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第五話「オセロカバディ〜嵐の前触れを添えて〜」
3,カバディ、カバディ、カバディ……
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「それじゃ、オセロカバディ……開始ィィィ!」
成宮の号令と共に、ゲームがスタートした。
先行はジャンケンで、大城決まった。大城はさっそく「カバディ、カバディ」と小声で呟きつつ、中央のマスに白の駒を置き、挟んだ黒の紙を白に変える。
体格からは想像もできない細やかな動きに翻弄され、妹尾はこのターン大城を捕まえることが出来なかった。
「カバディ、行きます!」
攻守交代し、妹尾のターン。
ジリジリとにじり寄ってくる大城を警戒しつつ、素早く駒を置いて白の駒を挟み、黒に変える。
「はたから見ると、不審者だな」
「ゲームなんだから仕方ないでしょ!」
成宮の応援もあり、無事妹尾は最初のターンを終えた。
「どんどん行くカバディ!」
「ばっち来いです、カバディ!」
一進一退の攻防は続き、次第に二人の体力と気力は削られていった。発言の端端にカバディが入り混じる。
体力面は妹尾の方が上回っていたものの、駒の配置を覚えられずに余計に走ったり、置き間違えて高得点のチャンスを逃したりと、ミスを連発していた。
対して、大城は妹尾を追いかけるのではなく、妹尾が置こうとしている駒の前に立ちはだかるのみに留めた。無駄に体力を消耗することなく、効率的にゲームを進めて行こうという魂胆だろう。また、妹尾を捕まえたところで成宮に交代されてしまうため、大城にとってはデメリットしかなかった。
「ラスト10ターン! このまま勝利するカバディよー!」
「どうしよう……これじゃ、負けちゃう!」
妹尾は大城の狙いに気づかず、ただただ焦る。
見かねた成宮は「妹尾」と声をかけた。
「大城に捕まれ。そうすれば、俺と交代して休憩できるぞ」
「ダメです!」
しかし妹尾は即刻、断った。その目には未だ、闘志が宿っていた。
「ここで先輩と交代して勝っても、意味がありません! 私は自分の力だけで、部員として認めて頂きたいのです!」
「妹尾……」
何故こんな馬鹿げたゲームにそこまで情熱を燃やしてくれるのか、成宮にも大城にも正直分からなかった。
ただ、妹尾がどれほど本気で美術部に入りたいのかだけは理解した。
「フッ……うちの高校に、こんな熱い一年がいたとはな」
「フッ……君の熱意には負けたよ。降参だ、美術部への入部を許可しよう」
「フッ……やはり神☆メイの新曲は神曲だ。一日百回……いや、千回は聴かねば」
「何を言ってるんですか。まだゲームが終わってないでしょう? 最後までやり遂げますよ!」
◯●◯●◯
その後、妹尾の快進撃が始まった。
ようやくオセロカバディの勘をつかんだのか、実は体力が有り余っていたのか、大城に一切の攻撃の隙を与えず、残りのマスを黒に染めた。いずれも大量の駒を裏返せる位置にあり、全てのマスが埋まった頃には、盤面が黒に染まっていた。
美術部オセロカバディ史に残る、逆転勝利であった。
「そこまで! 勝者、妹尾!」
すっかり審判になった成宮が、妹尾を手で指し示す。
妹尾は無邪気に飛び跳ね、喜んだ。
「やった! やりましたー!」
「くッ! 全く悔しくない!」
大城も悔しがるフリをしつつ、妹尾の入部を喜ぶ。
その時、放課後の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「おっ、ちょうど下校時間だな」
「では、私はこれでお暇しますね。入部届は明日持ってきますので」
妹尾は教卓の上に置いていたスマホを手に取り、録画を止めた。
そして荷物の鞄を肩にかけると、「また明日です」と笑顔で会釈し、帰って行った。
「妹尾ちゃん……可愛かったなぁ」
「あんなに一生懸命レクリエーションをやってくれるなんて、いい子だな」
「神☆メイには遠く及ばないが、透き通ったいい声だった。耳障りな悲鳴を上げないというのも、ポイントが高い。採用」
