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エンマくんが死んでしまったのは、ちょっとした事故のためだった。俺は大学の講義中に来た親父からのメッセージでそれを知った。
その日エンマくんは、旗竿地の建築現場の施工管理のため、基礎を打つ立ち会いに行った。かなり奥まった細い道を曲がらないとその家の庭に車両を駐車することができなかった。
しかも庭はまだ砂利と土が剥き出しででこぼこしていた。だから機材を積んだトラックが、その家にバックでベタ付けしようと進入してきた時、ちょっと屈んで基礎を見ていたエンマくんに気がつくのが遅れた。ちょうど道のでこぼこにタイヤを取られたところだったので、運転していた人は少しばかり強めにアクセルを踏んでしまった。
普通はこういう時、ちゃんと誘導の人がいないといけなかったんだけど、この時はたまたま誰もいなかった。
エンマくんに会ったのは、病室だった。眠ってるみたいにきれいだった。親父が泣きも笑いもせずに黙ってエンマくんの手を握っていて、一瞬まだ生きてるのかと思った。
カナエさんは病室の前のベンチで頭を抱えていた。轢いてしまった作業員の人はエンマくんの知り合いで、作業服とヘルメットのまま泣き崩れていた。
「一時間くらい前かな。息を引き取ったんだ」
カナエさんが唸るように言った。
「お別れをして。ソーマ。もう少ししたら遺体を……きれいにしないといけないから」
俺はカナエさんに促されてエンマくんのそばに立った。すぐにわかった。ここにエンマくんは確かにいない。もういなくなってしまった。死んでしまったんだ。本当に。ここにあるのはエンマくんの体だけだ。
親父は隣でただエンマくんを見つめていた。エンマくんの、指輪がはまった真っ白な左の手をずっと離さなかった。俺はそんな父にわざわざ声をかけてエンマくんに触れるのがためらわれて、黙って部屋を出た。
部屋から出た瞬間、涙がぼろっと溢れた。いなくなってしまった。あの優しい美しい、俺の古い親友が。
「こっちにおいで。ソーマ」
カナエさんに促されて、自販機が沢山あっていくつかのテーブルやいすがぱらぱらと置かれているスペースに行った。カナエさんが缶コーヒーを渡してきた。
「……エンマな、撥ねられてすぐはまだ意識があったんだと。『大丈夫、あまり気にしないで』って……」
カナエさんも声を詰まらせた。エンマくんらしい。
「眠ってるみたいだったね」
「……あのな、あの……もうさ、救急車の中で……だめになって……だからかえって……きれ…きれいっ……」
カナエさんは慟哭した。こんなに男の人が大きな声で泣くのを初めて見た。通りすがりの人がちらちらとこちらを見た。
「誰も間に合わなかった……の?」
「……ゔん。棟梁が……救急車に乗ってて……その人だけだな……」
カナエさんはハンカチでつぎつぎに溢れてくる涙を拭きながら息を整えた。
「葬式だな……まさかこんな……こんなに早く……先輩と話さないと……」
「うん……」
エンマくんの病室に、看護師さんが厳かに入っていくのが見えた。入れ替わりに親父がふらっと出てきた。
「親父……」
親父はしゃっくり上げながら泣いているカナエさんにも、俺にも、誰にも何も言わなかった。表情も、よくわからなかった。無表情というのでもない。妙に落ち着いた、静かな顔をしていた。初めて見る顔だった。逆に怖かった。
「先輩……。葬式……社葬にしたいんだけど……」
「好きにしていい」
それだけだった。この後親父は納棺の時まで、俺とカナエさんの前では一言も話さなかった。泣きもしなかった。
社葬とは言っても、火葬まではうちでやった。家族葬だった。親父と俺と、カナエさんの一家だけ。
火葬までは二日あったが、親父がずっとエンマくんから離れなかった。しかも一緒に寝たりとかしていたわけではなく、いつ見ても親父の部屋に安置されたエンマくんの枕元に椅子を置いて座っていたから、葬儀社の人は三交代か何かで枕番をしていたと思ったと思う。本当にいつ寝ていたんだろうか。
