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第二話「成宮の恋の予感(出会い)」
3,禁断のドア
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黒板の字を見た成宮達は一斉に立ち上がり、麻根路屋に抗議した。
「本気か、麻根路屋?! いや、マネージャー!」
「絵なんてまともに描いたことないのに、コンクールとか文化祭とか、ちょっとハードル高くない?!」
「俺の至福の時間を潰す気か!」
それに対し、麻根路屋もといマネージャーは至って冷静に答えた。
「別に、賞を取れって言っているわけじゃないわ。参加してくれさえすればいいの。もし落選しても、文化祭はコンクールの結果発表の一ヶ月後に開催されるから、同じ絵を使い回せるし。客観的に見て、"この部は活動している"って証明できた方が説得力があるでしょう?」
「まぁ……確かに」
「一枚だけでいいなら、至福の時間を死守できそうだ」
マネージャーの言葉に、大城と音来は納得する。
しかし、成宮だけは表情が強張ったままだった。
「……ちょっと考えさせてくれないか?」
「いいけど、何か不都合なことでもあるの?」
「俺は絵を描くのが苦手なんだ。下手とか上手いとか関係なく、描くことに抵抗があるんだよ」
いつになく思い詰めている様子の成宮に、マネージャーも「何か事情があるのね」と察し、それ以上は追求しなかった。
「なるべく早く決めて頂戴ね。無理にとは言わないけど、参加してくれると助かるわ」
「努力する」
成宮は申し訳なさそうに頷いた。
「仕方ないよ。成宮くんの絵嫌いは本物だからね」
「絵しりとりリレーすら参加しなかった」
大城と音来も理解を示し、とりあえず成宮の参加は保留となった。
◯●◯●◯
「それじゃ、大城くんと音来くんの参加は確定ってことで、今日から作品製作を始めましょうか」
そう言うなり、マネージャーは隣の美術準備室へ通じるドアへと歩き出した。
「「「あっ!」」」
途端に、成宮達の顔色が変わった。マネージャーがドアにたどり着くより先にドアの前へ駆け寄り、両手を広げて行く手を阻む。
案の定、マネージャーは訝しげに眉をひそめた。
「どうしたの? どいてくれないと、画材を取りに行けないんだけど」
「が、画材なら美術室にもあるじゃないか」
「そ、そうだよ! 紙とか絵の具とか絵筆とか……一通りの道具は揃ってるでしょ?」
「そ、それに、ここは普段は鍵がかかっていて入れないんだ。入るなら、鍵を持って来ないと」
成宮達はしどろもどろになりながらも、なんとかマネージャーをドアを引き離そうと、にじり寄る。
マネージャーは反射的に後退り、三人を睨んだ。
「……怪しいわね。本当に鍵なんてかかってるの? まさか、都合の悪い物でも隠してるんじゃないでしょうね?」
「そ、そんなに言うなら、開けてみるか?」
成宮は後ろ手にドアノブをひねり、鍵がかかっていることを確認してから、マネージャーに言った。
大城と音来は成宮の発言に驚き、彼を疑うように視線を向けた。
「だ、大丈夫なんだよね?」
大城が成宮に耳打ちし、確認する。
成宮は黙って頷き、ドアノブを指差した。
「さっき確認した。ちゃんと中から閉まってる」
「よし」
大城と音来は成宮を信じ、ドアの前から退いた。
「さっきはダメって言ってたのに……だったら、最初から通してよ」
「悪いな。俺達にも心の準備があるんだ」
マネージャーはドアへと歩み寄るとドアノブをつかみ、ひねって前へと押した。
しかし成宮が確認した通り、ドアは内側から鍵がかかっており、開かなかった。
「開かない……本当に鍵がかかってるのかしら?」
それでもマネージャーは諦めず、何度もドアノブを押したり引いたり回したりした。ドアノブが「ガチャガチャ」と騒々しくひねられるたびに、成宮達はだんだん不安になってきた。
もちろん、マネージャーが力づくでドアを破壊できるとは思ってはいない。気がかりだったのは、別のことだった。
「ねぇ、準備室に柄本先生、いなかったよね?」
大城に聞かれ、成宮と音来は記憶をたどってみる。
「さぁ……? 確認してこなかったな」
「いたとしても、昼寝でもしてるんじゃないか?」
その時、美術準備室のドアの向こうから「ガサガサ」と誰かが何かを掻き分け、こちらへ近づいてきた。
「はいはーい、今開けますよー」
その声を聞いた瞬間、成宮達は再度青ざめた。
「うわ、やばっ」
「マネージャーさん、ちょっとこっちに来てもらえる?」
「は? 何でよ?」
慌ててマネージャーをドアから引き離そうとするが、彼女は動こうとしない。それどころか鋭く睨まれ、あまりの気迫に三人は硬直した。