残された成宮達はすっかり妹尾の可愛らしさ、人柄、声に惹かれ、気に入ってしまっていた。
彼女が何者であるのかも、知らないまま……。
成宮の号令と共に、ゲームがスタートした。
先行はジャンケンで、大城決まった。大城はさっそく「カバディ、カバディ」と小声で呟きつつ、中央のマスに白の駒を置き、挟んだ黒の紙を白に変える。
体格からは想像もできない細やかな動きに翻弄され、妹尾はこのターン大城を捕まえることが出来なかった。
「カバディ、行きます!」
攻守交代し、妹尾のターン。
ジリジリとにじり寄ってくる大城を警戒しつつ、素早く駒を置いて白の駒を挟み、黒に変える。
「はたから見ると、不審者だな」
「ゲームなんだから仕方ないでしょ!」
成宮の応援もあり、無事妹尾は最初のターンを終えた。
「どんどん行くカバディ!」
「ばっち来いです、カバディ!」
一進一退の攻防は続き、次第に二人の体力と気力は削られていった。発言の端端にカバディが入り混じる。
体力面は妹尾の方が上回っていたものの、駒の配置を覚えられずに余計に走ったり、置き間違えて高得点のチャンスを逃したりと、ミスを連発していた。
対して、大城は妹尾を追いかけるのではなく、妹尾が置こうとしている駒の前に立ちはだかるのみに留めた。無駄に体力を消耗することなく、効率的にゲームを進めて行こうという魂胆だろう。また、妹尾を捕まえたところで成宮に交代されてしまうため、大城にとってはデメリットしかなかった。
「ラスト10ターン! このまま勝利するカバディよー!」
「どうしよう……これじゃ、負けちゃう!」
妹尾は大城の狙いに気づかず、ただただ焦る。
見かねた成宮は「妹尾」と声をかけた。
「大城に捕まれ。そうすれば、俺と交代して休憩できるぞ」
「ダメです!」
しかし妹尾は即刻、断った。その目には未だ、闘志が宿っていた。
「ここで先輩と交代して勝っても、意味がありません! 私は自分の力だけで、部員として認めて頂きたいのです!」
「妹尾……」
何故こんな馬鹿げたゲームにそこまで情熱を燃やしてくれるのか、成宮にも大城にも正直分からなかった。
ただ、妹尾がどれほど本気で美術部に入りたいのかだけは理解した。
「フッ……うちの高校に、こんな熱い一年がいたとはな」
「フッ……君の熱意には負けたよ。降参だ、美術部への入部を許可しよう」
「フッ……やはり神☆メイの新曲は神曲だ。一日百回……いや、千回は聴かねば」
「何を言ってるんですか。まだゲームが終わってないでしょう? 最後までやり遂げますよ!」
◯●◯●◯
その後、妹尾の快進撃が始まった。
ようやくオセロカバディの勘をつかんだのか、実は体力が有り余っていたのか、大城に一切の攻撃の隙を与えず、残りのマスを黒に染めた。いずれも大量の駒を裏返せる位置にあり、全てのマスが埋まった頃には、盤面が黒に染まっていた。
美術部オセロカバディ史に残る、逆転勝利であった。
「そこまで! 勝者、妹尾!」
すっかり審判になった成宮が、妹尾を手で指し示す。
妹尾は無邪気に飛び跳ね、喜んだ。
「やった! やりましたー!」
「くッ! 全く悔しくない!」
大城も悔しがるフリをしつつ、妹尾の入部を喜ぶ。
その時、放課後の終了を知らせるチャイムが鳴った。
「おっ、ちょうど下校時間だな」
「では、私はこれでお暇しますね。入部届は明日持ってきますので」
妹尾は教卓の上に置いていたスマホを手に取り、録画を止めた。
そして荷物の鞄を肩にかけると、「また明日です」と笑顔で会釈し、帰って行った。
「妹尾ちゃん……可愛かったなぁ」
「あんなに一生懸命レクリエーションをやってくれるなんて、いい子だな」
「神☆メイには遠く及ばないが、透き通ったいい声だった。耳障りな悲鳴を上げないというのも、ポイントが高い。採用」
残された成宮達はすっかり妹尾の可愛らしさ、人柄、声に惹かれ、気に入ってしまっていた。
彼女が何者であるのかも、知らないまま……。
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