7 / 11
07 へりくつと本心
しおりを挟む
コンビニの跡地には、思った通り色んなものが落ちていました。たばこがたくさんありましたね。僕はいらないですけど。スナック菓子や缶詰、飲み物のたぐいを袋に入れて持って帰りました。本当にコンビニ帰りみたい。ライターも手に入りましたよ。
ま、童貞くんと帰ったんですけどね。
「い、痛いですか」
「……別に」
童貞くんは服を着るのも嫌になってしまった僕にペットボトルの水を渡し、膝を洗い、バンドエイドを見つけて貼ってくれました。膝にバンドエイド。小学生のガキみたい。僕はそれで笑うのをやめて服を着たわけです。
「炭?」
「そう、です。続いてるなと思って」
「よく気づいたね」
彼は僕が自分のために撒いていた炭の目印を辿って、追いかけてきたのでした。ちなみに、二本差しのちょっと前くらいからいたんだそうです。
「なんでそこで黙ってたの」
「いや、いやなのか、嫌じゃないのか、わかりませんでした」
「………そうだね」
自分からしゃぶって、自分から二本差ししてって言って、あんあん喘いでたらね。
「嫌だったよ」
信じられないかも知れないけど。
何も話す気にならなくて、黙って家に戻ると、実家にありそうなダサい毛布がどんと置いてありました。
「あ、見つけました」
「え。へえ……」
しかも二枚。かなり暖かそうです。そしてやかんもどこかから拾って来ていました。いつの間にか、瓦礫で釜戸のような形も組まれています。
「お湯があると、色々便利かなって」
「便利だな。あ。体拭きたい。お湯で……」
本当はシャワーを思い切り浴びたい。凄く汚れた感じがする。
「ふろ…風呂桶の水、あっためますか」
「そうだね」
僕が呆然としている間に、彼は火を起こし(ライターで)、水をやかんにいれて火にかけ、またどこかから少し形が歪んだバケツを持ってきて、沸いたお湯と水を混ぜてくれました。
「はい」
「ありがとう」
バケツにタオルを突っ込むと、それだけでじんわり来ました。お湯に手をつけるのも久々。
「あんたもお湯のうちに拭いたら?」
「あ、はい」
風もあまりないし、3P見られたやつに何を恥ずかしがっても仕方がないので、服も脱いで全部拭きます。髪も。彼は恥ずかしいのか、ボタンを外して拭けるところしか拭きません。
「あのさ、あんた臭いからちゃんと拭いてよ。どうせ……」
ここまで言ってふと疑問が湧きました。「どうせ一緒に寝るんだろ」と言いかけたけど、そうなんでしょうか?
「……そういえばなんでここに戻って来たの?」
彼は困ったような感じで目を泳がせました。
「な、何も考えてませんでした。なんとなく」
「フッ。なにそれ?」
犬かよ。帰巣本能。
「まあいいや。なあ、髪ちゃんと拭けよ。ベトベトなんだよ。枕が汚れちゃう」
「あ。はい」
「少し髪切る? ハサミ拾った」
「え、いや」
「あ、髭剃って」
「え、なんで」
「いいから」
体が冷えないように毛布にくるまりながら、もじゃもじゃの髪をちょっとずつ切っていきます。拭いたらだいぶマシになった。
「おもしれー髪。天パ?」
「あ。そうです」
「いつ切った? 漉いてないでしょ」
「じ、自分で切ってました」
「ハア? 中学生かよ」
肩まで届きそうだった髪を、少しずつ。しばらくそのちぐはぐな髪と戦っていると、童貞くんがポツリと言いました。
「………全然楽しそうじゃなかったですよ」
「………え」
「さっき。今の方が、楽しそう」
「何バカ………」
ちょきん。
「…………」
「本当に、あんなこと、たくさんやったんですか?」
やった。
一日2件はしごしたこともあるし、カラオケルームで回されたこともある。あの時は性病の検査結果が出るまで食欲出なかった。3人くらいのセフレと日替わりでやってたり。一回そういう噂が立つと、色んな奴がそういう目で見てくるから。
「どうしてですか。俺は、楽しいことしかしたくないな……」
「………楽しかったよ。こうなっちゃう前まではさ」
──興味あるの? やってみる?
