30 / 97
第五話「オセロカバディ〜嵐の前触れを添えて〜」
2,ルール説明だ!
しおりを挟む
成宮達と女子生徒は創作ゲームの準備をしつつ、お互いに自己紹介した。
「俺は成宮創介。こっちの太……恰幅がいいのが、大城太志。ヘッドホンをつけてるのが音来響だ」
「成宮君、"恰幅がいい"と"太い"は同じ意味だよ」
「じゃあ、"包容力がある"に変更で。あともう一人、麻根路屋乙女という女子のマネージャーがいるが、今日は休んでいて来ていない。全員二年生だ」
「私は一年生の妹尾花と申します。今日はよろしくお願いします」
女子生徒、妹尾はペコリとお辞儀をする。名前通り、彼女の一つ一つの動作が可愛らしく見えた。
「花ちゃんかぁ~。可愛い名前だね」
「はい! 私も気に入っています! 昔は"トイレの花子さん"とか"鼻垂れ花"などと罵られましたが、片っ端からコテンパンにやっつけて来ました!」
「可愛いだけじゃなくて、ガッツもあるんだ~。そういうギャップ萌えなのって、いいよねぇ」
大城は妹尾の可愛さにすっかりやられ、デレデレしていた。
◯●◯●◯
美術室の中央の机の上には、白く塗られた紙と黒く塗られた紙が二枚ずつ、同じ色同士が交互にナナメに隣り合うよう置かれた。完全に隣り合っているわけではなく、少し隙間が空いている。
その配置は、紙の形こそ四角形ではあるが、オセロの最初の盤面と一致していた。
「それじゃ、これからやるオセロカバディの説明をするぞ」
「はい!」
成宮は妹尾を教壇に上がらせ、説明した。
「オセロカバディとは、その名の通りオセロとカバディを合体させたゲームだ。まずはオセロ……これは教室の机をボード、紙を駒に見立てて行う。制限時間はないが、新しく駒を置き、ひっくり返すまでやり遂げないと、相手のターンにはならない。最終的な勝敗は通常のオセロと同じように、駒の数が多い方が勝者とする」
「つまり、教室を利用した巨大オセロというわけですね。でも、制限時間が無いというのは、いささか簡単過ぎませんか?」
すると成宮達は般若のような形相で、クワっと目を剥いた。
「無茶言うな! 制限時間無しじゃないと、死ぬぞ!」
「これは巨大オセロじゃない……オセロカバディなんだよ?!」
「美術部史上、最もキツいと言っても過言ではない! 俺はこれで全身筋肉痛になりました!」
「そ、そんなにキツいゲームなんですか……?」
あまりの気迫に、妹尾は引く。
それを見て、成宮達はスッと元に戻った。
「キツいが、楽しいぞ?」
「ダイエットにもなるし」
「レッツ・オセロカバディ!」
三人揃ってにこやかに微笑み、グッと親指を立てる。その目は明らかに死んでいた。
「は、はぁ……それで、カバディ部分のルールはどんな感じなんですか? というか、カバディって何なんですか?」
「カバディとは、南アジアで主に行われているチームスポーツだ。インドの国技でもある。主な特徴としては、競技中に攻撃者は"カバディ"と言い続けていなければならないというルールがあることだな。今回やるオセロカバディでのカバディは、実際のカバディのルールとは違い、鬼ごっこのようなものだ」
お手本として、音来が両手を広げ「カバディ、カバディ」と呟きながら、大城ににじりよる。
大城は音来から目を離さないまま、後退していった。
「このように、マスを動かしていない方は"カバディ"と言い続けている間のみ動き、相手プレイヤーを捕まえることが出来る。教室の中だから、原則走るのは禁止。早歩きまでオッケーだ。捕まったプレイヤーは、1ターン動けなくなる。捕まらないよう逃げつつ、オセロを進めていくのが肝だな」
「全てのプレイヤーが捕まったら、人数の分だけ休みになるんですか? それに、全員捕まった時点でひっくり返すのが途中だったら、そのままにしておくんですか?」
「今回は人数が少ないから関係ないが、休みは最高で3ターンまでだ。さすがに10ターンまで休みとなると、ゲームがグダグダになるからな。ひっくり返す途中で捕まったら、そのプレイヤーはもう駒には触れない。駒を置く前に捕まったら、そのターンは一つも駒を置けないまま交代となる」