ほとんど食べてもいなかった。カナエさんの奥さんが親父の横にそっと軽食とお茶を何度か差し入れていた。たまになくなっていたけど、手付かずのことも多かった。
納棺の時、葬儀社の人から、燃えないもの、燃えにくいものは入れないようにと言われて、エンマくんの指輪を外さないといけなかった。親父がするりとエンマくんの細い指から指輪を抜いた。
「これは、骨壺には入れてもいいんですか」
しゃべった。この時ばかりは悲しみより親父がしゃべったことにびっくりしてしまった。
「もちろんでございます」
蓋を閉めるという時、親父が自分とエンマくんの写った写真をすっと入れた。これもびっくりした。葬儀屋さんも慌てて止めた。
「生きている方の写真をお入れになりますと……」
「いいから入れてください」
有無を言わせぬ言い方だった。たぶん親父は知ってたんじゃないかな。生きている人の写真を入れると連れて行かれるという迷信を。
エンマくんの骨壺の最後に、親父は細い指輪を入れた。指輪はチリンと音を立てて白い壺に収まった。葬儀社の人はその指輪が、親父の指輪とペアだと気が付いたんじゃないかと思う。でも何も言わなかった。
エンマくんのお葬式の喪主は、ずっと仕事上のパートナーだったカナエさんがやった。
俺も親父もエンマくんとはただの他人だから、親族席にすら座ることができないんだと改めて認識した。
エンマくんには親族がいなかったので、親族席にはカナエさんの奥さんと息子、カナエさんとエンマくんの事務所の仲間たちが座った。俺たちはその次だった。カナエさんが事前に説明してくれたにも関わらず、やはり実際にそういう位置に座ると悲しかった。親父はどう思っていたのか。
葬儀は想像以上だった。300人を想定していたけど、エンマくんの仕事関係の人、カナエさんの職場関係の人。エンマくんが最初に勤めていた事務所の人たちは、その日事務所を閉めてみんなではるばる北陸から来てくれた。そして家をエンマくんに設計してもらった人たち。高校時代のバイト先の店長さんも来ていた。
その中で、すごく印象に残った人が一人いた。黒い手袋をした小柄なご老人だった。杖をついていたが、黒い山高帽を被り、どこかで見たことのある顔をしていた。どこで見たのか思い出せない。その人がお焼香しようとした時、手袋の下から出てきた手には、両手ともに小指がなかった。その人は焼香した後、親父のそばに来て話しかけた。
「……こんなことで連絡もらおうと思ってたわけじゃねえのにな」
「すみません」
「あんたのせいじゃねえ……」
親父の肩をパンパンと叩いて、ゆっくりとその人は会場を出て行った。あれは誰? と親父に聞いたが、親父は何も言わなかった。
お葬式が終わった後、事務所の顧問弁護士さんが家を訪ねてきた。お葬式の時にカナエさんからちょっと紹介されていた。エンマくんの遺言書を持ってきたのだった。不動産は親父に、動産は俺と親父の折半で、という内容だった。そんなことまでエンマくんは考えていたのか。
何回か書類にサインして、口座を知らせて、しばらくしたら俺の年齢で持っちゃいけないような金額が口座に入っていた。
親父は少しずつしゃべるようになった。俺としては、そしてカナエさんの見解としても、後追いするんじゃないかって実は心配していた。全然泣かなかったから。
俺はなんだかんだで、納棺の時も火葬の時も葬式の時も泣いたし、家に帰ってからもエンマくんのことをふと意識するようなことがあると涙が出たけど、親父は一切泣かなかった。あの穏やかな……と言っていいのか、静かな顔をして淡々としていた。本当に怖かった。
家に帰ったら首吊ってるんじゃないかと思って、バイトから帰ったときは恐る恐る親父の姿を確認した。たいてい親父はリビングか自分の部屋にいたけど、まれにエンマくんの部屋にいた。俺はエンマくんが死んでからその部屋に入るのがつらくて、ちょっと覗き込むくらいだったけど、親父もエンマくんの持ち物とかには手はつけてないみたいだった。片付けられるわけがない。