──女の子よりいいよ、僕。
ちょっと小綺麗にして。わかるんだよね、こいつやってみたいって思ってんなって。視線に独特のやらしさがあるんだ。
「もともと女の子が好きなやつでもさ、ハマっちゃうんだよね、結構。んで……」
もうやめろって言わせんの。他の男誘うのは……
「必死になって、僕のこと独占しようとすんのがさ」
だから、そうなったら、わざと部屋でかち合わせたりしてさ。
もうあんたはいいや。バイバイ。
「表沙汰にはしたくないくせに、僕に未練出してくんのが面白くてさ……」
ちょきん。
ざまあみろってさ。
「それ、面白くないですよ」
「面白いよ」
「セックスが楽しいんじゃないじゃないですか」
「でも気持ちいいんだよ?」
「さっき気持ち良かったですか?」
「うるさいな………」
「ど、どうしてこんなこと始めたんですか」
「…………はい。さっぱりしただろ。あ、自分じゃ見えないか。疲れたから寝るわ」
ま、童貞くんと帰ったんですけどね。
「い、痛いですか」
「……別に」
童貞くんは服を着るのも嫌になってしまった僕にペットボトルの水を渡し、膝を洗い、バンドエイドを見つけて貼ってくれました。膝にバンドエイド。小学生のガキみたい。僕はそれで笑うのをやめて服を着たわけです。
「炭?」
「そう、です。続いてるなと思って」
「よく気づいたね」
彼は僕が自分のために撒いていた炭の目印を辿って、追いかけてきたのでした。ちなみに、二本差しのちょっと前くらいからいたんだそうです。
「なんでそこで黙ってたの」
「いや、いやなのか、嫌じゃないのか、わかりませんでした」
「………そうだね」
自分からしゃぶって、自分から二本差ししてって言って、あんあん喘いでたらね。
「嫌だったよ」
信じられないかも知れないけど。
何も話す気にならなくて、黙って家に戻ると、実家にありそうなダサい毛布がどんと置いてありました。
「あ、見つけました」
「え。へえ……」
しかも二枚。かなり暖かそうです。そしてやかんもどこかから拾って来ていました。いつの間にか、瓦礫で釜戸のような形も組まれています。
「お湯があると、色々便利かなって」
「便利だな。あ。体拭きたい。お湯で……」
本当はシャワーを思い切り浴びたい。凄く汚れた感じがする。
「ふろ…風呂桶の水、あっためますか」
「そうだね」
僕が呆然としている間に、彼は火を起こし(ライターで)、水をやかんにいれて火にかけ、またどこかから少し形が歪んだバケツを持ってきて、沸いたお湯と水を混ぜてくれました。
「はい」
「ありがとう」
バケツにタオルを突っ込むと、それだけでじんわり来ました。お湯に手をつけるのも久々。
「あんたもお湯のうちに拭いたら?」
「あ、はい」
風もあまりないし、3P見られたやつに何を恥ずかしがっても仕方がないので、服も脱いで全部拭きます。髪も。彼は恥ずかしいのか、ボタンを外して拭けるところしか拭きません。
「あのさ、あんた臭いからちゃんと拭いてよ。どうせ……」
ここまで言ってふと疑問が湧きました。「どうせ一緒に寝るんだろ」と言いかけたけど、そうなんでしょうか?
「……そういえばなんでここに戻って来たの?」
彼は困ったような感じで目を泳がせました。
「な、何も考えてませんでした。なんとなく」
「フッ。なにそれ?」
犬かよ。帰巣本能。
「まあいいや。なあ、髪ちゃんと拭けよ。ベトベトなんだよ。枕が汚れちゃう」
「あ。はい」
「少し髪切る? ハサミ拾った」
「え、いや」
「あ、髭剃って」
「え、なんで」
「いいから」
体が冷えないように毛布にくるまりながら、もじゃもじゃの髪をちょっとずつ切っていきます。拭いたらだいぶマシになった。
「おもしれー髪。天パ?」
「あ。そうです」
「いつ切った? 漉いてないでしょ」
「じ、自分で切ってました」
「ハア? 中学生かよ」
肩まで届きそうだった髪を、少しずつ。しばらくそのちぐはぐな髪と戦っていると、童貞くんがポツリと言いました。
「………全然楽しそうじゃなかったですよ」
「………え」
「さっき。今の方が、楽しそう」
「何バカ………」
ちょきん。
「…………」
「本当に、あんなこと、たくさんやったんですか?」
やった。
一日2件はしごしたこともあるし、カラオケルームで回されたこともある。あの時は性病の検査結果が出るまで食欲出なかった。3人くらいのセフレと日替わりでやってたり。一回そういう噂が立つと、色んな奴がそういう目で見てくるから。
「どうしてですか。俺は、楽しいことしかしたくないな……」
「………楽しかったよ。こうなっちゃう前まではさ」
──興味あるの? やってみる?
──女の子よりいいよ、僕。
ちょっと小綺麗にして。わかるんだよね、こいつやってみたいって思ってんなって。視線に独特のやらしさがあるんだ。
「もともと女の子が好きなやつでもさ、ハマっちゃうんだよね、結構。んで……」
もうやめろって言わせんの。他の男誘うのは……
「必死になって、僕のこと独占しようとすんのがさ」
だから、そうなったら、わざと部屋でかち合わせたりしてさ。
もうあんたはいいや。バイバイ。
「表沙汰にはしたくないくせに、僕に未練出してくんのが面白くてさ……」
ちょきん。
ざまあみろってさ。
「それ、面白くないですよ」
「面白いよ」
「セックスが楽しいんじゃないじゃないですか」
「でも気持ちいいんだよ?」
「さっき気持ち良かったですか?」
「うるさいな………」
「ど、どうしてこんなこと始めたんですか」
「…………はい。さっぱりしただろ。あ、自分じゃ見えないか。疲れたから寝るわ」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。


百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる