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DIY、遥かな旅路へ
魔法の鞘 後篇
しおりを挟むアイプスル
さっそくだが、『騎士王』の聖剣を収める魔法の鞘を創ってみることにした。
簡単にはできないだろうが、それでも可能な限り再現してみようと思う。
「──:DIY:スタート」
《:DIY:が起動されました
使用者『ツクル』の指定能力値──概念崩壊……成功しました
アイテムの作成成功後、または条件無視によって解除されます》
いつもの現象、ありふれた出来事。
ありえない力、でたらめな在り方。
膨大なエネルギーが俺という存在を書き換えると、仮初の無限がもたらされる。
それは神に与えられし万物創造の概念。
崩壊した人としての限界を、万象へ届き得るものまで昇華させた新たな理。
「……さて、始めますか」
ドローンたちによって、俺の居る場所は世界から隔離された結界となっている。
何をしても、とりあえず耐えられるようになっている──星の剣を超える、不老不死をも可能にする鞘のレプリカを生みだそう。
◆ □ ◆ □ ◆
鞘は鉱石で創りだす。
生みだすのは『星鉱石』、それを用意できるだけ用意して──熔かしていく。
ショウの剣を作る頃は足りなかった技術を補った今ならば、あのときとは異なる方法で加工を行うことができる。
強引に燃やすのではなく──形を歪めることで鞘にしていく。
多重術式で錬金陣を描き、大量の鉱石を鞘の形に変形させる。
かつて見た星の中枢、その幻想的な輝きを失わせないように纏め上げた。
そして、そこに鞘が誕生する。
英霊が握り、少年に埋め込まれたような物ではない──『騎士王』が振るうに値する、そして次代の者が振るう星の剣を収める器。
その名は──
◆ □ ◆ □ ◆
始まりの街
「ほ、本当に貰ってもよいのだろうか?」
「いや、あくまで本物の代わりだからな。そこまで便利な機能があるわけでもないし、そこまで頼れる品でもない。あくまで健康維持のアイテムだと思ってくれよ」
「そ、そうか……では」
加工の結果、白銀色に染まった鞘。
刻印術式を組み込んだ結果、鞘の形状を変えることで発揮する効果を自在に切り替えられるようにしておいた。
万能の権能を持つ『騎士王』ならば、その代に合わせたオリジナルの鞘を組み上げることができる。
手札が多ければ多いほど、万能という権能は異端さを発揮していく。
「……うむ、素晴らしい出来だ」
「感謝しろよ、これを創るのにいったいどれだけの時間を費やしたんだか」
その日の活動はほとんど鞘創りに使われてしまった──本当、元が取れなきゃ損でしかないだろうさ。
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