その間にドアの鍵が「ガチャッ」と音を立てて開かれ、ドアが準備室の中から押し開けられた。
「本気か、麻根路屋?! いや、マネージャー!」
「絵なんてまともに描いたことないのに、コンクールとか文化祭とか、ちょっとハードル高くない?!」
「俺の至福の時間を潰す気か!」
それに対し、麻根路屋もといマネージャーは至って冷静に答えた。
「別に、賞を取れって言っているわけじゃないわ。参加してくれさえすればいいの。もし落選しても、文化祭はコンクールの結果発表の一ヶ月後に開催されるから、同じ絵を使い回せるし。客観的に見て、"この部は活動している"って証明できた方が説得力があるでしょう?」
「まぁ……確かに」
「一枚だけでいいなら、至福の時間を死守できそうだ」
マネージャーの言葉に、大城と音来は納得する。
しかし、成宮だけは表情が強張ったままだった。
「……ちょっと考えさせてくれないか?」
「いいけど、何か不都合なことでもあるの?」
「俺は絵を描くのが苦手なんだ。下手とか上手いとか関係なく、描くことに抵抗があるんだよ」
いつになく思い詰めている様子の成宮に、マネージャーも「何か事情があるのね」と察し、それ以上は追求しなかった。
「なるべく早く決めて頂戴ね。無理にとは言わないけど、参加してくれると助かるわ」
「努力する」
成宮は申し訳なさそうに頷いた。
「仕方ないよ。成宮くんの絵嫌いは本物だからね」
「絵しりとりリレーすら参加しなかった」
大城と音来も理解を示し、とりあえず成宮の参加は保留となった。
◯●◯●◯
「それじゃ、大城くんと音来くんの参加は確定ってことで、今日から作品製作を始めましょうか」
そう言うなり、マネージャーは隣の美術準備室へ通じるドアへと歩き出した。
「「「あっ!」」」
途端に、成宮達の顔色が変わった。マネージャーがドアにたどり着くより先にドアの前へ駆け寄り、両手を広げて行く手を阻む。
案の定、マネージャーは訝しげに眉をひそめた。
「どうしたの? どいてくれないと、画材を取りに行けないんだけど」
「が、画材なら美術室にもあるじゃないか」
「そ、そうだよ! 紙とか絵の具とか絵筆とか……一通りの道具は揃ってるでしょ?」
「そ、それに、ここは普段は鍵がかかっていて入れないんだ。入るなら、鍵を持って来ないと」
成宮達はしどろもどろになりながらも、なんとかマネージャーをドアを引き離そうと、にじり寄る。
マネージャーは反射的に後退り、三人を睨んだ。
「……怪しいわね。本当に鍵なんてかかってるの? まさか、都合の悪い物でも隠してるんじゃないでしょうね?」
「そ、そんなに言うなら、開けてみるか?」
成宮は後ろ手にドアノブをひねり、鍵がかかっていることを確認してから、マネージャーに言った。
大城と音来は成宮の発言に驚き、彼を疑うように視線を向けた。
「だ、大丈夫なんだよね?」
大城が成宮に耳打ちし、確認する。
成宮は黙って頷き、ドアノブを指差した。
「さっき確認した。ちゃんと中から閉まってる」
「よし」
大城と音来は成宮を信じ、ドアの前から退いた。
「さっきはダメって言ってたのに……だったら、最初から通してよ」
「悪いな。俺達にも心の準備があるんだ」
マネージャーはドアへと歩み寄るとドアノブをつかみ、ひねって前へと押した。
しかし成宮が確認した通り、ドアは内側から鍵がかかっており、開かなかった。
「開かない……本当に鍵がかかってるのかしら?」
それでもマネージャーは諦めず、何度もドアノブを押したり引いたり回したりした。ドアノブが「ガチャガチャ」と騒々しくひねられるたびに、成宮達はだんだん不安になってきた。
もちろん、マネージャーが力づくでドアを破壊できるとは思ってはいない。気がかりだったのは、別のことだった。
「ねぇ、準備室に柄本先生、いなかったよね?」
大城に聞かれ、成宮と音来は記憶をたどってみる。
「さぁ……? 確認してこなかったな」
「いたとしても、昼寝でもしてるんじゃないか?」
その時、美術準備室のドアの向こうから「ガサガサ」と誰かが何かを掻き分け、こちらへ近づいてきた。
「はいはーい、今開けますよー」
その声を聞いた瞬間、成宮達は再度青ざめた。
「うわ、やばっ」
「マネージャーさん、ちょっとこっちに来てもらえる?」
「は? 何でよ?」
慌ててマネージャーをドアから引き離そうとするが、彼女は動こうとしない。それどころか鋭く睨まれ、あまりの気迫に三人は硬直した。
その間にドアの鍵が「ガチャッ」と音を立てて開かれ、ドアが準備室の中から押し開けられた。
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