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◆第一章
21.「笑い上戸?」
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「桜野山? 本当にその名前?」
「ああ。どこにある?」
「え、あの……オレの大学の裏にある山だと思うんだけど……」
「ふうん……」
「そんな近いとこでいいの?」
「別に遠いとこって決まりがある訳じゃないからな……」
「なんだ、よかった、オレ、全国連れまわされるのかと思ってた」
ああ、良かった。
近いじゃん、楽勝じゃん。
……思ったけど。
「……あの山のどこにそんな水晶があるの?」
「さあ。行けば分かるって。そこに城ってあるか?」
「……あー、あるけど……。正確には、お城の跡地って感じで……昔の城を再現して建て替えて、ちょっと資料館みたいになってるよ」
「ふうん……そこらへんみたいだけど」
「行けば分かるの?」
「感じるって言ってた」
「……ふうん……? よく分かんないけど、まあいいや。行ってみる?」
「ああ」
「ちょっと片付けてくるから待ってて」
食器を集めて流しに運んで洗ってると、琥珀が近づいてきた。
「これ」
「ん?」
コーヒーのマグカップをオレに差し出しながら、琥珀はオレを見た。
「もうちょっと苦み減らせないか? それなら、うまいような気がする」
「……分かった。苦くないのね」
一応飲み終えてるカップを受けとって、頷いた。
……ぷぷ。
さっき、へにゃっていう耳になってたもんね。ぷぷぷ。可愛かったな。
言わずに、決して声に出して笑わないようにこらえながら、
食器を洗い終えた。
あんな近くの山で一個目が終わる位なら、五個なんてすぐかもしれない。
「そういえばさぁ、琥珀ってお金持ってるの?」
「オレ、王子だぞ。金ないと思うか?」
「……人間界のお金だよ?」
「いや、持ってない」
「……誰が出すの?」
「お前?」
なんだか、あまりに当然のように言われて、ちーん、という鐘が頭の上で鳴った気がする。
なんなんだろうか、この人……。
……お金も、ごはんも、寝床も、あと、とんでもない、精気も、全部オレから取ろうというの……。
うう。すごい、なんかこの…… なんなんだろうこの……。
……図々しい感じ……?
これはあれなのかな、図々しいとかじゃなくて、王子様だから、もうそうしてもらうのが当たり前、みたいな感じなのかな? 思いながらも、もはや、これ以上争っても何も生まれない気がして、オレは、早々に諦めた。
「……もういいけど……もう。オレがお金持ってない人だったらどうしたんだよ?」
「まあ、それはそれなりに……?」
「それなりにってなに? どうそれなりに、するの? はっ。身体機能を生かして泥棒とか……??」
思いつくまま言っていくと。
目の前でオレを見ていた琥珀が、クッと笑い出した。
「……は?」
オレから顔をそらして、クックッと笑い続けている。
「何で笑ってるの??」
ムッとして、言うと。
「……つか、嘘だよ。一応、ここの金持たされてる。渡しとこうか?」
「え……持ってるの?」
「持ってる」
がっくりと、力が抜ける。
「もー、なんでさらっと騙すんだよー」
言うと、琥珀はまた笑い出す。
「お前、オレの言うこと、なんでも信じるから。面白くてな」
「……ひどくないですか?」
「持ってないって言ったら、なんて言うのかと思って」
まだしつこく笑いながら、琥珀はオレを見下ろす。
「ほんと。面白いな。こんなにだましやすい奴居る? 人間て皆こうなのか?」
「……っ……」
「いやでも、お前、ほんと人良さそうなオーラにあふれてたもんなあ」
まだしつこく笑いながら、そんなことを言う。
……顔に似合わず、笑い上戸なのかな。もう、笑いすぎですけど。
「お前のオーラの色。ほんと綺麗だったから。きっと、お前は特別だな」
「……つか……褒められてるのか、けなされてるのか、分からない……」
