虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、コネ就職を求める

第一回職業解放前篇 その08

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 物知りな【大死導者】に、霊薬と引き換えで情報を貰っている。
 俺も愛用する[称号]ビルドは、昔の人らしき【大死導者】からすると驚くようだ。

「──早いな。霊薬が馴染むまで、時間が掛かると思ったのだが」

「質の良い品は、どのような物でも効果覿面なのでは?」

「そのような話では……いや、いい。早く効くことに支障は無いからな。それよりも、いくつか試させてもらうぞ」

「おや、さっそくですか……」

 何が起きたのか、とても簡単な話である。
 俺を研究資料として、【大死導者】が捕らえるべく手を動かしただけ。

 異空間であるこの領域は、【大死導者】が支配している。
 つまり、この場に限りありとあらゆる事象において彼が優先されるのだ。

 地面から、天から、四方八方至る所から現れた様々な種類のアンデッドたち。
 物理的に俺の体を掴む者や、魔法を唱えて拘束する者などたくさんだ。

「驚かぬか? そうか、お前は【救星者】であったな。領域の書き換えでもするか?」

「いえいえ、そのようなことはしませんよ。そうでなくとも、抗う術を私は知っておりますので──“星転飛流”」

 足元から水が生まれる。
 光り輝くその水にアンデッドが触れると、悶え苦しみ消え去っていく。

 ありとあらゆる水を生み出す、その効果で作り上げられた聖水。
 通常の品よりも高い性能によって、どんなアンデッドでも浄化していく。

「ふむ……手を加えれば──こうなるか」

「直接的な干渉による魂の拘束の強化、ですか……厄介ですね。では、こちらも少しばかり質を高めましょうか」

「っ……まだ上があるのか」

 聖水、その強化版である星水。
 あらゆる水に通じることができる、万能エネルギーの水バージョン。

 その中には聖水としての性質も含まれており、先ほどまでと同じように浄化が始まる。
 向こうも向こうで手を更に加えているようだが、それでも数は減るばかり。

「なぜだ、ここは我の領域だぞ!」

「先ほどご自身で語られた通りですよ。私は【救星者】、星の威を借りる者として相応しい力を見せなければなりませんので」

 レベルの存在しない【救星者】。
 どうやって強くなるのか──あくまで職業の解放はおまけであり、本来のやり方こそが星と共に処理される強化。

 星が成長すればするほど、それに見合っただけの補正を受けることができる。
 ……星の成長はそれだけ、外敵を招きうる要因になるということだからな。

 星水を生み出す『星水の足袋』は、そんなアイスプルの素材を基に作られている。
 俺が【救星者】として装備して使うと、連動して性能がどこまでも上がる仕様。

 ──うん、控えめに言わずともチートだ。

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