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『春に咲いた花を揺らす胡蝶の如く(03)』
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『春に咲いた花を揺らす胡蝶の如く(03)』
「広い公園だね。緑もたくさんあるし」
「ええ。自然公園だからあるのは自動販 売機くらいだけど。日曜日には売店なんかも開いているんだけどね」
市営のためか、平日は管理人さんぐらいしかいないが、休日になると子連れやデートコースとして、それなりに賑わう公園。
とても広い敷地の中には、小さな公園や広場がいくつもある。
子供用の遊具が固まっている小さな公園や、景観の為に整えられた池のある公園など。
使用料を払えば使えるテニスコートやバーベキュー、ワンデイキャンプの施設のエリアだってそろっている。
私が宮城君をいざなったのは噴水とベンチのある広場だ。
休日であれば水も出ているが、今はただの置物となっている噴水を囲むようにして、何基かのベンチが設置されている。
「座りましょうか」
「そうだね」
私の声にうなずき、すっと隣に座ってくれる宮城君。
嫌がってるふうでもなく、さも当然という顔と態度、それがますます私を困惑させて、喜ばせる。
「……」
「……」
二人して黙ったまま、枯れた噴水越しに夕陽を眺める。
遠くから聞こえる子供たちの声。
よくよく聞けば、男の子の声も混じっているようで、本当に遠くから聞こえるようだった。
昔は私も青葉もああして一緒に遊んでいたし、名前も知らない男の子も混じって遊んでいたものだ。
本当に遠い、あの頃の私たち。
つい懐かしくて、私は宮城君に他愛ない事を語り掛けてしまう。
「ふふ、子供は元気ね」
「ここまで声が聞こえてくるほどだから。元気がありあまっているよ」
「宮城君は子供、好き?」
「うん、好きだよ」
クラスメート同士の会話。
ここまでは。
ここからは。
私のこれからを賭けた会話。
「……昨日の事だけどね」
覚悟はもう決めてある。けれど足がすくむ。腕震える。
だけど、声だけは震わせないようにする。
「あ、うん」
「本当に感謝しているの。あんな事をしてしまった私をかばってくれて……その、片づけまでしてくれて。水をかぶせられた時は混乱したけど、とっさにあんな事を思いつくなんて宮城君、さすがね」
まずは感謝を。
私がどれほど宮城君に感謝して、感謝して、なおたりない恩があると伝える。
宮城君は謙遜するけれど、だからといって助けられた私がそれで済ませるわけにはいかない。
「宮城君」
私の声に覚悟がこもったのを感じたのか、宮城君がいつものお差しい微笑みを消して、真剣な目で私を見つめ返す。
「私、私ね……」
瞳がうるむ。
こぼれそうになる涙が止まらない。
言葉より先に涙で想いを語ろうとするズルい女にはなりたくない。
だから私は言葉にする。
「私、宮城君の……ッ!」
宮城君は言葉を詰まらせる私を見つめて、ただただ、待ってくれた。
「宮城君、私を……貴方のセックスフレンドにして欲しい!」
言った……ついに言ったわ!
「ごめんね、春日井さん」
けれど返ってきたのは拒否の言葉。
嗚呼、やっぱり先生は勘違いをしていた?
それとも私が賭けに負けただけ?
覚悟を決めていたとはいえ、考えないようにしていた可能性に現実感を失いながら呆然としていた時。
「ボクは恋人は作らないんだよってなんて言ったの今!?」
宮城君の跳ねるような声が続けられた。
驚いた顔と声で私を見ている。黒縁眼鏡の向こうで大きく目が見開いている。
宮城君は私が恋人関係になりたいと勘違いしていたようだ。
「広い公園だね。緑もたくさんあるし」
「ええ。自然公園だからあるのは自動販 売機くらいだけど。日曜日には売店なんかも開いているんだけどね」
市営のためか、平日は管理人さんぐらいしかいないが、休日になると子連れやデートコースとして、それなりに賑わう公園。
とても広い敷地の中には、小さな公園や広場がいくつもある。
子供用の遊具が固まっている小さな公園や、景観の為に整えられた池のある公園など。
使用料を払えば使えるテニスコートやバーベキュー、ワンデイキャンプの施設のエリアだってそろっている。
私が宮城君をいざなったのは噴水とベンチのある広場だ。
休日であれば水も出ているが、今はただの置物となっている噴水を囲むようにして、何基かのベンチが設置されている。
「座りましょうか」
「そうだね」
私の声にうなずき、すっと隣に座ってくれる宮城君。
嫌がってるふうでもなく、さも当然という顔と態度、それがますます私を困惑させて、喜ばせる。
「……」
「……」
二人して黙ったまま、枯れた噴水越しに夕陽を眺める。
遠くから聞こえる子供たちの声。
よくよく聞けば、男の子の声も混じっているようで、本当に遠くから聞こえるようだった。
昔は私も青葉もああして一緒に遊んでいたし、名前も知らない男の子も混じって遊んでいたものだ。
本当に遠い、あの頃の私たち。
つい懐かしくて、私は宮城君に他愛ない事を語り掛けてしまう。
「ふふ、子供は元気ね」
「ここまで声が聞こえてくるほどだから。元気がありあまっているよ」
「宮城君は子供、好き?」
「うん、好きだよ」
クラスメート同士の会話。
ここまでは。
ここからは。
私のこれからを賭けた会話。
「……昨日の事だけどね」
覚悟はもう決めてある。けれど足がすくむ。腕震える。
だけど、声だけは震わせないようにする。
「あ、うん」
「本当に感謝しているの。あんな事をしてしまった私をかばってくれて……その、片づけまでしてくれて。水をかぶせられた時は混乱したけど、とっさにあんな事を思いつくなんて宮城君、さすがね」
まずは感謝を。
私がどれほど宮城君に感謝して、感謝して、なおたりない恩があると伝える。
宮城君は謙遜するけれど、だからといって助けられた私がそれで済ませるわけにはいかない。
「宮城君」
私の声に覚悟がこもったのを感じたのか、宮城君がいつものお差しい微笑みを消して、真剣な目で私を見つめ返す。
「私、私ね……」
瞳がうるむ。
こぼれそうになる涙が止まらない。
言葉より先に涙で想いを語ろうとするズルい女にはなりたくない。
だから私は言葉にする。
「私、宮城君の……ッ!」
宮城君は言葉を詰まらせる私を見つめて、ただただ、待ってくれた。
「宮城君、私を……貴方のセックスフレンドにして欲しい!」
言った……ついに言ったわ!
「ごめんね、春日井さん」
けれど返ってきたのは拒否の言葉。
嗚呼、やっぱり先生は勘違いをしていた?
それとも私が賭けに負けただけ?
覚悟を決めていたとはいえ、考えないようにしていた可能性に現実感を失いながら呆然としていた時。
「ボクは恋人は作らないんだよってなんて言ったの今!?」
宮城君の跳ねるような声が続けられた。
驚いた顔と声で私を見ている。黒縁眼鏡の向こうで大きく目が見開いている。
宮城君は私が恋人関係になりたいと勘違いしていたようだ。
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