夫の初恋の君が家へ訪ねて来ました

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※キャサリーンのざまぁが物足りない方向けです。  

※キャサリーンが可哀想な事になるので、キャサリーンがどうなっても構わないという方だけ。

※今までのほのぼの完結でご満足の方は読まない事を推奨します。
















キャサリーン視点


私はペリルド侯爵家に生まれた。
幼い頃から美の女神と謳われ、私を見ると殆どの人がこの顔に見惚れてしまう。

自分の美しさには絶対の自信があった。

地位と美貌を兼ね備えた私は、アストマイオス殿下の婚約者に選ばれた。当然の事だ。私よりも優れた令嬢なんてこの国にはいない。

毎日お妃教育で、王宮に通う日々。
大変だけど、他の令嬢の羨望の眼差しを浴びるのは、気持ちが良かったし、顕示欲が満たされる。この立場は譲れない。


この私が他の令嬢に傅くなんて考えられなかった。


全てが私中心に回っていた。殿下ですら私の前では気を遣う。でもそれは当然の事だと、そう思っていた。

そんな日々を過ごしていたある日、王妃様に呼び出された。

「あなたは将来の王太子妃です。振る舞いには気をつけてくださいね。」

ある貴族の主宰した子供たちのお茶会で、伯爵家の三男を笑い者にしたことを王妃様に咎められたのだ。 

「ブッツ伯爵家のご子息が貴女にお茶会で笑い者にされてから、部屋から出れなくなったそうです。」

ブッツ伯爵家の三男は顔が吹き出物だらけで醜かった。
あの吹き出物を見ると虫酸が走る。
彼が視界に入るのが許せなかった。
皆が彼を嗤った。けれどそれのどこが悪いのだろう?あんなに醜いのだ。当然ではないか。



「お母様。今日王妃様に注意を受けましたの。」

「どうして?」

「ブッツ伯爵家の三男のブサイ様がお茶会でわたくしに話し掛けてきましたの。だからわたくし、『その吹き出物が移りそうなので、話しかけないでください。』って言いました。後、『貴方がいるとお茶が不味くなるから先に帰ってはどうですか?』とも言いましたわ。そうしたら他に参加していた子達が笑いましたの。私が笑ったのではありませんのに『伯爵家の三男を笑い者にした』と王妃様に咎められましたのよ。」

「まあ。そんな事があったのね。あの醜い顔は見るだけでもおぞましい。あの吹き出物が貴女に感染ったらと思うとぞっとするわ。貴女は殿下の婚約者。決して近づいてはなりません。」

お母様は私と同じで醜いものを嫌う。
その口調はきっぱりしていた。

「では、どうしたら良かったんですの?」

「貴女は皆から傅かれる存在ですもの。自分で直接言うのは感心しませんわ。貴女の害になりそうな人間は、周りの令嬢が排除するものです。貴女に話しかけるなんて不敬も、本来周り令嬢が躾るべきなのです。」

お母様にそう教えられた私は周囲をコントロールする事を覚えた。  


★★★


けれど、

「キャサリーンとの婚約を破棄する。」

私は学園の卒業パーティーで婚約を破棄された。

殿下の側近達の告発により、お父様は長年の不正が暴かれて投獄された。

私と母も平民となってしまった。

「俺が用意した屋敷に住んでくれ。それと、美しいキャサリーンが心配だ。護衛を付ける。決して娼婦にはならないでくれ。」 

アシュレッド様が私たちに援助を申し出た。
彼は私に否を言う事は無い。
私の美貌の虜になっている彼はいつも私の前ではへらへら笑っている。

私の純潔を守っても、彼に捧げるわけでも無いのに………。
つくづく間抜けな男。
内心では嘲笑されているのに気付かず、私にヘコヘコ頭を下げる。





彼は間抜けでフローラへの嫌がらせの指示にはいつも失敗ばかりしていて使えない男だ。

その地位にしか価値が無い。

けれど、今回は助かったと思う。
彼の援助で不自由なく暮らすことが出来た。公爵家には、お金はあるし、私の美貌を維持する為に使うのは彼も本望だろう。

『殿下と会う機会を作って!』

手紙でアシュレッド様に指示をだしても、失敗の返事ばかり。

そうだ!
アシュレッド様ならば、王宮への出入りは自由だ。彼にフローラの純潔を奪わせれば、フローラの王太子妃への道は閉ざされる。

………けれど、直接命令すると私が指示を出した事になってしまう。
全てが彼の責任となるように、自主的にフローラを襲うように仕向けなければならない。

明日はアシュレッド様がお金を渡しに来る。
その時に彼をその気にさせるよう、仕向けなければ。

「アシュレッド様。わたくし、やはりアストマイオス殿下を諦める事が出来ないのです。」

声を震わせ、目に涙を溜める。
そして、アシュレッド様の手を取り上目遣いでじっと彼の瞳を見つめた。
目が潤んだ私は女神のように美しいだろう。
私が彼に自分から触った事なんて今まで一回も無い。
私に手を握られてアシュレッド様は今、天にも昇るように嬉しい筈だ。 

「アシュレッド様は王宮に自由に入れるのでしょう?」

「ええ。入れますよ。」

「もし、…もし、…仮定の話ですけど、彼女に他の殿方との不貞があれば、大変な事ですわね。………。」

「………。不貞なんてなさそうですね。彼女は殿下に夢中ですよ。」

何も考えて無いかの如く、気の抜けたような表情でコテンと首を傾げた 。

「……もし、フローラ様が王宮内で他の殿方に襲われたら大変な醜聞ですわね。」

「王宮で襲うなんて、そんな人いないでしょうね。警備が厳しいのに。」

この鈍い男には何も伝わっていないようだ。

「アシュレッド様は王宮に行く事もあるのでしょう?フローラ様はアシュレッド様の関係をお望みかもしれませんわよ。」

「僕はフローラ様には興味がありませんね。」

そうだ。彼は私に恋していたんだった。
フローラを襲いたいとは思わないだろう。
いつも私の傍にいた彼が、他の女で欲情出来るわけがない。

「ごめんなさい。そうよね。」


………私をいくら好きでも、彼にとって私は高嶺の花だ。
手に届かない花を崇める彼はとても滑稽に見えた。


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