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『冬原美雪(前)』
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『冬原美雪(前)』
「……ん?」
私が目を覚ましたのはベッドの上だった。
だが隣にいるべき宮城の姿がない。
「帰ってしまったか?」
いや時間も遅かったし、男の一人歩きが危ない事くらいあの世間ズレしている宮城でもわかる事だろう。
そもそも電車もバスも動いていない時間だ。
寝室を出て他の部屋を見て回ると、リビングのソファで眠っている宮城の姿があった。
スボンとTシャツを着た上に学生服を毛布代わりにするようにして眠っている。
「……一緒に眠ればいいのに」
と思ったがそういえばシーツはとてもひどい有様だった。主に私のせいで。
きっと宮城はシーツの無事な部分に私を寝かせて、ベッドをゆずってくれたのだろう。
本来であれば女の私がベッドを譲らなければならないというのに。
年上としても教師としても女としても、まるでいい所なしだな。
私は寝室に戻ると、手早くシーツを交換した。
用意がいい? 当然だ、用意していたんだから。
後は床に転がっていたグラスやブラックサンダーを仕舞って、散乱していた私の服や下着、あとは宮城の白いカッターシャツも回収する。
再びリビングに戻り、眠っている宮城を起こさないように肩から抱きかかえる。
男の体は重く、私でも簡単には背負ったりはできないが、相当に眠りが深かったのか半分ひきずって運んでも目を覚ます事はなかった。
ベルトを抜いてズボンのホックをはずし、ラクにさせる。
そうして取りかえたシーツの上に寝かせて上から毛布をかけてやる。
以前の私であれば据え膳食わねばとか、無防備の男に手を出さないとか考えられない事だったのだろうが。
「ふふん」
眠っていれば年相応のあどけなさが残る美少年の寝顔を見て、私は余裕の笑みを浮かべた。
加減は覚えて欲しいが、この子は私のセフレ。
頼めばいつでもヤレる男であり、来年の夏以降には妊活相手でもある。
……他に女を作る宣言もされているので若干不安な部分もあるが、約束は破らないタイプと信じて私はこの関係を了承したのだ。今さら迷いはしない。
時計を見れば朝の六時を過ぎている。
「腹も減ってるだろうからな」
昨晩、あれだけ激しい運動をしたんだ。
そもそも女が動くならともかく、宮城は自分からガンガン動いていたし、私は終始圧倒されていただけだった。
「……筋力も体力も上の男が本気になると、手が付けられんな」
もっとも他の男が女に対して、ここまで積極的になるなんて聞いた事もないが。
「さて。こいつは甘い物は好きかな?」
私はシュガートーストでも作るべく、キッチンに向かう。
そのさい、手にもっていた宮城のカッターシャツを少し拝借する事にした。
「ど、どうせ洗濯するし、少しくらいいいさ」
誰にともなく言い訳するように、私は素肌に袖を通す。
やはり少し大きいが……男物の衣服を身に着けるというのはなんとも言えない気分になる。
変態的男装趣味というわけではなく、夜を共に過ごした相手の持ち物というのがなんとも愛しいのだ。
私は他にショーツだけを身に着け、すぐに朝食の用意を始めた。
そうして出上がったものをトレーに乗せて寝室をのぞくと、ちょうど宮城が目を覚ましていた。
「起きたか」
「あ」
折角の男とのモーニングコーヒー。
できれば先生と呼ばれるよりは名前で呼んで欲しい所だが、名前で呼ばれる時はアッチのプレイという約束だしなぁ。
いかんともしがたい。
贅沢な悩みとわかっていても、人の欲とは無限なのだ。
「おはようございます、美雪さん」
と思ってたのに、名前で呼ばれた。
別段、宮城に欲情した雰囲気はいな。
つまり。
私の夢の欠片をまた一つ、拾い上げてくれたというわけだ。
昨晩は悪魔と思ったが、コイツはやっぱり天使だった。
「う、うむ、おはよう、京」
私も照れを隠しつつ、なんとか挨拶を返した。
宮城の視線は私の体に向いていた。
「すまん、少し借りた」
「いえ。よくお似合いですよ、というのも変ですかね? チラチラ見える太ももとお尻がかわいいです」
「そ、そうか?」
別に狙っていたわけじゃないが、下にズボンをはいていないのがお気に召したらしい。
さわやかな笑顔で言う事は変態のそれだ。朝から絶好調だな、まったく。
「こんなものしかないが、用意してきた」
私は性欲ではなく、親愛から隣に座り、肩をくっつけてトレーを差し出す。
「あれ? ボクの分だけですか?」
トレーの上には一人分しか用意されていない。
厚めのシュガートーストとコーヒーだ。
「ああ。私は休日の朝はあまり食べないんだ」
実際、食べない事が多い。朝食をとる時間を少しでも睡眠にあてたい派なのだ。
「そうですか。いただきます」
「……待て」
私の欲は無限大。
昨晩も焼き肉屋でさせてもらったが、今度は手ずから食べさせてやりたい。
トーストを一口大に指でちぎる。
溶けた砂糖とバダーが私の指にからみつく。
「ほら、京。あ……あーん」
ほほが熱くなっているのを感じる。
年甲斐もなく、こんな事ばかりする私を宮城はいい加減、呆れられないかと不安もあるが、止められない、止まらない。
だけどやっぱり。
宮城はいつも私を満足させてくれるのだ。
「いただきまーす!」
躊躇なく口を大きく開けて、私の手からトーストを食べてくれた。
「……ん?」
私が目を覚ましたのはベッドの上だった。
だが隣にいるべき宮城の姿がない。
「帰ってしまったか?」
いや時間も遅かったし、男の一人歩きが危ない事くらいあの世間ズレしている宮城でもわかる事だろう。
そもそも電車もバスも動いていない時間だ。
寝室を出て他の部屋を見て回ると、リビングのソファで眠っている宮城の姿があった。
スボンとTシャツを着た上に学生服を毛布代わりにするようにして眠っている。
「……一緒に眠ればいいのに」
と思ったがそういえばシーツはとてもひどい有様だった。主に私のせいで。
きっと宮城はシーツの無事な部分に私を寝かせて、ベッドをゆずってくれたのだろう。
本来であれば女の私がベッドを譲らなければならないというのに。
年上としても教師としても女としても、まるでいい所なしだな。
私は寝室に戻ると、手早くシーツを交換した。
用意がいい? 当然だ、用意していたんだから。
後は床に転がっていたグラスやブラックサンダーを仕舞って、散乱していた私の服や下着、あとは宮城の白いカッターシャツも回収する。
再びリビングに戻り、眠っている宮城を起こさないように肩から抱きかかえる。
男の体は重く、私でも簡単には背負ったりはできないが、相当に眠りが深かったのか半分ひきずって運んでも目を覚ます事はなかった。
ベルトを抜いてズボンのホックをはずし、ラクにさせる。
そうして取りかえたシーツの上に寝かせて上から毛布をかけてやる。
以前の私であれば据え膳食わねばとか、無防備の男に手を出さないとか考えられない事だったのだろうが。
「ふふん」
眠っていれば年相応のあどけなさが残る美少年の寝顔を見て、私は余裕の笑みを浮かべた。
加減は覚えて欲しいが、この子は私のセフレ。
頼めばいつでもヤレる男であり、来年の夏以降には妊活相手でもある。
……他に女を作る宣言もされているので若干不安な部分もあるが、約束は破らないタイプと信じて私はこの関係を了承したのだ。今さら迷いはしない。
時計を見れば朝の六時を過ぎている。
「腹も減ってるだろうからな」
昨晩、あれだけ激しい運動をしたんだ。
そもそも女が動くならともかく、宮城は自分からガンガン動いていたし、私は終始圧倒されていただけだった。
「……筋力も体力も上の男が本気になると、手が付けられんな」
もっとも他の男が女に対して、ここまで積極的になるなんて聞いた事もないが。
「さて。こいつは甘い物は好きかな?」
私はシュガートーストでも作るべく、キッチンに向かう。
そのさい、手にもっていた宮城のカッターシャツを少し拝借する事にした。
「ど、どうせ洗濯するし、少しくらいいいさ」
誰にともなく言い訳するように、私は素肌に袖を通す。
やはり少し大きいが……男物の衣服を身に着けるというのはなんとも言えない気分になる。
変態的男装趣味というわけではなく、夜を共に過ごした相手の持ち物というのがなんとも愛しいのだ。
私は他にショーツだけを身に着け、すぐに朝食の用意を始めた。
そうして出上がったものをトレーに乗せて寝室をのぞくと、ちょうど宮城が目を覚ましていた。
「起きたか」
「あ」
折角の男とのモーニングコーヒー。
できれば先生と呼ばれるよりは名前で呼んで欲しい所だが、名前で呼ばれる時はアッチのプレイという約束だしなぁ。
いかんともしがたい。
贅沢な悩みとわかっていても、人の欲とは無限なのだ。
「おはようございます、美雪さん」
と思ってたのに、名前で呼ばれた。
別段、宮城に欲情した雰囲気はいな。
つまり。
私の夢の欠片をまた一つ、拾い上げてくれたというわけだ。
昨晩は悪魔と思ったが、コイツはやっぱり天使だった。
「う、うむ、おはよう、京」
私も照れを隠しつつ、なんとか挨拶を返した。
宮城の視線は私の体に向いていた。
「すまん、少し借りた」
「いえ。よくお似合いですよ、というのも変ですかね? チラチラ見える太ももとお尻がかわいいです」
「そ、そうか?」
別に狙っていたわけじゃないが、下にズボンをはいていないのがお気に召したらしい。
さわやかな笑顔で言う事は変態のそれだ。朝から絶好調だな、まったく。
「こんなものしかないが、用意してきた」
私は性欲ではなく、親愛から隣に座り、肩をくっつけてトレーを差し出す。
「あれ? ボクの分だけですか?」
トレーの上には一人分しか用意されていない。
厚めのシュガートーストとコーヒーだ。
「ああ。私は休日の朝はあまり食べないんだ」
実際、食べない事が多い。朝食をとる時間を少しでも睡眠にあてたい派なのだ。
「そうですか。いただきます」
「……待て」
私の欲は無限大。
昨晩も焼き肉屋でさせてもらったが、今度は手ずから食べさせてやりたい。
トーストを一口大に指でちぎる。
溶けた砂糖とバダーが私の指にからみつく。
「ほら、京。あ……あーん」
ほほが熱くなっているのを感じる。
年甲斐もなく、こんな事ばかりする私を宮城はいい加減、呆れられないかと不安もあるが、止められない、止まらない。
だけどやっぱり。
宮城はいつも私を満足させてくれるのだ。
「いただきまーす!」
躊躇なく口を大きく開けて、私の手からトーストを食べてくれた。
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