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夏編①『夏の太陽、檸檬色』
第四話「貴方こそが運命のヒト」⑴
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その男性は夕立から逃れるようにLAMPへ駆け込んできた。
傘を持っていなかったが、すぐに店に入ってきたおかげか、服は濡れていなかった。
「いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ」
店内は雨宿りをしに来た客で混雑していた。
由良は男性も雨宿りをしに来たのだとばかり思っていたが、男性は「いや、違うんです」と慌てて首を振った。
「僕、人を探していて……」
「人を?」
男性は頷いた。
「アイカワアイコって女性なんですけど、ご存知ありませんか? 僕の恋人で、この街に住んでいるはずなんです。携帯で連絡を取ろうとしたんですけど、繋がらなくて。髪はこげ茶色で、腰まで長さがあって、体型はスラッとしていて、口元にホクロがあるんですけど」
「さぁ……ちょっと分からないですね」
由良は申し訳なさそうに答えた。由良の知る限り、思い当たる人物はいなかった。
「……そうですか。もし見かけたら、僕が探しているとお伝え下さい。あ、僕の名前はコイケレンジと申します。では」
男性はガックリと肩を落とし、LAMPを出て行く。
由良とやり取りしていた間に雲は晴れ、天気雨になっていた。雨粒一粒一粒が夕日に照らされ、黄金色に輝いている。
男性は体が濡れるのを気にする余裕もなく、とぼとぼと去っていった。天気も相まって、その背中には哀愁が宿っていた。
「……せっかくなら、温かいコーヒーでも飲んでいけばいいのに」
由良は不満そうに男性を見送り、中断していた仕事に戻った。
翌日も夕立が降り、LAMPへ逃げ込むように客が駆け込んできた。今度は女だった。
腰まで伸びたこげ茶色の長い髪を手で整え、キョロキョロと店内を見回す。スラッとした体型の美人で、口元にはホクロがあった。
「いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ」
由良はなんとなく既視感を覚えながら、カウンターから女性に声をかけた。
女性は由良に気づくと「あ、違うんです」と慌てて否定した。
「私、人を探しているんです」
「……はぁ」
そこで由良は昨日来店した男性のことを思い出した。そういえば、この女性はあの男性が探していた「アイカワアイコ」と特徴が一致している。
確認のため、彼女が探しているという人物について尋ねることにした。
「ちなみに、どんな方なんですか?」
「コイケレンジという男性で、私の恋人なんです。ずっと連絡が取れなかったんですけど、最近友達が街で彼を見かけたと聞いて、探しているんです。髪は黒くて短くて、がっしりした体型で、真面目そうな人なんですけど」
由良は昨日の男性の外見を思い返し、彼だと確信した。
男性は女性が言った通り、耳が被らないほどの長さの黒髪で、がっしりした体型で、見るからに真面目そうな人だった。
「その人なら昨日、お店に来ましたよ。もしかしたら、またお越しになるかもしれません。このまま店内でお待ちになっては如何ですか?」
女性は「本当ですか?!」と目を輝かせた。
「まさか、彼も私を探していたなんて……! 是非、待たせて下さい!」
女性は通りに面した窓際の席を選び、新商品のひまわりケーキを美味しそうに食べながら彼を待った。
傘を持っていなかったが、すぐに店に入ってきたおかげか、服は濡れていなかった。
「いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ」
店内は雨宿りをしに来た客で混雑していた。
由良は男性も雨宿りをしに来たのだとばかり思っていたが、男性は「いや、違うんです」と慌てて首を振った。
「僕、人を探していて……」
「人を?」
男性は頷いた。
「アイカワアイコって女性なんですけど、ご存知ありませんか? 僕の恋人で、この街に住んでいるはずなんです。携帯で連絡を取ろうとしたんですけど、繋がらなくて。髪はこげ茶色で、腰まで長さがあって、体型はスラッとしていて、口元にホクロがあるんですけど」
「さぁ……ちょっと分からないですね」
由良は申し訳なさそうに答えた。由良の知る限り、思い当たる人物はいなかった。
「……そうですか。もし見かけたら、僕が探しているとお伝え下さい。あ、僕の名前はコイケレンジと申します。では」
男性はガックリと肩を落とし、LAMPを出て行く。
由良とやり取りしていた間に雲は晴れ、天気雨になっていた。雨粒一粒一粒が夕日に照らされ、黄金色に輝いている。
男性は体が濡れるのを気にする余裕もなく、とぼとぼと去っていった。天気も相まって、その背中には哀愁が宿っていた。
「……せっかくなら、温かいコーヒーでも飲んでいけばいいのに」
由良は不満そうに男性を見送り、中断していた仕事に戻った。
翌日も夕立が降り、LAMPへ逃げ込むように客が駆け込んできた。今度は女だった。
腰まで伸びたこげ茶色の長い髪を手で整え、キョロキョロと店内を見回す。スラッとした体型の美人で、口元にはホクロがあった。
「いらっしゃいませ。空いている席へどうぞ」
由良はなんとなく既視感を覚えながら、カウンターから女性に声をかけた。
女性は由良に気づくと「あ、違うんです」と慌てて否定した。
「私、人を探しているんです」
「……はぁ」
そこで由良は昨日来店した男性のことを思い出した。そういえば、この女性はあの男性が探していた「アイカワアイコ」と特徴が一致している。
確認のため、彼女が探しているという人物について尋ねることにした。
「ちなみに、どんな方なんですか?」
「コイケレンジという男性で、私の恋人なんです。ずっと連絡が取れなかったんですけど、最近友達が街で彼を見かけたと聞いて、探しているんです。髪は黒くて短くて、がっしりした体型で、真面目そうな人なんですけど」
由良は昨日の男性の外見を思い返し、彼だと確信した。
男性は女性が言った通り、耳が被らないほどの長さの黒髪で、がっしりした体型で、見るからに真面目そうな人だった。
「その人なら昨日、お店に来ましたよ。もしかしたら、またお越しになるかもしれません。このまま店内でお待ちになっては如何ですか?」
女性は「本当ですか?!」と目を輝かせた。
「まさか、彼も私を探していたなんて……! 是非、待たせて下さい!」
女性は通りに面した窓際の席を選び、新商品のひまわりケーキを美味しそうに食べながら彼を待った。
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