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第9章 明らかになる謎
63話・黒い感情
しおりを挟む呪いの副作用が消えた。
しかし、創吾にはまだ気に掛かることがあった。
「そもそも、本当に呪いは掛かっていたんでしょうか」
「どういうことだよ」
「呪いの発動条件に疑問があったんです。『元の世界の人間に能力がバレたら死ぬ』って、非常に定義が曖昧だと思いませんか。どの程度知られたら、どこまで突き止められたら、とかハッキリしてませんよね」
「それは、確かに」
何をどこまで気をつけるべきかの指針は全くなかった。だから諒真はとにかく魔法が使えることを誰にも悟られないように苦労して過ごした。過剰に警戒し過ぎて日常生活に影響が出ていた。
その反動で、異世界に再召喚された時には解放感を感じたほどだ。
「もしかしたら、最初から『魔王の呪い』なんてなかったのかもしれません」
「そんな……!」
もしそうだとしたら、再召喚された意味が全く無くなってしまう。創吾の推測を俄には信じられず、諒真は難しい顔で俯いた。
「僕たちが元の世界での生活を窮屈に感じ始めた頃に再召喚して、異世界に永住することを望むように仕掛けたんじゃないかと考えてます」
「誰が」
「──この国が、です」
今度こそ諒真は言葉を失った。
「それで、ラミエナさんにもう少し探りを入れてもらっているんですが」
「え、大丈夫なのか?」
「何がです」
「だって、黒幕はこの国なんだろ?ラミエナが危なくないか」
「ああ……」
そこまで言われ、創吾はようやくその可能性に思い至ったらしい。目を丸くした後、フッと口元に笑みを浮かべている。スパイの真似事を辞めさせる気はないようだ。
「ラミエナは、なんでそこまでオレたちに協力してくれるんだ?」
下手をすれば騎士団団長や大聖堂の上層部に睨まれるかもしれない。嗅ぎ回っていることがバレたらその場で消されるかもしれない。
危険を顧みずに協力してくれる裏には、やはり創吾への好意があるのではないか。
「彼女は僕たちに恩があるんです。魔王を倒す旅の途中で彼女の生まれ育った村を救い、傷付いた家族の怪我を癒やしましたから。それ以来、僕の指示を優先してくれています」
「そう、か」
故郷と家族を救ってもらった恩返し。
ラミエナの行動理由が分かり、諒真はホッと息をついた。
「もしかして、彼女に恋愛感情があると思ってました?」
「あ、いや、そういうわけじゃ……」
「こちらの世界の人と恋愛なんかしたって無意味ですよ。どうせ離ればなれになるんですから」
「そう、だよな」
自分の迷いを言い当てられたかのようで、諒真は言葉を詰まらせた。
リエロの真っ直ぐな好意を拒みきれずに流されている。次に元の世界に戻れば二度と会えなくなるのだ。思いに応えることはお互いにとって良くないと分かっている。
これ以上仲が深まる前にきっぱりと断らなくては、と心の中で決意を固めた。
「明日の夜また来てくれますか?それまでにラミエナさんから新しい情報が届くと思うので」
「あー……」
明日の夜と言われ、諒真がハッと顔を上げた。
「ごめん。明日は先約があるんだ」
「先約?」
まさか断られるとは思っておらず、創吾は怪訝そうに眉をひそめて聞き返す。
「ええと、あの……リエロと」
虫除けにリエロを利用しろと言ったのは自分だ。諒真は素直に従っているだけ。それなのに、創吾は腹の底にドロっとした黒い感情が渦巻くのを感じた。
「もう約束したんですか。いつ?」
「さっき。ここに来る前」
転移した直後、諒真の頬が赤かったのは長湯のせいではなくリエロのせい。風呂を先に済ませていたのは、まさか。
無意識のうちに下唇を噛み、口の中に血の味が広がる。
「創吾?」
気が付けば、創吾は諒真をソファーに押し倒していた。
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