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第9章 明らかになる謎
61話・繋がり
しおりを挟む「おやすみなさい。また明日」
「ああ、おやすみリエロ」
リエロが出て行った後、諒真はすぐに創吾の元へと転移した。客室の造りや家具の配置はほぼ同じ。創吾はソファーに腰を掛け、書類らしき紙に見入っていたが、諒真が現れたことに気付いて駆け寄ってきた。
「遅かったですね」
「風呂に入ってたんだ」
「そうでしたか。僕もさっき軽く汗を流したところです」
「待たせて悪かったな」
「構いませんよ」
テーブルのある方へ向かう諒真を創吾が制した。す、と手が伸ばされ、頬にそっと触れる。
「……頬が赤いですよ。長湯しました?」
「あっ、いや、うん」
赤いのは、恐らくリエロに抱き締められたばかりだからだ。諒真は両手で頬を隠すようにして顔を逸らした。
「それより、話ってなんだよ。由宇斗たちのことか?」
わざと声を張り上げながら創吾の前をすり抜け、ソファーにどかっと座る。明らかに様子がおかしい諒真を不審に思いつつも、創吾は何も指摘せず隣に腰掛けた。
「僕が調べていたのは魔王とその配下のことです。文献に残っていないので時間が掛かってしまいましたが」
「魔王と配下……?なんで今頃」
既に倒した存在について調べて何の意味があるのかと諒真が問うと、創吾は一枚の紙を差し出してきた。そこにはこちらの言葉でなく日本語で幾つかの名前が記されている。
ザクルド・ウォーゴール
ヴェルム
マルディナ
カティオ
ザクルドは魔王、ヴェルム以下は魔王の配下の名前である。魔王城で勇者一行は彼らと対峙し、極限の戦いの果てに討ち滅ぼした。
「えっ……と、これは?」
困惑した表情で諒真は隣に座る創吾を見上げる。
「凱旋の式典の時から不思議に思っていたんです。あの時、大司教ルノーは僕たちの功績を讃えてこう言いました。……其方たちの働きにより長年世界を苦しめてきた魔王『ザクルド・ウォーゴール』ならびに配下『ヴェルム』『マルディナ』『カティオ』は成敗された、と」
「あ、ああ。言ってたな」
「僕たち、名乗りを聞いてませんよね」
「あっ……」
言われて初めて諒真は気付いた。
確かに、魔王城に乗り込んですぐ戦闘になだれ込み、ろくに言葉を交わしていない。魔王ザクルドが死に際に少し喋った程度。配下の三人とは何も話していない。
「オレたちが召喚される前にどっかで名乗ってたんじゃね?」
「そう思って調べてもらったんです」
「誰に?」
「ラミエナさんに」
「ああ……」
そこでようやく創吾がラミエナと密会していた理由を悟る。同時に、勝手に色々勘繰ってモヤモヤしていた自分が恥ずかしくなり、諒真は紙に見入るふりをして俯いた。
「魔物や魔族が出現した際に真っ先に対応に当たるのは聖騎士団です。ラミエナさんに頼んで当時の報告書などを調べてもらいましたが、名前を聞いた騎士はひとりもいませんでした」
魔族とは人型で意志の疎通が出来る魔物の総称だ。一定以上の知能があり、考えなしに暴れるだけの魔物と違って厄介な相手でもある。
「……じゃあ、なんでルノー様はあいつらの名前を知ってたんだ?」
「それは分かりません。大聖堂には秘密が多く、神託とでも言われてしまえばそこまでなんですが」
いつになく難しい顔をしている創吾に、諒真もこれが単なる興味による調べ物ではないのだと分かった。
「……もしかして、魔王と大聖堂には何か繋がりがある、とか考えてる?」
「はい。どのような繋がりかは分かりませんが、ただ魔王に侵略されていただけとは思えません。勇者召喚が出来る唯一の国として、ハイデルベルド教国は周辺諸国からかなり優遇されているようですから」
魔王との繋がり。
諒真は恐ろしくなって身体を震わせた。
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