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第9章 明らかになる謎
62話・呪いの副作用
しおりを挟む魔王とハイデルベルド教国が裏で繋がっていたかもしれないという創吾の仮説を聞き、諒真は恐ろしくなった。
「国ぐるみで魔王と繋がってたってことか?」
「グルというより何か関係があるのは確かです。貴族や国民は何も知らないと思いますよ。知っているのは大聖堂の上層部くらいじゃないかと」
国民は魔物の襲撃に遭い、かなりの被害が出ている。そして、前線に駆り出される聖騎士団にも死傷者が多かったという。もし関連があるならば、まず自国に被害が出ないようにするはずだ。
「先ほどの晩餐会で会ったエルヴィダさん。あの人くらいの地位の方なら恐らく知っているかもしれません」
聖騎士団団長、エルヴィダ・アクトゥル。
彼女は叩き上げの騎士ではなく、代々聖騎士団を取り仕切る高位貴族アクトゥル家の長子である。戦場には出ず、主に政治的な活動のみを担当している。話しぶりからして、こちらの世界に勇者一行を留めたいと考えていることは間違いない。
「もしそうなら、オレたちどうなるんだろ」
「教皇の体調が回復したら元の世界に送り返すと言ってましたが、今は臥せっているそうですからね。時間を稼いでいる間になんとか心変わりをさせるつもりなんじゃないでしょうか」
「心変わり、か……」
リエロが迫ってきたのも時間に限りがあるからだ。元の世界に帰ってしまえば二度と会うことはない。そう考えると、胸がちくりと痛んだ。
魔王と配下の名前が書かれた紙を見つめながら、諒真は無意識のうちに自分の唇に触れていた。その様子を見て創吾は眉間に皺を寄せるが、諒真に気取られぬようわざと明るく振る舞う。
「早く元の世界に戻りたいですね。まだまだ諒真くんを連れて行きたい店がたくさんあるんですよ。それに、諒真くんの住んでいる愛知県にも行ってみたいし」
「オレの住んでるとこなんか何もないぞ」
「駄目ですか?」
「別に、いいけど」
「約束ですよ」
「ん」
魔王の呪いの元である『呪いの核』は破壊した。元の世界に帰還する際に授かった能力が消えたら転移魔法は使えなくなり、簡単に行き来する手段が無くなる。幾ら約束をしたところで、現実的に考えれば難しい。
あんなに帰りたかったはずなのに、諒真の心の片隅には『異世界に留まりたい』と願う気持ちが僅かに芽生えてしまった。リエロからの告白も少なからず影響を与えている。仲間たちと散り散りになってしまうことも大きい。
迷いを誤魔化すように話題を変える。
「そういえば、由宇斗たちが元に戻ったかも」
「確かに。結局なんだったんでしょう」
「あれも呪いの影響だったのかな。『核』を壊した後くらいから普通になった気がする」
由宇斗は攻撃的になることが無くなり、無闇にヤキモチを焼くことも減った。将子もドレスに手を加えさせるような真似をしなくなった。
魔王の呪いの副作用で感情の制御が出来ない状態になっていたと仮定すれば、核を破壊した後に正常化するのは納得出来る。
自分にだけは変わらず嫉妬心を剥き出しにしてきた由宇斗を思い出し、創吾は首を傾げた。何故自分はまだ警戒されているのだろう、と。
「あれ?創吾、まだ顔の傷が残ってるぞ」
考え込む創吾を見て、諒真が頬の傷に気付いた。魔王城跡での戦いで負った、かすり傷程度の小さな傷だ。
「なんで治さないんだよ」
「この傷だけ治癒魔法の効きが悪いんですよ」
「ふうん、そうなんだ」
「諒真くんも手首に傷があるじゃないですか」
「ああ、さっき風呂で気付いた。どっかで引っ掛けたみたいでさ」
すぐに手をかざして治癒魔法を掛けるが、何故か傷は消えなかった。
「……僕、治癒魔法使えなくなったんでしょうか」
「魔法で治すほどの傷じゃないから発動しないんじゃね?」
「それならいいんですけど」
治癒魔法の効かない傷が存在する。どこか引っ掛かるものを感じながらも、創吾にはそれが何か分からなかった。
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