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第二話「成宮の恋の予感(出会い)」
2,マネージャー
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チェックメイト=チェスが終わると、女子生徒は成宮達を席に座らせ、黒板の前に立った。
「それでは、今後の美術部の方針について話し合いを行います。まずは自己紹介を」
女子生徒は白のチョークで黒板に名前を書いた。
「私は二年A組の麻根路屋乙女です。今年、別の高校から編入してきました。昨日まで生徒会の役員をしておりましたが、訳あって今日クビになりました」
「クビ?!」
「ずいぶん急だな」
女子生徒、麻根路屋は静かに頷いた。
「生徒会の業務との兼ね合いもあると思って、一応会長に美術部への入部を報告したの。ところが、"曲がりなりにも生徒会の一員である生徒が、一切絵を描いていないくせに美術部を名乗っているような連中とつるんでいるのは、よろしくない。生徒会か美術部のどちらか選びなさい"と言われてね……即刻、脱会してきたわ」
「良かったのか? 辞めて」
成宮達は麻根路屋の身を案じ、顔を曇らせた。
「僕達だって廃部は嫌だけど、麻根路屋さんに迷惑はかけたくないよ」
「生徒会の方が、将来的に有利だしな」
しかし麻根路屋は「いいえ」と首を振った。その目には確固たる強い意志があった。
「私は美術部に残るわ。確かに、昨日までは"私でも誰かの力になれるなら"と、独善的な理由で入部を決めた。でも、会長に貴方達を侮辱された時、無性に腹が立ったの。昨日の貴方達は部を存続させようと、自分達なりに部員集めに奔走していた……美術部なのに絵を一切描かず、昼休みの延長のような活動をしているとはいえ、その努力は本物だわ。それを、生徒のことを考えるべき生徒会長が見下すなんて、あり得ない!」
麻根路屋は成宮達を睨むように眼光を鋭くさせ、ニッと不適に笑った。
「だから、私は決めたの。あの女に美術部を認めさせ、最終的には"私も美術部に入部させて下さい"と懇願させてやるってね……!」
「お、おぉ。君がそこまで美術部のことを考えてくれていたなんて、嬉しいな」
「漂う、強キャラ感……! これは期待大だね!」
「生徒会長なんざ、ブッ倒せ!」
麻根路屋から発せられる殺気に、成宮達は圧倒されながらも、頼もしく思う。
すると麻根路屋は殺気立ったまま、成宮達を睨みつけた。
「何よ、他人事みたいに。私はマネージャーであって、メインは貴方達なのよ?」
聞き慣れない単語に、三人の目が一斉に点になる。
「へ?」
「マネージャー?」
「美術部に?」
「そうよ」
麻根路屋は当然のように頷いた。
「昨日、言ったでしょう? 今の美術部のままじゃ、部員がいても廃部になりかねないって。だから、私が貴方達のマネージャーになって、美術部を部として存続させる手伝いをしようと思ったのよ。手始めに……」
麻根路屋はチョークで黒板に何やら書き込み、振り返る。
書いている間は麻根路屋の背中に隠れて見えなかった文字が成宮達の視界に入り、三人はアングリと口を開いた。
そこには美しい文字で
『夏の高校生絵画コンクールへの参加、および文化祭にて作品展示』
と書いてあった。
「それでは、今後の美術部の方針について話し合いを行います。まずは自己紹介を」
女子生徒は白のチョークで黒板に名前を書いた。
「私は二年A組の麻根路屋乙女です。今年、別の高校から編入してきました。昨日まで生徒会の役員をしておりましたが、訳あって今日クビになりました」
「クビ?!」
「ずいぶん急だな」
女子生徒、麻根路屋は静かに頷いた。
「生徒会の業務との兼ね合いもあると思って、一応会長に美術部への入部を報告したの。ところが、"曲がりなりにも生徒会の一員である生徒が、一切絵を描いていないくせに美術部を名乗っているような連中とつるんでいるのは、よろしくない。生徒会か美術部のどちらか選びなさい"と言われてね……即刻、脱会してきたわ」
「良かったのか? 辞めて」
成宮達は麻根路屋の身を案じ、顔を曇らせた。
「僕達だって廃部は嫌だけど、麻根路屋さんに迷惑はかけたくないよ」
「生徒会の方が、将来的に有利だしな」
しかし麻根路屋は「いいえ」と首を振った。その目には確固たる強い意志があった。
「私は美術部に残るわ。確かに、昨日までは"私でも誰かの力になれるなら"と、独善的な理由で入部を決めた。でも、会長に貴方達を侮辱された時、無性に腹が立ったの。昨日の貴方達は部を存続させようと、自分達なりに部員集めに奔走していた……美術部なのに絵を一切描かず、昼休みの延長のような活動をしているとはいえ、その努力は本物だわ。それを、生徒のことを考えるべき生徒会長が見下すなんて、あり得ない!」
麻根路屋は成宮達を睨むように眼光を鋭くさせ、ニッと不適に笑った。
「だから、私は決めたの。あの女に美術部を認めさせ、最終的には"私も美術部に入部させて下さい"と懇願させてやるってね……!」
「お、おぉ。君がそこまで美術部のことを考えてくれていたなんて、嬉しいな」
「漂う、強キャラ感……! これは期待大だね!」
「生徒会長なんざ、ブッ倒せ!」
麻根路屋から発せられる殺気に、成宮達は圧倒されながらも、頼もしく思う。
すると麻根路屋は殺気立ったまま、成宮達を睨みつけた。
「何よ、他人事みたいに。私はマネージャーであって、メインは貴方達なのよ?」
聞き慣れない単語に、三人の目が一斉に点になる。
「へ?」
「マネージャー?」
「美術部に?」
「そうよ」
麻根路屋は当然のように頷いた。
「昨日、言ったでしょう? 今の美術部のままじゃ、部員がいても廃部になりかねないって。だから、私が貴方達のマネージャーになって、美術部を部として存続させる手伝いをしようと思ったのよ。手始めに……」
麻根路屋はチョークで黒板に何やら書き込み、振り返る。
書いている間は麻根路屋の背中に隠れて見えなかった文字が成宮達の視界に入り、三人はアングリと口を開いた。
そこには美しい文字で
『夏の高校生絵画コンクールへの参加、および文化祭にて作品展示』
と書いてあった。
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