美術部俺達

緋色刹那

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第五話「オセロカバディ〜嵐の前触れを添えて〜」

2,ルール説明だ!

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 成宮達と女子生徒は創作ゲームの準備をしつつ、お互いに自己紹介した。
「俺は成宮創介。こっちの太……恰幅がいいのが、大城太志。ヘッドホンをつけてるのが音来響だ」
「成宮君、"恰幅がいい"と"太い"は同じ意味だよ」
「じゃあ、"包容力がある"に変更で。あともう一人、麻根路屋乙女という女子のマネージャーがいるが、今日は休んでいて来ていない。全員二年生だ」
「私は一年生の妹尾花せのおはなと申します。今日はよろしくお願いします」
 女子生徒、妹尾はペコリとお辞儀をする。名前通り、彼女の一つ一つの動作が可愛らしく見えた。
「花ちゃんかぁ~。可愛い名前だね」
「はい! 私も気に入っています! 昔は"トイレの花子さん"とか"鼻垂れ花"などと罵られましたが、片っ端からコテンパンにやっつけて来ました!」
「可愛いだけじゃなくて、ガッツもあるんだ~。そういうギャップ萌えなのって、いいよねぇ」
 大城は妹尾の可愛さにすっかりやられ、デレデレしていた。

     ◯●◯●◯

 美術室の中央の机の上には、白く塗られた紙と黒く塗られた紙が二枚ずつ、同じ色同士が交互にナナメに隣り合うよう置かれた。完全に隣り合っているわけではなく、少し隙間が空いている。
 その配置は、紙の形こそ四角形ではあるが、オセロの最初の盤面と一致していた。
「それじゃ、これからやるオセロカバディの説明をするぞ」
「はい!」
 成宮は妹尾を教壇に上がらせ、説明した。
「オセロカバディとは、その名の通りオセロとカバディを合体させたゲームだ。まずはオセロ……これは教室の机をボード、紙を駒に見立てて行う。制限時間はないが、新しく駒を置き、ひっくり返すまでやり遂げないと、相手のターンにはならない。最終的な勝敗は通常のオセロと同じように、駒の数が多い方が勝者とする」
「つまり、教室を利用した巨大オセロというわけですね。でも、制限時間が無いというのは、いささか簡単過ぎませんか?」
 すると成宮達は般若のような形相で、クワっと目を剥いた。
「無茶言うな! 制限時間無しじゃないと、死ぬぞ!」
「これは巨大オセロじゃない……オセロカバディなんだよ?!」
「美術部史上、最もキツいと言っても過言ではない! 俺はこれで全身筋肉痛になりました!」
「そ、そんなにキツいゲームなんですか……?」
 あまりの気迫に、妹尾は引く。
 それを見て、成宮達はスッと元に戻った。
「キツいが、楽しいぞ?」
「ダイエットにもなるし」
「レッツ・オセロカバディ!」
 三人揃ってにこやかに微笑み、グッと親指を立てる。その目は明らかに死んでいた。
「は、はぁ……それで、カバディ部分のルールはどんな感じなんですか? というか、カバディって何なんですか?」
「カバディとは、南アジアで主に行われているチームスポーツだ。インドの国技でもある。主な特徴としては、競技中に攻撃者は"カバディ"と言い続けていなければならないというルールがあることだな。今回やるオセロカバディでのカバディは、実際のカバディのルールとは違い、鬼ごっこのようなものだ」
 お手本として、音来が両手を広げ「カバディ、カバディ」と呟きながら、大城ににじりよる。
 大城は音来から目を離さないまま、後退していった。
「このように、マスを動かしていない方は"カバディ"と言い続けている間のみ動き、相手プレイヤーを捕まえることが出来る。教室の中だから、原則走るのは禁止。早歩きまでオッケーだ。捕まったプレイヤーは、1ターン動けなくなる。捕まらないよう逃げつつ、オセロを進めていくのが肝だな」
「全てのプレイヤーが捕まったら、人数の分だけ休みになるんですか? それに、全員捕まった時点でひっくり返すのが途中だったら、そのままにしておくんですか?」
「今回は人数が少ないから関係ないが、休みは最高で3ターンまでだ。さすがに10ターンまで休みとなると、ゲームがグダグダになるからな。ひっくり返す途中で捕まったら、そのプレイヤーはもう駒には触れない。駒を置く前に捕まったら、そのターンは一つも駒を置けないまま交代となる」
「なるほど……制限時間がないのはそういうことだったんですね。捕まる前に駒を置くという工程そのものが、制限時間みたいなものだから」
「そういうこと。今回はハンデとして、俺と妹尾VS大城、審判は音来でやろう」
「はい! 成宮先輩、よろしくお願いします!」
「ちょちょちょいちょい!」
 圧倒的に不利な対戦に、大城は物言いをつけた。
「それ、僕がしんどいだけのゲームじゃん! 成宮君一人は、僕の十人分に匹敵するんだよ?! 僕が負けるのは全然いいけど、妹尾ちゃんだって無双したいわけじゃないでしょ?! せめて、僕の代わりに音来君がプレイヤーになるか、ハンデを頂戴よ!」
「さっきダイエットになるって言ってたじゃないか。仕方ないな……」
 成宮はカバディをやめ、教壇に腰掛けている音来に頼んでみた。
「音来、悪いがプレイヤーをやってくれないか?」
「断る。俺は今から神☆メイタイムに入らねばならない」
「じゃあ、仕方ないな。大城にハンデをつけるか」
 成宮はあっさり諦め、大城と妹尾にハンデを告げた。
「俺は妹尾が行動不能になっている間だけ、ゲームに参加する。すなわち、大城と妹尾の一騎討ちだ。二人とも、それでいいか?」
「いいよ。それなら僕もバテずに済みそうだ」
「一人は心細いですが、頑張ります!」
「よし。それじゃ、配置についてくれ」
 するとふと、妹尾は「そうだ!」と思い出したかのように手をぽん、と打ち、ポケットからスマホを取り出した。
「ゲームの様子を録画させてもらってもいいですか? 記念に撮っておきたいんです!」
「あぁ、いいぞ。全体を見渡せるように、教卓の上に置いたらいいんじゃないか?」
「はい! ありがとうございます」
 妹尾は成宮に言われた通り、筆箱を支えにして、教卓の上にスマホを置き、録画ボタンを押した。
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