初恋の兄嫁を優先する私の旦那様へ。惨めな思いをあとどのくらい我慢したらいいですか。

梅雨の人

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ローズ

この薔薇を君に2

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「ありがとうございます。ウィリアム殿下。」

ウィリアムに礼を述べるローズは胸の高鳴りを抑えることが出来なかった。

婚約者のサミュエルに、このように優しくされたことのないローズは、この時初めて異性からの優しさに対して胸を高鳴らせたのだった。

「まあ、ウィリアム様。この見事な薔薇は残念ながらローズ様ではなく妻である私の方に似合うのではなくて?ねえ、そう思いません事?サミュエル様?」

「え?…いや…私にはちょっと…。ローズ嬢によく似合っていると思うが?」

「ああ、ローズ嬢によく似合っている。このピンクの薔薇は君の綺麗な紫の瞳に相なって、とてもはかなげで美しく輝いている。」

そうして、薔薇を飾ったローズの髪の毛を優しくなでたウィリアムは、大丈夫だ、本当によく似合っていると言って、優しく微笑んでくれた。

なぜかそのウィリアムの表情が切なくて喉がつまり、ローズは御礼の言葉が出せなかった。

ローズはこの薔薇にウィリアムの温かな優しさが込められているような気がして、一生大事にしようと心に決めた。

そしてそんな二人を、怒りを隠せずに睨みつけるブリアナと、なぜか苛立ちと焦燥感を表情に出していたサミュエルをローズに見せないように、ウィリアムはそっとローズに寄り添った。


この頃から、これまでローズとサミュエルとの婚約破棄を頑なに拒み続けていた国王は、次第に体調を崩していった。

年を重ねても麗しい見た目と逞しい体躯に、国内外の女性から憧れを抱かれ続けていたこの国王も、体調の悪化に伴い髪に白いものが増えていった。

ローズとサミュエルが21歳の時、婚約してから7年経った頃、ついに国王は王太子ウィリアムに王位を譲り王家の持つ領地で隠居することを決定した。

ローズとサミュエルは本来既に夫婦になっていたはずだったのだが、ローズの父であるハーゲンシュタイン公爵が二人の結婚をどうにか回避できないかと未だに奮闘していた。

しかし、結婚しても子供が出来ないウィリアム夫妻を考慮して、遂にローズとサミュエルの婚姻式が行われることになってしまった。
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