そう言うと、ふ、と笑って、さあどうだろうなー?と肩をすくめてる。
むむむ。
「ああ。どこにある?」
「え、あの……オレの大学の裏にある山だと思うんだけど……」
「ふうん……」
「そんな近いとこでいいの?」
「別に遠いとこって決まりがある訳じゃないからな……」
「なんだ、よかった、オレ、全国連れまわされるのかと思ってた」
ああ、良かった。
近いじゃん、楽勝じゃん。
……思ったけど。
「……あの山のどこにそんな水晶があるの?」
「さあ。行けば分かるって。そこに城ってあるか?」
「……あー、あるけど……。正確には、お城の跡地って感じで……昔の城を再現して建て替えて、ちょっと資料館みたいになってるよ」
「ふうん……そこらへんみたいだけど」
「行けば分かるの?」
「感じるって言ってた」
「……ふうん……? よく分かんないけど、まあいいや。行ってみる?」
「ああ」
「ちょっと片付けてくるから待ってて」
食器を集めて流しに運んで洗ってると、琥珀が近づいてきた。
「これ」
「ん?」
コーヒーのマグカップをオレに差し出しながら、琥珀はオレを見た。
「もうちょっと苦み減らせないか? それなら、うまいような気がする」
「……分かった。苦くないのね」
一応飲み終えてるカップを受けとって、頷いた。
……ぷぷ。
さっき、へにゃっていう耳になってたもんね。ぷぷぷ。可愛かったな。
言わずに、決して声に出して笑わないようにこらえながら、
食器を洗い終えた。
あんな近くの山で一個目が終わる位なら、五個なんてすぐかもしれない。
「そういえばさぁ、琥珀ってお金持ってるの?」
「オレ、王子だぞ。金ないと思うか?」
「……人間界のお金だよ?」
「いや、持ってない」
「……誰が出すの?」
「お前?」
なんだか、あまりに当然のように言われて、ちーん、という鐘が頭の上で鳴った気がする。
なんなんだろうか、この人……。
……お金も、ごはんも、寝床も、あと、とんでもない、精気も、全部オレから取ろうというの……。
うう。すごい、なんかこの…… なんなんだろうこの……。
……図々しい感じ……?
これはあれなのかな、図々しいとかじゃなくて、王子様だから、もうそうしてもらうのが当たり前、みたいな感じなのかな? 思いながらも、もはや、これ以上争っても何も生まれない気がして、オレは、早々に諦めた。
「……もういいけど……もう。オレがお金持ってない人だったらどうしたんだよ?」
「まあ、それはそれなりに……?」
「それなりにってなに? どうそれなりに、するの? はっ。身体機能を生かして泥棒とか……??」
思いつくまま言っていくと。
目の前でオレを見ていた琥珀が、クッと笑い出した。
「……は?」
オレから顔をそらして、クックッと笑い続けている。
「何で笑ってるの??」
ムッとして、言うと。
「……つか、嘘だよ。一応、ここの金持たされてる。渡しとこうか?」
「え……持ってるの?」
「持ってる」
がっくりと、力が抜ける。
「もー、なんでさらっと騙すんだよー」
言うと、琥珀はまた笑い出す。
「お前、オレの言うこと、なんでも信じるから。面白くてな」
「……ひどくないですか?」
「持ってないって言ったら、なんて言うのかと思って」
まだしつこく笑いながら、琥珀はオレを見下ろす。
「ほんと。面白いな。こんなにだましやすい奴居る? 人間て皆こうなのか?」
「……っ……」
「いやでも、お前、ほんと人良さそうなオーラにあふれてたもんなあ」
まだしつこく笑いながら、そんなことを言う。
……顔に似合わず、笑い上戸なのかな。もう、笑いすぎですけど。
「お前のオーラの色。ほんと綺麗だったから。きっと、お前は特別だな」
「……つか……褒められてるのか、けなされてるのか、分からない……」
そう言うと、ふ、と笑って、さあどうだろうなー?と肩をすくめてる。
むむむ。
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