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第7章 入り乱れる思惑
45話・出発前夜の攻防
しおりを挟む──勇者一行が再召喚され、聖都に滞在した夜。
創吾は魔王のことを調べていた。与えられた能力の副産物なのか、異世界の文字も難なく読めるようになっている。消音や気配遮断などの支援魔法をうまく使って誰にも気付かれないように大聖堂の書庫へ忍び込み、様々な書物を読み漁った。
魔王が何度か代替わりしていること、今回倒した魔王ザクルドは近年になって台頭してきた魔族の長であること、魔族の長が死ぬと他の魔族や魔物も消えるということなどが記載されている。この辺りは聖騎士団の遠征部隊隊長のハルクからも説明があった。
創吾が知りたいのは『呪いについて』だ。
「魔王は確かに滅びたのに何故呪いは有効なんだろう。呪いの維持と発動には魔力が要る。どこからか供給を受けているはずなのに……」
魔王城跡地には『呪いの核』があり、聖騎士の攻撃を一切通さないという。つまり、魔法か何かで外部からの干渉を弾いているのだ。魔王の遺したものならば有り得る話だが、無尽蔵に魔力を内包するような物質が存在するはずがない。どこかに魔力の供給源があると考えるべきだろう。
支援や治癒系に限られるが、創吾も魔法を行使する。
しかし、成り立ちや仕組みを理解しているわけではない。能力を与えられた際に魂に刻み込まれた魔法を用途や状況に応じて使い分けているだけ。もちろん解呪の魔法も使えるが、何度掛けても手応えを感じない。呪いを掛けたのは魔王だ。並の呪いとは規格が違うのだろう。
それに、呪い以外にも気に掛かることがある。
前例はないかとページを捲るが、それらしい記述を見つけることは出来なかった。どれもこれもその辺の聖職者に聞けば出てくるような情報ばかり。
落胆から来る苛立ちを隠せず、創吾は乱暴に本を机に投げ出した。
「そのように手荒に扱われては本が傷んでしまいますよ、ソウゴ様」
「!……ルノー、様」
いつのまにか大司教ルノーがすぐ側まで来ていた。出入り口は防御盾で開かぬようにしたはずなのに、と創吾が警戒すると、ルノーはニッコリ微笑んで手の中のものを見せてきた。いわゆる棒鍵と呼ばれるシンプルな形状の鍵だが、何やら魔法が掛かっている。
「大聖堂には幾つか抜け道がありまして。諸事情で正規の扉が使えない時はそちらを使うんですよ」
机の上に散らばった本をきれいに揃えて積み直してから、創吾もニッコリ笑顔を作った。
「勝手に入ってすみません。行く先々で女性に追われて逃げ場を探しているうちに、こちらに辿り着きまして」
「そうでしたか。皆さまは今や英雄ですからね。令嬢たちも放ってはおけないのでしょう」
「客室にも押し掛けられて休まる時もありません。なんとかなりませんか」
「それはそれは……色々と行き届かずたいへん申し訳ございません。数日の間に貴族に通達を致しますので、今しばらくご辛抱くださいませ」
ルノーは恭しく頭を下げて丁寧に謝罪するが、表情は笑顔のまま。公認でやらせているクセにと思いながら、創吾もにこやかに「お願いします」と返す。勝手に書庫に忍び込んだことをあれこれ詮索されたくないからだ。
創吾は大司教ルノーを信用していない。
彼を通さず調べているのはそのためだ。
「さあ、もう遅い時間です。そろそろお部屋に戻られた方がよろしいですよ」
そう言われてしまえば、これ以上居座ることは出来ない。素直に書庫から出て客室へと戻る。室内に残っていた侍女に扮した令嬢たちを追い出し、扉を防御盾で塞ぐ。
「書物からは新しい情報は得られそうにないな。ルノーにも怪しまれたし、別の方法を取るか」
魔族のことを知りたければ実際に相対した者に聞くのが手っ取り早い。明日から行動を共にする聖騎士団の中に適任者がいるだろうか、と創吾は記憶を辿って人選を始めた。
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