ビッチな僕と童貞くん 〜先日、世界が終わったので。

黒遠

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08 どうしてかと

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 ちょっと痛いな。切れたかなあ。

 湿気ってきてしまった布団に横になると、体のあちこちから痛みや不快感が押し寄せてきます。まだあいつらの汗や体液が、皮膚に残っている気がする。

 でもわかっているんです。これは熱いシャワーを頭っから浴びても、どんなに長く風呂に浸かっても落ちないんです。そうやって。

 誰かの手垢で汚れていく自分を見て、ざまあみろって。

 ざまあみろ。あんたが汚したせいで僕はこんなに汚くなった。あんたのせいだよ。

 ざまあみろ。

 ざまあみろ。僕がどんなに傷ついたのか、僕を汚したやつらも喰らえばいい。みんなみんな汚れてしまえ。大っ嫌いだ。

 大嫌いなんだよ。

 もう何もかもどうでもいい。何もしたくない。







 本当にうとうとして、目が覚めたらもう日が傾きかけていました。四時くらいかな……。木が焼ける匂いがします。

 起き出してみると、まだ童貞くんが火のそばに座っていました。

「まだいたんだ」
「あ。はい。えーと、水見つけました。たぶんどこかのマンションの給水タンクだと思うんですけど、そのまま転がってて半分くらい入ってたので、しばらく困らないです」
「そう」

 頭が軽く痛む。寝過ぎ? まだ童貞くんがいたのが、イラつくような、ホッとするような。

「なんでまだいるの」
「え。な、なんとなく」
「あ。好きな時にやっていいよって言ったから?」
「いや」
「………いいよ。やって。ゴムもまだ一個あるから」
「いやいや」
「んで、やったら出てって」
「え? いや」
「ほんとに」

 ほんとにうんざりなんだ。

「ほら」

 童貞くんの腕を取って布団の上に連れ込みます。パンツを力任せに膝下まで下げて、下を向いたアレを口に含む。あ。ナマで舐めちゃった。まあいいや。どうでも。

「ちょ、ちょっと」

 うるさい。なかなか大きくならない。なんでだよ。気持ちいいだろ? 少し強いくらいに吸うけど、芯が入らない。

「あー! イライラする。なんだよ」
「だ、だから」
「やりたいんだろ! 馬鹿にすんなよ!」
「だから、ちが……ちがいまふ」
「噛んでんじゃねーよ!」
「だ」
「くそ」
「で、出て行けって言うなら、そうします。ただ」

 おどおどして泳ぐ目が、ちらちらと僕の目を覗き込みます。むかつくんだよ。人の顔色窺ってんじゃねえ……。

「ごめんな……ごめんなさい」

 童貞くんはおそるおそる引き下ろされたパンツを上げて、ふらっと立ち上がり、こちらにちょっと頭を下げました。なんだよ。

「何がごめんなさいだよっ!」
「あ、いや、お……怒らせて……」
「どこ行くんだよ!」
「………どこ行きますかね」

 頭をぼりぼり掻いて心底困った顔をしている童貞くんを見て、少し笑えました。どこ行きますかねって。それで少し頭が冷えました。僕が彼に世話になってるんだ。僕が謝らなければ。

「………ごめん。いてください。好きなだけ。水もフライパンも毛布もあんたが持ってきてくれたんだ。僕が出てけって言える立場じゃない」
「い、いや。俺も、一人だと、な、何していいかわかんなくて」

 あなたが色々言ってくれるから、やることがわかりました、と彼はこちらに向かってちょっと微笑みました。








 





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