「なるほど……制限時間がないのはそういうことだったんですね。捕まる前に駒を置くという工程そのものが、制限時間みたいなものだから」
「そういうこと。今回はハンデとして、俺と妹尾VS大城、審判は音来でやろう」
「はい! 成宮先輩、よろしくお願いします!」
「ちょちょちょいちょい!」
圧倒的に不利な対戦に、大城は物言いをつけた。
「それ、僕がしんどいだけのゲームじゃん! 成宮君一人は、僕の十人分に匹敵するんだよ?! 僕が負けるのは全然いいけど、妹尾ちゃんだって無双したいわけじゃないでしょ?! せめて、僕の代わりに音来君がプレイヤーになるか、ハンデを頂戴よ!」
「さっきダイエットになるって言ってたじゃないか。仕方ないな……」
成宮はカバディをやめ、教壇に腰掛けている音来に頼んでみた。
「音来、悪いがプレイヤーをやってくれないか?」
「断る。俺は今から神☆メイタイムに入らねばならない」
「じゃあ、仕方ないな。大城にハンデをつけるか」
成宮はあっさり諦め、大城と妹尾にハンデを告げた。
「俺は妹尾が行動不能になっている間だけ、ゲームに参加する。すなわち、大城と妹尾の一騎討ちだ。二人とも、それでいいか?」
「いいよ。それなら僕もバテずに済みそうだ」
「一人は心細いですが、頑張ります!」
「よし。それじゃ、配置についてくれ」
するとふと、妹尾は「そうだ!」と思い出したかのように手をぽん、と打ち、ポケットからスマホを取り出した。
「ゲームの様子を録画させてもらってもいいですか? 記念に撮っておきたいんです!」
「あぁ、いいぞ。全体を見渡せるように、教卓の上に置いたらいいんじゃないか?」
「はい! ありがとうございます」
妹尾は成宮に言われた通り、筆箱を支えにして、教卓の上にスマホを置き、録画ボタンを押した。
「俺は成宮創介。こっちの太……恰幅がいいのが、大城太志。ヘッドホンをつけてるのが音来響だ」
「成宮君、"恰幅がいい"と"太い"は同じ意味だよ」
「じゃあ、"包容力がある"に変更で。あともう一人、麻根路屋乙女という女子のマネージャーがいるが、今日は休んでいて来ていない。全員二年生だ」
「私は一年生の妹尾花と申します。今日はよろしくお願いします」
女子生徒、妹尾はペコリとお辞儀をする。名前通り、彼女の一つ一つの動作が可愛らしく見えた。
「花ちゃんかぁ~。可愛い名前だね」
「はい! 私も気に入っています! 昔は"トイレの花子さん"とか"鼻垂れ花"などと罵られましたが、片っ端からコテンパンにやっつけて来ました!」
「可愛いだけじゃなくて、ガッツもあるんだ~。そういうギャップ萌えなのって、いいよねぇ」
大城は妹尾の可愛さにすっかりやられ、デレデレしていた。
◯●◯●◯
美術室の中央の机の上には、白く塗られた紙と黒く塗られた紙が二枚ずつ、同じ色同士が交互にナナメに隣り合うよう置かれた。完全に隣り合っているわけではなく、少し隙間が空いている。
その配置は、紙の形こそ四角形ではあるが、オセロの最初の盤面と一致していた。
「それじゃ、これからやるオセロカバディの説明をするぞ」
「はい!」
成宮は妹尾を教壇に上がらせ、説明した。
「オセロカバディとは、その名の通りオセロとカバディを合体させたゲームだ。まずはオセロ……これは教室の机をボード、紙を駒に見立てて行う。制限時間はないが、新しく駒を置き、ひっくり返すまでやり遂げないと、相手のターンにはならない。最終的な勝敗は通常のオセロと同じように、駒の数が多い方が勝者とする」
「つまり、教室を利用した巨大オセロというわけですね。でも、制限時間が無いというのは、いささか簡単過ぎませんか?」
すると成宮達は般若のような形相で、クワっと目を剥いた。
「無茶言うな! 制限時間無しじゃないと、死ぬぞ!」
「これは巨大オセロじゃない……オセロカバディなんだよ?!」
「美術部史上、最もキツいと言っても過言ではない! 俺はこれで全身筋肉痛になりました!」
「そ、そんなにキツいゲームなんですか……?」
あまりの気迫に、妹尾は引く。
それを見て、成宮達はスッと元に戻った。
「キツいが、楽しいぞ?」
「ダイエットにもなるし」
「レッツ・オセロカバディ!」
三人揃ってにこやかに微笑み、グッと親指を立てる。その目は明らかに死んでいた。
「は、はぁ……それで、カバディ部分のルールはどんな感じなんですか? というか、カバディって何なんですか?」
「カバディとは、南アジアで主に行われているチームスポーツだ。インドの国技でもある。主な特徴としては、競技中に攻撃者は"カバディ"と言い続けていなければならないというルールがあることだな。今回やるオセロカバディでのカバディは、実際のカバディのルールとは違い、鬼ごっこのようなものだ」
お手本として、音来が両手を広げ「カバディ、カバディ」と呟きながら、大城ににじりよる。
大城は音来から目を離さないまま、後退していった。
「このように、マスを動かしていない方は"カバディ"と言い続けている間のみ動き、相手プレイヤーを捕まえることが出来る。教室の中だから、原則走るのは禁止。早歩きまでオッケーだ。捕まったプレイヤーは、1ターン動けなくなる。捕まらないよう逃げつつ、オセロを進めていくのが肝だな」
「全てのプレイヤーが捕まったら、人数の分だけ休みになるんですか? それに、全員捕まった時点でひっくり返すのが途中だったら、そのままにしておくんですか?」
「今回は人数が少ないから関係ないが、休みは最高で3ターンまでだ。さすがに10ターンまで休みとなると、ゲームがグダグダになるからな。ひっくり返す途中で捕まったら、そのプレイヤーはもう駒には触れない。駒を置く前に捕まったら、そのターンは一つも駒を置けないまま交代となる」
「なるほど……制限時間がないのはそういうことだったんですね。捕まる前に駒を置くという工程そのものが、制限時間みたいなものだから」
「そういうこと。今回はハンデとして、俺と妹尾VS大城、審判は音来でやろう」
「はい! 成宮先輩、よろしくお願いします!」
「ちょちょちょいちょい!」
圧倒的に不利な対戦に、大城は物言いをつけた。
「それ、僕がしんどいだけのゲームじゃん! 成宮君一人は、僕の十人分に匹敵するんだよ?! 僕が負けるのは全然いいけど、妹尾ちゃんだって無双したいわけじゃないでしょ?! せめて、僕の代わりに音来君がプレイヤーになるか、ハンデを頂戴よ!」
「さっきダイエットになるって言ってたじゃないか。仕方ないな……」
成宮はカバディをやめ、教壇に腰掛けている音来に頼んでみた。
「音来、悪いがプレイヤーをやってくれないか?」
「断る。俺は今から神☆メイタイムに入らねばならない」
「じゃあ、仕方ないな。大城にハンデをつけるか」
成宮はあっさり諦め、大城と妹尾にハンデを告げた。
「俺は妹尾が行動不能になっている間だけ、ゲームに参加する。すなわち、大城と妹尾の一騎討ちだ。二人とも、それでいいか?」
「いいよ。それなら僕もバテずに済みそうだ」
「一人は心細いですが、頑張ります!」
「よし。それじゃ、配置についてくれ」
するとふと、妹尾は「そうだ!」と思い出したかのように手をぽん、と打ち、ポケットからスマホを取り出した。
「ゲームの様子を録画させてもらってもいいですか? 記念に撮っておきたいんです!」
「あぁ、いいぞ。全体を見渡せるように、教卓の上に置いたらいいんじゃないか?」
「はい! ありがとうございます」
妹尾は成宮に言われた通り、筆箱を支えにして、教卓の上にスマホを置き、録画ボタンを押した。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
最底辺の落ちこぼれ、実は彼がハイスペックであることを知っている元幼馴染のヤンデレ義妹が入学してきたせいで真の実力が発覚してしまう!
