【完結】魔王を倒して元の世界に帰還した勇者パーティーの魔法使い♂が持て余した魔力を消費するために仲間の僧侶♂を頼ったら酷い目に遭っちゃった話

みやこ嬢

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第7章 入り乱れる思惑

44話・観察対象

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 初日は拠点で一夜を明かすことになった。野営は全て聖騎士団の面々が手慣れた様子で支度をしてくれるため、勇者一行は用意された席に座っているだけで済む。

「なんか手伝うことある?」
「お気遣いなく、リョウマ殿。これは我らの仕事ですから」

 暇を持て余した諒真りょうまが隊長のハルクに声を掛けるが、あっさり断られた。

「でも、待ってるだけなのも暇だし。前に薪割りとか教えてくれただろ?あれ、またやらせてよ」
「今回は割った状態で持ち込んでおりますので」
「あー、そっか。残念」

 前回の旅ではハイデルベルド教国の聖都ハイドラから隣国との国境に程近いこの地まで歩いて来たのだ。行く先々で木材から薪を作ったり、食糧を調達したりとやることはたくさんあった。諒真や由宇斗ゆうとは力仕事を、将子しょうこ創吾そうごは料理やその他の雑務を教わりながら手伝ったりした。

 しかし、今回は違う。
 諒真の転移魔法は一度訪れたことのある場所ならば何処へでも行ける。故に、前回数ヶ月掛かった距離も一瞬で移動出来る。必要な物資をあらかじめ用意して持ち込んでいるので、薪割りなどの雑務はなくなった。

 ちなみに、転移魔法はかなり高度な魔法で、近距離かつ小さな物ならば出来る者は多いが、生きた人間を安全に転移させられるのは諒真だけ。

「では、リョウマ殿には物資が足りなくなったら聖都までお使いに行っていただきましょうか」
「わかった、要るもんあったら言えよ」
「はは、分かりました」

 立ち去る諒真の後ろ姿を見送ったあと、ハルクはそれまで浮かべていた微笑みを消し、浮かない顔で部下の元へと戻っていった。






 由宇斗と将子は数人の騎士たちを引き連れ、集落跡地の周辺を警戒していた。焚き火の煙を目印に、この辺りのならず者たちが集まりつつあるからだ。
 将子は広範囲の索敵を感覚だけで行う。何かされる前にこちらから襲うわけにはいかない。その辺にいる大型の獣を派手に狩って力を見せつけ、あちらの戦意を削ぐ方法を取る。

「面倒くさ。倒せばいいじゃん」
「ダメよ、由宇斗は手加減できないでしょ。相手が死んでしまったらどうするの」

 将子がたしなめると、由宇斗は面白くなさそうに唇を尖らせた。
 夜盗ごとき殺しても構わないと思っているのだろう。ここは異世界で、そういった制裁も当たり前のように行われているが、由宇斗がその考えで動くのは思想的にも不味い。今は気が昂ぶって感覚が麻痺している。元の世界に戻った時に罪の意識に苛まれる可能性もある。

「……お願い、由宇斗」
「わかったよ」

 暴れ足りない様子の由宇斗だが、将子に睨まれて腰の剣からパッと手を離した。

 少し我が儘で気が短いが、将子の言うことだけは素直に聞く。案内についていた騎士たちは、ふたりのやり取りや様子を細かく記録し、隊長のハルクに報告した。
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