝手に悩んで勝手に決めて、それで本当にいいのかよ!」
「……ッ!」
諒真は怒っていた。
あの日の夜、調べている情報を共有してくれた。ようやく役に立てるかもしれないと思った矢先に拒絶され、距離を置かれた。その間に集めた話から、創吾が重要な決断をひとりでしようとしたことに気付いた。何も知らずにいたらどうなっていたか、想像しただけで身体が震えた。
「おまえには迷惑ばっか掛けてきたし、嫌われて当然だって分かってるよ。でも、そこまでして離れなくたっていいじゃないか……!」
元の世界にいた時、溢れる魔力を消費するために三日に一度、数時間から半日付き合ってもらった。再召喚されてからは、呑気に過ごす諒真とは違い、創吾は密かに情報を集めていた。時折怒っていたのは、考えなしに現地の男と親しくなり過ぎたことを責めていたのだろう。
「僕がいつ迷惑だなんて言いました?そっちこそ憶測でものを言わないでください!」
「言われなくても分かるんだよ!おまえずっとイライラしてただろ。オレが頼りないから!」
「また自分を卑下する!それ諒真くんの悪い癖ですよ。いい加減にしてください!」
「悪かったな!しょうがないだろ、こういう性格なんだから!おまえみたいに冷静な大人じゃねーんだよ!」
「あのですねぇ……!」
ヒートアップする言い合いの中で、ついに創吾がキレた。腹の底に押し込めていた黒い感情が再び頭を擡げてくる。
我慢していたのが馬鹿らしくなって、掴んでいた諒真の肩を離して突き飛ばす。絨毯の上に仰向けに倒れた諒真に馬乗りになり、首に手のひらを押し当てて起き上がれないようにした。
「僕だっていつも冷静なわけじゃないんです。そういう役割だからそうしてただけで、本当は狡くて欲張りでどうしようもない人間なんですよ」
「そ、創吾……ッ」
喉を押さえられ、諒真が苦しげな声で創吾の名を呼んだ。それを聞き、ニッと口角を上げて笑う。
「……これなら諒真くんの視界には僕しか映りませんね。もっと早くこうしておけば良かった」
やりたいように振る舞っている時だけ心と身体が軽くなる。無理やり抑え込んでいると苦しくなる。何故今まで耐えていたんだろう。馬鹿馬鹿しい。
創吾の思考が少しずつ塗り替えられ、より欲望に忠実になっていく。頭の中はもう組み敷いた青年を穢すことしか考えられなくなっていた。
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