カナエさんから定期的に連絡が来た。たまに呼び出されて会って話をした。
「大学はどう?」
「就活も始まるんで、これから忙しいかなって」
「ま、どうしても見つかんなかったら相談しな。紹介できるとこはあるから」
親父がほとんど口をきかないので、目下一番しゃべる大人はカナエさんだけだった。カナエさんは一人で事務所をなんとかしないといけなくなったので忙しくなっていたけど、俺のためには時間を割いてくれた。
カナエさんもエンマくんが死んだのを消化できてなかったのかも知れない。なにしろ急だった。
「先輩どう? 生きてる?」
「あ、生きてます。相変わらずですけど。最近は少し話すようになりました」
「泣いてる?」
「全然。何考えてるのかわからないです」
カナエさんは、悲しいんだと思うよ、比翼の鳥だったから、と言った。ヒヨクノトリ。死ぬほど悲しいんだと思う、涙が出ないくらいに。
涙さえ出ない悲しみ。
ちょっとよくわからなかった。でも親父とエンマくんは、これが普通に男女だったらこんな夫婦になりたかったと思うくらい仲が良かった。喧嘩してるとこなんて見たことない。
二人は気づいてなかったみたいだけど、二人だけでリビングで話してるときなんかは、ほんとにラブラブの恋人同士みたいだった。こっちが嫌になるくらい。
リビングに行こうとして、ドアのガラスの向こうで二人が二人の時間を楽しんでいるのが見えて、回れ右したのは一度や二度ではない。別に露骨にいちゃいちゃしているわけではなくても、割り込めない雰囲気があった。
おっさん同士キモいと思ったこともあったが、何年も変わらないのはすごいなと感心もしていた。エンマくんが死ぬその日の朝までだ。二十年以上一緒にいるはずなのに。
比翼の鳥。
カナエさんと別れて家に帰ると、親父も会社から帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま。今帰ってきたとこか?」
親父、痩せたな。一回り小さくなったように見えた。
その日エンマくんは、旗竿地の建築現場の施工管理のため、基礎を打つ立ち会いに行った。かなり奥まった細い道を曲がらないとその家の庭に車両を駐車することができなかった。
しかも庭はまだ砂利と土が剥き出しででこぼこしていた。だから機材を積んだトラックが、その家にバックでベタ付けしようと進入してきた時、ちょっと屈んで基礎を見ていたエンマくんに気がつくのが遅れた。ちょうど道のでこぼこにタイヤを取られたところだったので、運転していた人は少しばかり強めにアクセルを踏んでしまった。
普通はこういう時、ちゃんと誘導の人がいないといけなかったんだけど、この時はたまたま誰もいなかった。
エンマくんに会ったのは、病室だった。眠ってるみたいにきれいだった。親父が泣きも笑いもせずに黙ってエンマくんの手を握っていて、一瞬まだ生きてるのかと思った。
カナエさんは病室の前のベンチで頭を抱えていた。轢いてしまった作業員の人はエンマくんの知り合いで、作業服とヘルメットのまま泣き崩れていた。
「一時間くらい前かな。息を引き取ったんだ」
カナエさんが唸るように言った。
「お別れをして。ソーマ。もう少ししたら遺体を……きれいにしないといけないから」
俺はカナエさんに促されてエンマくんのそばに立った。すぐにわかった。ここにエンマくんは確かにいない。もういなくなってしまった。死んでしまったんだ。本当に。ここにあるのはエンマくんの体だけだ。
親父は隣でただエンマくんを見つめていた。エンマくんの、指輪がはまった真っ白な左の手をずっと離さなかった。俺はそんな父にわざわざ声をかけてエンマくんに触れるのがためらわれて、黙って部屋を出た。
部屋から出た瞬間、涙がぼろっと溢れた。いなくなってしまった。あの優しい美しい、俺の古い親友が。
「こっちにおいで。ソーマ」
