【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
62 / 110
第9章 明らかになる謎

61話・繋がり

しおりを挟む


「おやすみなさい。また明日」
「ああ、おやすみリエロ」

 リエロが出て行った後、諒真りょうまはすぐに創吾そうごの元へと転移した。客室の造りや家具の配置はほぼ同じ。創吾はソファーに腰を掛け、書類らしき紙に見入っていたが、諒真が現れたことに気付いて駆け寄ってきた。

「遅かったですね」
「風呂に入ってたんだ」
「そうでしたか。僕もさっき軽く汗を流したところです」
「待たせて悪かったな」
「構いませんよ」

 テーブルのある方へ向かう諒真を創吾が制した。す、と手が伸ばされ、頬にそっと触れる。

「……頬が赤いですよ。長湯しました?」
「あっ、いや、うん」

 赤いのは、恐らくリエロに抱き締められたばかりだからだ。諒真は両手で頬を隠すようにして顔を逸らした。

「それより、話ってなんだよ。由宇斗ゆうとたちのことか?」

 わざと声を張り上げながら創吾の前をすり抜け、ソファーにどかっと座る。明らかに様子がおかしい諒真を不審に思いつつも、創吾は何も指摘せず隣に腰掛けた。

「僕が調べていたのは魔王とその配下のことです。文献に残っていないので時間が掛かってしまいましたが」
「魔王と配下……?なんで今頃」

 既に倒した存在について調べて何の意味があるのかと諒真が問うと、創吾は一枚の紙を差し出してきた。そこにはこちらの言葉でなく日本語で幾つかの名前が記されている。

ザクルド・ウォーゴール
ヴェルム
マルディナ
カティオ

 ザクルドは魔王、ヴェルム以下は魔王の配下の名前である。魔王城で勇者一行は彼らと対峙し、極限の戦いの果てに討ち滅ぼした。

「えっ……と、これは?」

 困惑した表情で諒真は隣に座る創吾を見上げる。

「凱旋の式典の時から不思議に思っていたんです。あの時、大司教ルノーは僕たちの功績を讃えてこう言いました。……其方たちの働きにより長年世界を苦しめてきた魔王『ザクルド・ウォーゴール』ならびに配下『ヴェルム』『マルディナ』『カティオ』は成敗された、と」
「あ、ああ。言ってたな」
「僕たち、名乗りを聞いてませんよね」
「あっ……」

 言われて初めて諒真は気付いた。
 確かに、魔王城に乗り込んですぐ戦闘になだれ込み、ろくに言葉を交わしていない。魔王ザクルドが死に際に少し喋った程度。配下の三人とは何も話していない。

「オレたちが召喚される前にどっかで名乗ってたんじゃね?」
「そう思って調べてもらったんです」
「誰に?」
「ラミエナさんに」
「ああ……」

 そこでようやく創吾がラミエナと密会していた理由を悟る。同時に、勝手に色々勘繰ってモヤモヤしていた自分が恥ずかしくなり、諒真は紙に見入るふりをして俯いた。

「魔物や魔族が出現した際に真っ先に対応に当たるのは聖騎士団です。ラミエナさんに頼んで当時の報告書などを調べてもらいましたが、名前を聞いた騎士はひとりもいませんでした」

 魔族とは人型で意志の疎通が出来る魔物の総称だ。一定以上の知能があり、考えなしに暴れるだけの魔物と違って厄介な相手でもある。

「……じゃあ、なんでルノー様はあいつらの名前を知ってたんだ?」
「それは分かりません。大聖堂には秘密が多く、神託とでも言われてしまえばそこまでなんですが」

 いつになく難しい顔をしている創吾に、諒真もこれが単なる興味による調べ物ではないのだと分かった。

「……もしかして、魔王と大聖堂には何か繋がりがある、とか考えてる?」
「はい。どのような繋がりかは分かりませんが、ただ魔王に侵略されていただけとは思えません。勇者召喚が出来る唯一の国として、ハイデルベルド教国は周辺諸国からかなり優遇されているようですから」

 魔王との繋がり。
 諒真は恐ろしくなって身体を震わせた。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...