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夏編①『夏の太陽、檸檬色』
第三話「タカラモノの人形」⑷
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「そういえば日向子、今日の仕事はどうすんの? 途中で抜けてきたんでしょ?」
日向子は眉根を寄せ「んー……」と悩んだ末、答えた。
「休む。どうせ戻っても仕事にならないでしょうし。こう見えても、ずっと探してた人形が見つかった喜びと、自分が〈探し人〉になった衝撃で、テンションぶち上がってるから」
「それなら買い出し手伝ってよ。昔のアンタとその人形見てたら、新しいメニュー思いついたんだよね」
「へ? 昔の私?」
「そっ。結構可愛かったわよ」
由良は席を立ち、財布の入った鞄を手にLAMPの出口へ向かう。
日向子も慌てて人形を鞄に仕舞い、由良を追った。
「も、もしかして……私の〈探し人〉って、この人形と同じ格好してたの?!」
「まぁね。おかげで、すぐに人形のことを思い出せたわ。その人形、余程大事にしてたのね」
「うっ、恥ずかしいぃ……」
日向子は当時の自分の格好を思い返し、恥ずかしそうに赤面した。
その後、由良は日向子と連れ立って商店街へ繰り出し、新メニューの材料を揃えた。
LAMPに戻り、キッチンで手際良く完成させると、カウンター席で待っていた日向子の前に差し出した。
「どうぞ。味見してみて」
それは鮮やかなオレンジのショートケーキだった。生地はオレンジの果汁を練り込んだ黄色いスポンジで、間に真っ白な生クリームと酸味が強い生のオレンジが重ねてある。
スポンジの上にはチョコでコーティングした輪切りのオレンジと、それを囲うように、花びらの形にカットした生のオレンジが数枚並べられ、さながら大輪のひまわりが咲いているかのようだった。
「すごーい! ひまわりじゃん!」
日向子はすぐにひまわりだと気づき、歓声を上げる。試作品であるため、撮影は控えた。
上に乗っているオレンジごとケーキをフォークで切り取り、口へと運ぶ。
「どう?」
由良は日向子に期待の眼差しを向け、味の感想を尋ねる。
日向子はしばらくムグムグと口を動かし、ケーキを飲み込むと、笑顔で答えた。
「うん、すっぱい!」
「……改良の余地がありそうね」
「でも、見た目はすっごく綺麗! これで味も完璧だったら、絶対売れると思う! それに私、ひまわり大好きだし!」
「ふふっ。貴重なご意見、ありがとうございます」
後日、改良して売り出された「ひまわりケーキ」は、夏のLAMPの人気メニューとなった。
(夏編①『夏の太陽、檸檬色』第四話へ続く)
日向子は眉根を寄せ「んー……」と悩んだ末、答えた。
「休む。どうせ戻っても仕事にならないでしょうし。こう見えても、ずっと探してた人形が見つかった喜びと、自分が〈探し人〉になった衝撃で、テンションぶち上がってるから」
「それなら買い出し手伝ってよ。昔のアンタとその人形見てたら、新しいメニュー思いついたんだよね」
「へ? 昔の私?」
「そっ。結構可愛かったわよ」
由良は席を立ち、財布の入った鞄を手にLAMPの出口へ向かう。
日向子も慌てて人形を鞄に仕舞い、由良を追った。
「も、もしかして……私の〈探し人〉って、この人形と同じ格好してたの?!」
「まぁね。おかげで、すぐに人形のことを思い出せたわ。その人形、余程大事にしてたのね」
「うっ、恥ずかしいぃ……」
日向子は当時の自分の格好を思い返し、恥ずかしそうに赤面した。
その後、由良は日向子と連れ立って商店街へ繰り出し、新メニューの材料を揃えた。
LAMPに戻り、キッチンで手際良く完成させると、カウンター席で待っていた日向子の前に差し出した。
「どうぞ。味見してみて」
それは鮮やかなオレンジのショートケーキだった。生地はオレンジの果汁を練り込んだ黄色いスポンジで、間に真っ白な生クリームと酸味が強い生のオレンジが重ねてある。
スポンジの上にはチョコでコーティングした輪切りのオレンジと、それを囲うように、花びらの形にカットした生のオレンジが数枚並べられ、さながら大輪のひまわりが咲いているかのようだった。
「すごーい! ひまわりじゃん!」
日向子はすぐにひまわりだと気づき、歓声を上げる。試作品であるため、撮影は控えた。
上に乗っているオレンジごとケーキをフォークで切り取り、口へと運ぶ。
「どう?」
由良は日向子に期待の眼差しを向け、味の感想を尋ねる。
日向子はしばらくムグムグと口を動かし、ケーキを飲み込むと、笑顔で答えた。
「うん、すっぱい!」
「……改良の余地がありそうね」
「でも、見た目はすっごく綺麗! これで味も完璧だったら、絶対売れると思う! それに私、ひまわり大好きだし!」
「ふふっ。貴重なご意見、ありがとうございます」
後日、改良して売り出された「ひまわりケーキ」は、夏のLAMPの人気メニューとなった。
(夏編①『夏の太陽、檸檬色』第四話へ続く)
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