電脳ピエロ
恋愛
時野 玲二はとある事情から真の実力を隠しており、常に退学ギリギリの成績をとっていたことから最底辺の落ちこぼれとバカにされていた。
しかし玲二が2年生になった頃、時を同じくして義理の妹になった人気モデルの神堂 朱音が入学してきたことにより、彼の実力隠しは終わりを迎えようとしていた。
「わたしは大好きなお義兄様の真の実力を、全校生徒に知らしめたいんです♡ そして、全校生徒から羨望の眼差しを向けられているお兄様をわたしだけのものにすることに興奮するんです……あぁんっ♡ お義兄様ぁ♡」
朱音は玲二が実力隠しを始めるよりも前、幼少期からの幼馴染だった。
そして義理の兄妹として再開した現在、玲二に対して変質的な愛情を抱くヤンデレなブラコン義妹に変貌していた朱音は、あの手この手を使って彼の真の実力を発覚させようとしてくる!
――俺はもう、人に期待されるのはごめんなんだ。
そんな玲二の願いは叶うことなく、ヤンデレ義妹の暴走によって彼がハイスペックであるという噂は徐々に学校中へと広まっていく。
やがて玲二の真の実力に危機感を覚えた生徒会までもが動き始めてしまい……。
義兄の実力を全校生徒に知らしめたい、ブラコンにしてヤンデレの人気モデル VS 真の実力を絶対に隠し通したい、実は最強な最底辺の陰キャぼっち。
二人の心理戦は、やがて学校全体を巻き込むほどの大きな戦いへと発展していく。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
雨上がりに僕らは駆けていく Part2
平木明日香
青春
学校の帰り道に突如現れた謎の女
彼女は、遠い未来から来たと言った。
「甲子園に行くで」
そんなこと言っても、俺たち、初対面だよな?
グラウンドに誘われ、彼女はマウンドに立つ。
ひらりとスカートが舞い、パンツが見えた。
しかしそれとは裏腹に、とんでもないボールを投げてきたんだ。
リストカット伝染圧
クナリ
青春
高校一年生の真名月リツは、二学期から東京の高校に転校してきた。
そこで出会ったのは、「その生徒に触れた人は、必ず手首を切ってしまう」と噂される同級生、鈍村鉄子だった。
鉄子は左手首に何本もの傷を持つ自殺念慮の持ち主で、彼女に触れると、その衝動が伝染してリストカットをさせてしまうという。
リツの両親は春に離婚しており、妹は不登校となって、なにかと不安定な状態だったが、不愛想な鉄子と少しずつ打ち解けあい、鉄子に触れないように気をつけながらも関係を深めていく。
表面上は鉄面皮であっても、内面はリツ以上に不安定で苦しみ続けている鉄子のために、内向的過ぎる状態からだんだんと変わっていくリツだったが、ある日とうとう鉄子と接触してしまう。
私たち、博麗学園おしがまクラブ(非公認)です! 〜特大膀胱JKたちのおしがま記録〜
赤髪命
青春
街のはずれ、最寄り駅からも少し離れたところにある私立高校、博麗学園。そのある新入生のクラスのお嬢様・高橋玲菜、清楚で真面目・内海栞、人懐っこいギャル・宮内愛海の3人には、膀胱が同年代の女子に比べて非常に大きいという特徴があった。
これは、そんな学校で普段はトイレにほとんど行かない彼女たちの爆尿おしがまの記録。
友情あり、恋愛あり、おしがまあり、そしておもらしもあり!? そんなおしがまクラブのドタバタ青春小説!
イラスト部(仮)の雨宮さんはペンが持てない!~スキンシップ多めの美少女幽霊と部活を立ち上げる話~
川上とむ
青春
内川護は高校の空き教室で、元気な幽霊の少女と出会う。
その幽霊少女は雨宮と名乗り、自分の代わりにイラスト部を復活させてほしいと頼み込んでくる。
彼女の押しに負けた護は部員の勧誘をはじめるが、入部してくるのは霊感持ちのクラス委員長や、ゆるふわな先輩といった一風変わった女生徒たち。
その一方で、雨宮はことあるごとに護と行動をともにするようになり、二人の距離は自然と近づいていく。
――スキンシップ過多の幽霊さんとスクールライフ、ここに開幕!
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる