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ねこちゃん騙される?

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 澪が目を覚ますとそこにはもう慶斗はいなかった。

 少し寂しい気もしたが、慶斗は仕事もあるので仕方ない。

 澪は布団からでて遅めの朝食を食べにリビングへ向かった。




 澪がリビングに行くと、珍しく義母の慶子がいた。

 慶子たちと澪たちは同じ敷地に住んでいるが建物は別だ。
 なので、朝食を一緒に食べることはない。

「随分遅いお目覚めね」
「あ…ごめんなさい」

 厳しい目で澪を睨む慶子はとても怖かった。

「今日は話したいことがあるの」
「はい.…」

 澪は慶子と仲良くしたいと思っているのに、慶子はたぶん澪のことがあまり好きじゃないみたいだ。

「あなた、発情期はいつ来るの?」
「へ…」

 発情期の話題というのはセンシティブだ。
 あまり開けっ広げに話すべきことではないし、もちろん聞くべきことではない。

「えと…猫種の発情期は」
「不定期なんでしょう?そんなこと知ってるわよ。でも大体はわかるでしょう?」
「だ、だいたい?」
「前の発情期はいつだったの?」
「その…一ヶ月前ぐらいに…」
「ふぅん、で、次はいつぐらいに来そうなの?」
「いつ…かはわかりません。早ければ来月、遅ければ三ヶ月以上後のことも…」

 猫種の発情期は不定期。しかし、ほかの猫種の発情に引かれて発情することが多い。

 猫種のいない慶斗の家ではすぐには来ないかもしれない。

 もしくは、またたびを使って発情期を起こすこともできる。

 しかし、またたびを使った発情期は長く続いてしまうから、最近ではあまり使われていない。

「一ヶ月?そんなに待てないわよ」
「え?」

 一ヶ月、でもダメなのか?
 澪は首を傾げた。
 慶子はなぜこんなに急いでいるのだろう。
 そういえば澪との結婚が決まってから結婚するまでは相当早かった。

 狼種の風習かと思っていたが、もしかしたら慶子が早めたのかも…

「ならいいわ」
「慶子、さん…?」

 慶子が澪に近づいてくる。
 その右手には、小さな瓶がある。

「なんですか?」

 震えたまま動けないでいる澪の首を慶子の手が掴む。

「うぐ…」

 慶子はそのまま澪の唇に瓶を突っ込んだ。

 どろりと甘い液体が口に入り込む。

「む、ぐ…」
「飲みなさい」

 飲まないようにするけど、慶子に鼻を摘まれて息ができず飲み込むしかなかった。

「う…なにを」
「誘発剤よ。狼種用だから猫種には……まぁいいわ。代わりはいくらでもいるもの」

 意識が朦朧としていくなか蔑むようか慶子の目だけがいやに鮮明に残った。
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