【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

文字の大きさ
上 下
46 / 110
第7章 入り乱れる思惑

45話・出発前夜の攻防

しおりを挟む


──勇者一行が再召喚され、聖都に滞在した夜。



 創吾そうごは魔王のことを調べていた。与えられた能力の副産物なのか、異世界の文字も難なく読めるようになっている。消音や気配遮断などの支援魔法をうまく使って誰にも気付かれないように大聖堂の書庫へ忍び込み、様々な書物を読み漁った。

 魔王が何度か代替わりしていること、今回倒した魔王ザクルドは近年になって台頭してきた魔族の長であること、魔族の長が死ぬと他の魔族や魔物も消えるということなどが記載されている。この辺りは聖騎士団の遠征部隊隊長のハルクからも説明があった。

 創吾が知りたいのは『呪いについて』だ。

「魔王は確かに滅びたのに何故呪いは有効なんだろう。呪いの維持と発動には魔力が要る。どこからか供給を受けているはずなのに……」

 魔王城跡地には『呪いの核』があり、聖騎士の攻撃を一切通さないという。つまり、魔法か何かで外部からの干渉を弾いているのだ。魔王の遺したものならば有り得る話だが、無尽蔵に魔力を内包するような物質が存在するはずがない。どこかに魔力の供給源があると考えるべきだろう。

 支援や治癒系に限られるが、創吾も魔法を行使する。
 しかし、成り立ちや仕組みを理解しているわけではない。能力を与えられた際に魂に刻み込まれた魔法を用途や状況に応じて使い分けているだけ。もちろん解呪の魔法も使えるが、何度掛けても手応えを感じない。呪いを掛けたのは魔王だ。並の呪いとは規格が違うのだろう。

 それに、呪い以外にも気に掛かることがある。

 前例はないかとページを捲るが、それらしい記述を見つけることは出来なかった。どれもこれもその辺の聖職者に聞けば出てくるような情報ばかり。
 落胆から来る苛立ちを隠せず、創吾は乱暴に本を机に投げ出した。

「そのように手荒に扱われては本が傷んでしまいますよ、ソウゴ様」
「!……ルノー、様」

 いつのまにか大司教ルノーがすぐ側まで来ていた。出入り口は防御盾で開かぬようにしたはずなのに、と創吾が警戒すると、ルノーはニッコリ微笑んで手の中のものを見せてきた。いわゆる棒鍵と呼ばれるシンプルな形状の鍵だが、何やら魔法が掛かっている。

「大聖堂には幾つか抜け道がありまして。諸事情で正規の扉が使えない時はそちらを使うんですよ」

 机の上に散らばった本をきれいに揃えて積み直してから、創吾もニッコリ笑顔を作った。

「勝手に入ってすみません。行く先々で女性に追われて逃げ場を探しているうちに、こちらに辿り着きまして」
「そうでしたか。皆さまは今や英雄ですからね。令嬢たちも放ってはおけないのでしょう」
「客室にも押し掛けられて休まる時もありません。なんとかなりませんか」
「それはそれは……色々と行き届かずたいへん申し訳ございません。数日の間に貴族に通達を致しますので、今しばらくご辛抱くださいませ」

 ルノーは恭しく頭を下げて丁寧に謝罪するが、表情は笑顔のまま。公認でやらせているクセにと思いながら、創吾もにこやかに「お願いします」と返す。勝手に書庫に忍び込んだことをあれこれ詮索されたくないからだ。

 創吾は大司教ルノーを信用していない。
 彼を通さず調べているのはそのためだ。

「さあ、もう遅い時間です。そろそろお部屋に戻られた方がよろしいですよ」

 そう言われてしまえば、これ以上居座ることは出来ない。素直に書庫から出て客室へと戻る。室内に残っていた侍女に扮した令嬢たちを追い出し、扉を防御盾で塞ぐ。

「書物からは新しい情報は得られそうにないな。ルノーにも怪しまれたし、別の方法を取るか」

 魔族のことを知りたければ実際に相対した者に聞くのが手っ取り早い。明日から行動を共にする聖騎士団の中に適任者がいるだろうか、と創吾は記憶を辿って人選を始めた。
しおりを挟む
▼▽▼ みやこ嬢のBL作品はこちら ▼▽▼

《 最新作!大学生同士のえっちな純愛 》
お付き合いはお試しセックスの後で。

《 騎士団長と貴族の少年の恋 》
侯爵家令息のハーレムなのに男しかいないのはおかしい

《 親友同士の依存から始まる関係 》
君を繋ぎとめるためのただひとつの方法

《 わんこ営業マン×メガネ敬語総務 》
営業部の阿志雄くんは総務部の穂堂さんに構われたい

《 ダンジョン探索で深まる関係 》
凄腕冒険者様と支援役[サポーター]の僕
感想 48

あなたにおすすめの小説

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する

知世
BL
大輝は悩んでいた。 完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。 自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは? 自分は聖の邪魔なのでは? ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。 幼なじみ離れをしよう、と。 一方で、聖もまた、悩んでいた。 彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。 自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。 心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。 大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。 だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。 それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。 小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました) 受けと攻め、交互に視点が変わります。 受けは現在、攻めは過去から現在の話です。 拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。 宜しくお願い致します。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

秘めやかな愛に守られて【目覚めたらそこは獣人国の男色用遊郭でした】

カミヤルイ
BL
目覚めたら、そこは獣人が住む異世界の遊郭だった── 十五歳のときに獣人世界に転移した毬也は、男色向け遊郭で下働きとして生活している。 下働き仲間で猫獣人の月華は転移した毬也を最初に見つけ、救ってくれた恩人で、獣人国では「ケダモノ」と呼ばれてつまはじき者である毬也のそばを離れず、いつも守ってくれる。 猫族だからかスキンシップは他人が呆れるほど密で独占欲も感じるが、家族の愛に飢えていた毬也は嬉しく、このまま変わらず一緒にいたいと思っていた。 だが年月が過ぎ、月華にも毬也にも男娼になる日がやってきて、二人の関係性に変化が生じ──── 独占欲が強いこっそり見守り獣人×純情な異世界転移少年の初恋を貫く物語。 表紙は「事故番の夫は僕を愛さない」に続いて、天宮叶さんです。 @amamiyakyo0217

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる

彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。 国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。 王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。 (誤字脱字報告は不要)

処理中です...