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第7章 入り乱れる思惑
46話・新米騎士の告白
しおりを挟む夜間の見張りは聖騎士団が交替で行い、勇者一行は明日の魔王城跡地探索のための体力を温存する。
前回の旅では大きな天幕で雑魚寝をしたが、今回は全員バラバラだ。個別に夜這いでも掛けるつもりなのか、それとも物資に余裕があるからか。
「前回は魔物がひっきりなしに襲い掛かってきましたからね、一箇所に固まっていたほうが安全だったんですよ。今回は警戒対象が人間か獣だけですから」
そう言って笑うのは聖騎士団の遠征部隊に所属する数少ない女性騎士、ラミエナ・マジャールだ。小柄で素早く動ける彼女は斥候役も兼ねており、索敵や情報収集を担当している。
「ラミエナさん。教えてもらいたいことがあるんですが、よろしいですか?」
「まあ、ソウゴ様!私でお役に立てるのでしたら何なりと」
「ここではなんですから、向こうで」
創吾はラミエナを伴い、ひと気のない瓦礫の向こうへと消えていった。これまで女性を寄せ付けなかった創吾が自分から声を掛けたことで、周りにいた騎士たちがザワついている。焚き火を囲んで談笑していた諒真も気付いてはいたが、割り込むような用事もないのでその場に留まることにした。
「リョウマ様、そろそろ」
創吾が消えた方角をチラチラ気にしていた諒真にリエロが声を掛けた。
食事も終わり、明日の打ち合わせも済んでいる。あとは寝るだけ。夜間の巡回で周りにいる騎士の数は減っているが無人ではない。連れ立って天幕へ向かう諒真とリエロを誰もが黙って見送っている。
天幕の中に入り、大きく息を吐き出すと、諒真はごろりと寝転がった。
「はぁ、なんか気疲れしたな」
「ゆっくりお休みください。リョウマ様が眠られましたら出ていきますので」
寝そべる諒真の脇に片膝をつき、リエロは頭を下げた。
前回の旅では飾らない態度と口調で話していたが、騎士としての教育が進んだからか、先輩騎士や隊長のハルクが見ていなくても堅苦しい態度のままだ。
「この中なら誰も見てないし、おまえも横になれば?そんな体勢じゃ休まらないだろ」
「いえ、そういう訳には」
自分の隣をポンポンと叩いて「休め」と言っても、リエロは頑なに腰を下ろそうとしない。その様子に、諒真はプッと吹き出した。
「はは、なんかハルクに似てきたな。そーゆー融通が利かないとこ、そっくり」
「た、隊長にですか」
「受け答えも似てきたよ。前は敬語も下手だったのにさ、やっぱ毎日指導受けてると似てくるのかな」
諒真が指摘すると、リエロは明らかに動揺して表情を崩した。恥ずかしいのか頬を赤くして俯いている。天幕の中に揺らめくランプの明かりが彼の顔をより赤く見せた。
「……僕は、隊長のお役に立ちたいんです」
しばらく手のひらで頬を覆い隠し、気持ちを落ち着けてから、リエロがぽつりと呟く。寝転がったまま聞くのも悪いかと思い、諒真は上半身を起こした。
「それって、おまえがオレの相手に志願したことと関係ある?」
その問いに、リエロは少し迷ってから小さく頷いた。
「もし隊の中からリョウマ様たちに気に入られる者が出たら、隊長の評価が上がるんです。隊長のご実家である男爵家の地位も」
「そっか」
お国や上司の地位向上のために我が身を捧げる。現代日本でいえば滅私奉公の社畜精神とでもいうべきか。
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「へ?」
ずい、と距離を詰められて諒真は目を丸くした。いつのまにかリエロの手が床に置かれた諒真の手に重ねられている。
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