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『春に咲いた花を揺らす胡蝶の如く(04)』
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『春に咲いた花を揺らす胡蝶の如く(04)』
ふふ、おかしい。
私なんかが、そんな高望みなんてするはずない。
私は誤解されないように、同じ言葉を繰り返す。
「セックスフレンドにして欲しいの!」
「……じゃなくて、え、どういう事? 春日井さん、大丈夫? なにか変なものでも食べた?」
宮城君がいつもの愛想笑いを浮かべる。
けれど今はハッキリとさせなければいけない事がある。
「真面目な話なの。ちゃんと聞いて欲しいの」
「あ、はい」
「宮城君は今の社会をどう思う?」
「しゃ、社会?」
この社会において、女と男が見る景色はまったく違う。
「男性の数に対して女性の数が極端に多いこのバランスよ」
「あ、うん、まぁ、そういうものだから仕方ないかなって」
この口ぶりからしても、宮城君は自分の価値というものをわかっていない。
「確かに人工受精の技術も発達して、生殖率もあがったし、出産後の母子の健康状態も良好になったわ。昔は遺伝子異常の胎児の発生率や、母体へのストレスが問題になったこともあったのだけど……」
女性に嫌悪感を抱かない男性がどれほど貴重で、そして出産を望む女性にとって光なのかという事。
今でこそ人工授精の安全度は高まった。
それでもなお、それゆえに起こる合併症や、それにかかわる法整備の不十分さで辛い思いをする人がいる。
けれど自然妊娠であれば乗り越えられる苦しみでもある、そう信じて女は男を求める。
もちろん、妊娠という行為が命を賭けるものである事に違いはないけれど、だからこそ、名も知らぬ誰かが提供した試験管ではなく、肌の温もりだけでも――叶うのであればそこに愛が欲しいのだと、女は願う。
私は、私を見る宮城君に気付いた。
話に置いて行かれたような顔をしていた宮城君に謝る。
「……そうね。男の人はあまりこういう話に興味はないかもね」
「ご、ごめんね」
熱くなって、つい、つまらない事を話し始めてしまったよう。
「ううん。いいのよ。それでさっきの話に戻るだけど……そういうわけだから私を宮城君のセックスフレンドにして欲しいの。もちろん今は無理だけど、社会にでたら対価もお支払いするわ」
「待って、そこがわからない。そこからわからない」
貴方の子供が欲しい、貴方を抱きたいのだと伝えたもりだった。
けれど、やっぱりこれが男女の認識の違い。
もっとハッキリと言葉で伝えなければいけない。身勝手な、この私の願いごとを。
「宮城君」
「は、はい」
「私ね……子供が欲しいの。男の人を愛して、抱いて、その人の子が欲しいの」
私は想いを告げながら、宮城君の手をとって迫る。
「……そうなんだ」
ここまで身を寄せても、宮城君に私を拒む様子はなかった。
私は冬原先生との約束を破り、その真意を測る事にする。
「それだけじゃないわよね?」
「え?」
「私のアレ、見てたんでしょ?」
「……え?」
「私が宮城君の机でオナニーしてたの、見てたんでしょう?」
宮城君は眉をピクリと動かして黙り込んだ。
やっぱり知っている、覚えている。
であればなおさらだ。こんな男の人、この先、絶対に出会う事はない。
「自分の机でオナニーをする女のおしっこを片付けてくれる男の人なんて、私のこれからの人生で絶対に現れない」
「ま、まぁ、そうかも、ね?」
「こんな私を気持ち悪いとも言わず、黙っていてくれる宮城君になら私は何でもするわ」
「な、なんでも……」
「ええ、何でも」
文字通り何でもする、と言葉に想いを込める。
宮城君が考え込んでいる中で、私は言葉を続ける。
「私、さっき男性とおつきあいする資格がないって言ったでしょう?」
「あ、うん」
「もっと正確に言うと……宮城君に合わせる顔もない女なの」
「だ、だから、昨日の事はもう」
「ごめんなさい。もう一つ謝らなくちゃいけないの」
私は告白しなければならない。
そしてその罪にふさわしい罰を与えられなければならない。
私は、一瞬の躊躇の後、タンクトップの胸元を開く。
