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第7章 未来を切り拓く選択
79話・解決すべき問題
しおりを挟むふたりの熱意に押されて社長の椅子に座り続けることに決めたものの、学にはまだ不安要素があった。
「徹の父親は私の父と薫さんの仲を疑って病んでしまった。このまま徹が私を支え続けることで、阿志雄くんもそうなってしまわないか心配なんだが」
穂堂が小学生の頃、父親から育児放棄をされた原因は先代社長と母親・穂堂 薫との距離が近過ぎたからだ。その二の舞になれば穂堂はまた辛い思いをしてしまう。
「問題ありません。社長は穂堂さんの『家族』ですから。家族が家族を支えるのは当然のことです!」
そんな心配を吹き飛ばすような笑顔で阿志雄が答える。
必要もないのに直接顔を合わせて交際許可を求めたのは、穂堂と学が『家族』であると確認するため。血の繋がりはなくとも、間違いなくふたりは家族なのだと阿志雄は信じた。
そうとは知らない時は無意識のうちに嫉妬してしまったが、今は違う。社長はもう嫉妬の対象にはならない。
その返答に、今度こそ学はホッと胸を撫で下ろした。男同士ではあるが、ここまで穂堂に寄り添い理解してくれる人は他に現れないだろう。阿志雄の存在を心強く感じた。
「そういえば、奏から女性を紹介されていただろう。そっちはどうするつもりだ?」
「佐々原さんのことですね。明日にでもお断りをしようと思っておりますが……」
「奏は徹を気に入っている。簡単には引くとは思えないが」
大阪支社長の奏は穂堂と翁崎家の繋がりを保つため、自分の可愛がっている部下・佐々原を結婚相手として薦めてきた。翁崎家に恩がある穂堂はこれまで自分から断ることが出来ずに流されるままになっていた。放っておけば、そのうち勝手に結婚式の日取りを決めてきそうな勢いだ。
「下手に断って機嫌を損ねれば、奏は本社存続派ではなくなるかもしれん。そうなれば紡の計画通りになるだろう」
東京支社長の目的は、今ある本社をイチ営業所に落とし、東京支社を本社にして自分がトップに立つこと。本社社長の学が沈黙している間、紡に反対意見をぶつけて話し合いを膠着させたのは奏だ。もし彼女が敵に回れば本社の営業所化の話が一気に進んでしまう。
「その点も抜かりありません。既に根回しを済ませてますんで」
「そ、そうか」
昨夜穂堂と両想いになってから、阿志雄は今後のために動いていた。学が穂堂のために本社社長で在り続けてくれると信じて。
「大阪支社長を味方につけたまま、佐々原の件を白紙にしてやりますよ」
佐々原のバックには大阪支社長がいる。
ハキハキした明るい性格と可愛らしい容姿で本社社員からの好感度も高く仕事熱心。ライバルとしてはかなりの強敵だが、阿志雄は穂堂の隣に立つためならば何でもやる。
「徹、阿志雄くんてちょっと怖くないか」
「いえ。ものすごく頼もしい人ですよ」
「……そうか」
この部屋に入った時から感じていた変化。穏やかで安心しきった穂堂の表情を見て、学は小さく息をついた。
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