カナエさんに促されて、自販機が沢山あっていくつかのテーブルやいすがぱらぱらと置かれているスペースに行った。カナエさんが缶コーヒーを渡してきた。
「……エンマな、撥ねられてすぐはまだ意識があったんだと。『大丈夫、あまり気にしないで』って……」
カナエさんも声を詰まらせた。エンマくんらしい。
「眠ってるみたいだったね」
「……あのな、あの……もうさ、救急車の中で……だめになって……だからかえって……きれ…きれいっ……」
カナエさんは慟哭した。こんなに男の人が大きな声で泣くのを初めて見た。通りすがりの人がちらちらとこちらを見た。
「誰も間に合わなかった……の?」
「……ゔん。棟梁が……救急車に乗ってて……その人だけだな……」
カナエさんはハンカチでつぎつぎに溢れてくる涙を拭きながら息を整えた。
「葬式だな……まさかこんな……こんなに早く……先輩と話さないと……」
「うん……」
エンマくんの病室に、看護師さんが厳かに入っていくのが見えた。入れ替わりに親父がふらっと出てきた。
「親父……」
親父はしゃっくり上げながら泣いているカナエさんにも、俺にも、誰にも何も言わなかった。表情も、よくわからなかった。無表情というのでもない。妙に落ち着いた、静かな顔をしていた。初めて見る顔だった。逆に怖かった。
「先輩……。葬式……社葬にしたいんだけど……」
「好きにしていい」
それだけだった。この後親父は納棺の時まで、俺とカナエさんの前では一言も話さなかった。泣きもしなかった。
社葬とは言っても、火葬まではうちでやった。家族葬だった。親父と俺と、カナエさんの一家だけ。
火葬までは二日あったが、親父がずっとエンマくんから離れなかった。しかも一緒に寝たりとかしていたわけではなく、いつ見ても親父の部屋に安置されたエンマくんの枕元に椅子を置いて座っていたから、葬儀社の人は三交代か何かで枕番をしていたと思ったと思う。本当にいつ寝ていたんだろうか。
ほとんど食べてもいなかった。カナエさんの奥さんが親父の横にそっと軽食とお茶を何度か差し入れていた。たまになくなっていたけど、手付かずのことも多かった。
納棺の時、葬儀社の人から、燃えないもの、燃えにくいものは入れないようにと言われて、エンマくんの指輪を外さないといけなかった。親父がするりとエンマくんの細い指から指輪を抜いた。
「これは、骨壺には入れてもいいんですか」
しゃべった。この時ばかりは悲しみより親父がしゃべったことにびっくりしてしまった。
「もちろんでございます」
蓋を閉めるという時、親父が自分とエンマくんの写った写真をすっと入れた。これもびっくりした。葬儀屋さんも慌てて止めた。
「生きている方の写真をお入れになりますと……」
「いいから入れてください」
有無を言わせぬ言い方だった。たぶん親父は知ってたんじゃないかな。生きている人の写真を入れると連れて行かれるという迷信を。
エンマくんの骨壺の最後に、親父は細い指輪を入れた。指輪はチリンと音を立てて白い壺に収まった。葬儀社の人はその指輪が、親父の指輪とペアだと気が付いたんじゃないかと思う。でも何も言わなかった。
エンマくんのお葬式の喪主は、ずっと仕事上のパートナーだったカナエさんがやった。
俺も親父もエンマくんとはただの他人だから、親族席にすら座ることができないんだと改めて認識した。
エンマくんには親族がいなかったので、親族席にはカナエさんの奥さんと息子、カナエさんとエンマくんの事務所の仲間たちが座った。俺たちはその次だった。カナエさんが事前に説明してくれたにも関わらず、やはり実際にそういう位置に座ると悲しかった。親父はどう思っていたのか。
葬儀は想像以上だった。300人を想定していたけど、エンマくんの仕事関係の人、カナエさんの職場関係の人。エンマくんが最初に勤めていた事務所の人たちは、その日事務所を閉めてみんなではるばる北陸から来てくれた。そして家をエンマくんに設計してもらった人たち。高校時代のバイト先の店長さんも来ていた。