首筋より下、少しふくらんだ胸の上にあるホクロをついにさらした。
「……あ」
「あの日のアレ、私なの」
ふふ、おかしい。
私なんかが、そんな高望みなんてするはずない。
私は誤解されないように、同じ言葉を繰り返す。
「セックスフレンドにして欲しいの!」
「……じゃなくて、え、どういう事? 春日井さん、大丈夫? なにか変なものでも食べた?」
宮城君がいつもの愛想笑いを浮かべる。
けれど今はハッキリとさせなければいけない事がある。
「真面目な話なの。ちゃんと聞いて欲しいの」
「あ、はい」
「宮城君は今の社会をどう思う?」
「しゃ、社会?」
この社会において、女と男が見る景色はまったく違う。
「男性の数に対して女性の数が極端に多いこのバランスよ」
「あ、うん、まぁ、そういうものだから仕方ないかなって」
この口ぶりからしても、宮城君は自分の価値というものをわかっていない。
「確かに人工受精の技術も発達して、生殖率もあがったし、出産後の母子の健康状態も良好になったわ。昔は遺伝子異常の胎児の発生率や、母体へのストレスが問題になったこともあったのだけど……」
女性に嫌悪感を抱かない男性がどれほど貴重で、そして出産を望む女性にとって光なのかという事。
今でこそ人工授精の安全度は高まった。
それでもなお、それゆえに起こる合併症や、それにかかわる法整備の不十分さで辛い思いをする人がいる。
けれど自然妊娠であれば乗り越えられる苦しみでもある、そう信じて女は男を求める。
もちろん、妊娠という行為が命を賭けるものである事に違いはないけれど、だからこそ、名も知らぬ誰かが提供した試験管ではなく、肌の温もりだけでも――叶うのであればそこに愛が欲しいのだと、女は願う。
私は、私を見る宮城君に気付いた。
話に置いて行かれたような顔をしていた宮城君に謝る。
「……そうね。男の人はあまりこういう話に興味はないかもね」
「ご、ごめんね」
熱くなって、つい、つまらない事を話し始めてしまったよう。
「ううん。いいのよ。それでさっきの話に戻るだけど……そういうわけだから私を宮城君のセックスフレンドにして欲しいの。もちろん今は無理だけど、社会にでたら対価もお支払いするわ」
「待って、そこがわからない。そこからわからない」
貴方の子供が欲しい、貴方を抱きたいのだと伝えたもりだった。
けれど、やっぱりこれが男女の認識の違い。
もっとハッキリと言葉で伝えなければいけない。身勝手な、この私の願いごとを。
「宮城君」
「は、はい」
「私ね……子供が欲しいの。男の人を愛して、抱いて、その人の子が欲しいの」
私は想いを告げながら、宮城君の手をとって迫る。
「……そうなんだ」
ここまで身を寄せても、宮城君に私を拒む様子はなかった。
私は冬原先生との約束を破り、その真意を測る事にする。
「それだけじゃないわよね?」
「え?」
「私のアレ、見てたんでしょ?」
「……え?」
「私が宮城君の机でオナニーしてたの、見てたんでしょう?」
宮城君は眉をピクリと動かして黙り込んだ。
やっぱり知っている、覚えている。
であればなおさらだ。こんな男の人、この先、絶対に出会う事はない。
「自分の机でオナニーをする女のおしっこを片付けてくれる男の人なんて、私のこれからの人生で絶対に現れない」
「ま、まぁ、そうかも、ね?」
「こんな私を気持ち悪いとも言わず、黙っていてくれる宮城君になら私は何でもするわ」
「な、なんでも……」
「ええ、何でも」
文字通り何でもする、と言葉に想いを込める。
宮城君が考え込んでいる中で、私は言葉を続ける。
「私、さっき男性とおつきあいする資格がないって言ったでしょう?」
「あ、うん」
「もっと正確に言うと……宮城君に合わせる顔もない女なの」
「だ、だから、昨日の事はもう」
「ごめんなさい。もう一つ謝らなくちゃいけないの」
私は告白しなければならない。
そしてその罪にふさわしい罰を与えられなければならない。
私は、一瞬の躊躇の後、タンクトップの胸元を開く。
首筋より下、少しふくらんだ胸の上にあるホクロをついにさらした。
「……あ」
「あの日のアレ、私なの」
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