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DIY、コネ就職を求める
第一回職業解放前篇 その09
しおりを挟むアンデッドで俺を捕まえようとしてきたので、聖水の上位版である星水を散布して対抗してみた。
依然、【大死導者】の領域内なので優位には立てない状況。
上書きはしないと宣言してしまったので、縛りもあってまだまだ油断はできない。
「……おや、アンデッドは引かせますか」
「抜かせ。このまま意味も無く消耗する必要は無かろう──束ねても無駄じゃろう、ゆえにこうする」
アンデッドたちが吸い込まれるように、一つの場所に集まっていく。
それは【大死導者】の持つ本の中、やがてすべてのアンデッドを回収して本を閉じた。
「大変興味深い、その本はいったい?」
「禁書じゃよ。名を聞きたいか?」
「……いえ、遠慮しておきましょう。わざわざ禁書とのご説明、感謝します」
おそらく前提として、禁書であることを知られるのが条件なのだろう。
そのうえで、名を知ったヤツが発狂……というSAN値チェックがありそうだし。
意味が無いからかこれ以上は発言せず、再び本を開いた【大死導者】。
パラパラと高速で捲られる本が、ある場所でピタリと止まる──触れてもいないのに。
「ふむ、お前にはこれが効くか? 試してみよう──『■■■■』」
認識できない、したくない……そう思い込ませるナニカの言葉を唱えた【大死導者】。
すると本のページが千切れ、そのまま体の中に入り込んでいく。
そして、その姿にも変化が起きる。
半透明なのはそのままだし、外套の中身は見えないし装備品も変わらない……だが体格が明らかに縮み、立ち振る舞いが変わった。
堂々としたものから少々おどおどした感じに、かつ周囲をキョロキョロと見渡す。
まるで、ここに居るのが初めてといった様子である。
「……あ、あの、ごめんなさい!」
その声を聴いた瞬間、【大死導者】の身に何が起きたのか理解した。
取り込まれたページ、そして明らかに少女のモノと思われる声色の変化。
「や、やらないといけないから……」
「……降霊術、あるいは交霊術。いえ、禁書がそんな生易しいものなはずがありません。つまりこれは──」
「──ちゃ、“着装”!」
少女の宣言と共に展開されるのは、今の世界ではほぼありえない機械仕掛けの装甲。
浮かんでいた魔本が姿を変えたそれが、外套の上から少女に取りついていった。
同時に、彼女の雰囲気が変わる。
これまでの臆病な感じが一転、無機質な機械を相手にするような感覚が襲う。
「貴女は、いったい……」
「わたしに名はありません。ですが、こう名乗るよう言われてきました──【神風兵】」
「っ……【神風兵】!」
「契約に基づき、あなたを殺します。さぁ、もう一度羽ばたこう──“始動”!」
その名はもっとも多くの原人が就き、もっとも多くの死者が生まれた極級職業──ただし、それは就職した当人の数として。
死んでも殺す、死ななければもっと殺す。
そんな殺意を体現したような職業を持つ少女が、飛翔した機械に乗って俺を殺すと宣言してきた。
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