その中で、すごく印象に残った人が一人いた。黒い手袋をした小柄なご老人だった。杖をついていたが、黒い山高帽を被り、どこかで見たことのある顔をしていた。どこで見たのか思い出せない。その人がお焼香しようとした時、手袋の下から出てきた手には、両手ともに小指がなかった。その人は焼香した後、親父のそばに来て話しかけた。
「……こんなことで連絡もらおうと思ってたわけじゃねえのにな」
「すみません」
「あんたのせいじゃねえ……」
親父の肩をパンパンと叩いて、ゆっくりとその人は会場を出て行った。あれは誰? と親父に聞いたが、親父は何も言わなかった。
お葬式が終わった後、事務所の顧問弁護士さんが家を訪ねてきた。お葬式の時にカナエさんからちょっと紹介されていた。エンマくんの遺言書を持ってきたのだった。不動産は親父に、動産は俺と親父の折半で、という内容だった。そんなことまでエンマくんは考えていたのか。
何回か書類にサインして、口座を知らせて、しばらくしたら俺の年齢で持っちゃいけないような金額が口座に入っていた。
親父は少しずつしゃべるようになった。俺としては、そしてカナエさんの見解としても、後追いするんじゃないかって実は心配していた。全然泣かなかったから。
俺はなんだかんだで、納棺の時も火葬の時も葬式の時も泣いたし、家に帰ってからもエンマくんのことをふと意識するようなことがあると涙が出たけど、親父は一切泣かなかった。あの穏やかな……と言っていいのか、静かな顔をして淡々としていた。本当に怖かった。
家に帰ったら首吊ってるんじゃないかと思って、バイトから帰ったときは恐る恐る親父の姿を確認した。たいてい親父はリビングか自分の部屋にいたけど、まれにエンマくんの部屋にいた。俺はエンマくんが死んでからその部屋に入るのがつらくて、ちょっと覗き込むくらいだったけど、親父もエンマくんの持ち物とかには手はつけてないみたいだった。片付けられるわけがない。
カナエさんから定期的に連絡が来た。たまに呼び出されて会って話をした。
「大学はどう?」
「就活も始まるんで、これから忙しいかなって」
「ま、どうしても見つかんなかったら相談しな。紹介できるとこはあるから」
親父がほとんど口をきかないので、目下一番しゃべる大人はカナエさんだけだった。カナエさんは一人で事務所をなんとかしないといけなくなったので忙しくなっていたけど、俺のためには時間を割いてくれた。
カナエさんもエンマくんが死んだのを消化できてなかったのかも知れない。なにしろ急だった。
「先輩どう? 生きてる?」
「あ、生きてます。相変わらずですけど。最近は少し話すようになりました」
「泣いてる?」
「全然。何考えてるのかわからないです」
カナエさんは、悲しいんだと思うよ、比翼の鳥だったから、と言った。ヒヨクノトリ。死ぬほど悲しいんだと思う、涙が出ないくらいに。
涙さえ出ない悲しみ。
ちょっとよくわからなかった。でも親父とエンマくんは、これが普通に男女だったらこんな夫婦になりたかったと思うくらい仲が良かった。喧嘩してるとこなんて見たことない。
二人は気づいてなかったみたいだけど、二人だけでリビングで話してるときなんかは、ほんとにラブラブの恋人同士みたいだった。こっちが嫌になるくらい。
リビングに行こうとして、ドアのガラスの向こうで二人が二人の時間を楽しんでいるのが見えて、回れ右したのは一度や二度ではない。別に露骨にいちゃいちゃしているわけではなくても、割り込めない雰囲気があった。
おっさん同士キモいと思ったこともあったが、何年も変わらないのはすごいなと感心もしていた。エンマくんが死ぬその日の朝までだ。二十年以上一緒にいるはずなのに。
比翼の鳥。
カナエさんと別れて家に帰ると、親父も会社から帰ってきた。
「おかえり」
「ただいま。今帰ってきたとこか?」
親父、痩せたな。一回り小さくなったように見えた。
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