オオカミ王子は エサのうさぎが 可愛くて しょうがないらしい

◆第一章

20.「付き合うことに」

　
　すっごくすっごく考えたのだけれど。

　……結局ついていかなくても琥珀はここに居座るのだろうし。
　そうなると、結局そういうことにはなってしまいそうで。

　昨日嫌だったかと言われると、そこまでじゃなくて。
　エサ呼ばわりはムカつくけど、もはや獣人だからという緩い見方ができるなら。
　諸々緩く考えられさえ、するのなら。
　
　……王位の即位式、見たい……。

「絶対、そっちの国、連れてってくれる？」
「ああ。約束する」

　むむむむむ。色んな葛藤があったけれど。

「……分かった。見つかるまで付き合う。ちょうど今日から夏休みだから、好きなだけ付き合えるし」

　そう言うと、琥珀は「よろしくな」と何だかふてぶてしく笑ってるけど。

「ただ一か月半くらいで夏休み終わるからね、それが終わったら、授業始まるからそんなに付き合えないから」
「分かった。そんなにはかからないだろうし」

　そのセリフに、うん、と頷いていると、琥珀はふ、と笑った。

「お前って……よく生きてこれたな？」
「は？？」
「騙されたりしてこなかった？」
「……どういう意味」
「そういう意味」
　苦笑いで言われて、やな感じ、とふくれながらも。

「ほんとにヤバそうなのは、なんかヤバいって警報が鳴るっていうか……」
「へぇ。勘が働く？」
「……良く分かんないけど」

「……ちなみに、オレとのことは、ヤバいって警報鳴ってないのか？」

　ニヤニヤ笑いながら聞かれると。
　そう言われてみると、結構、琥珀って相当ヤバいんじゃないかとも思うのだけれど。

「うん。多分……」
「へえ。……あてになる？　その警報」

「……さあ……？」

　そう言われると、心配になってきた。

「まあ鳴ってないならいいか。全部見つけられたら、ちゃんと連れてくからな。約束する」
「……うん」

　……じゃあ、まあ、いっか。
　と、思う程に、楽しみかもしれない……。

「そういえば、千翠は恋人とか好きな相手とか、居ないのか？」
「え。今更？」

　今更の質問にびっくりして聞き返すと、琥珀は、ぷ、と吹き出して、笑い続けてる。

「だよな、今更だな――――……キスも初めてとか言ってたもんな。とりあえず恋人は居ないか」
「……悪かったな」

「悪くないって。恋人居て拒否されると、ほんと、精気の質が下がるから」
「なんなんだよ、その質ってさぁ……。もー……」

　精気の質とか。響きがやらしくて嫌なんだけど。

「そのまんま。素直に気持ちいいなら、オレに素直に入ってくるし」
「――――……何で、もっと、取りやすいものからそういうの、取らないの？」
「んなこと言われたって、しょうがなくねえ？　獣人同士だと、もっと、お互いの精気になるから、なんなら食料がなくても、しばらく生きていられるしな」
「えっ！　そうなの？」

　獣人同士って……食糧難とか、無いの？
　ああいうことしてたら、ずっと生きていけるの？

「ちょっとお前、勘違いしてる気がする。さすがにそれだけで生きられるかって言うとやったことないから分からないからな？……ただ、魔力は保てるから、割となんでもできる」
「……そうなんだ」

　絶対獣人の方が、生き抜く力強そう。
　ていうか、体だけだって強そうだし。

「だから、番う相手は重要だけどな」
「そうなんだね。確かに……」

　そこで、ふ、と気づく。

「琥珀にそういう相手が居るなら、一緒に来れば良かったんじゃないの？　それなら、別にわざわざ人間の中で誰か探さなくてもいいし」
「こっちに居る間に、誰かを見つけて、人間と触れ合えって言われた」

「術師の人に？」
「そう」
「……そうなんだ……？」

　ふうん……？　何だかよく分からないけど。
　まあ、違う世界の国の人の言うことだし、全部理解はできないに違いない。

　
「……じゃあさ。最初は、どこを探せばいいの？」

　どんだけ大変なところ、探すんだろう……。
　そう思いながら聞いたオレに、琥珀が言った場所の名前は、何でだか意外すぎるほど、近いところで。


「え、ほんとにそこ？？」


　何度も確認してしまった。












◇　◇　◇　◇

(おしらせ)
◇　◇　◇　◇

次から出てくる場所名などは、本当にはないものにします。
それっぽい山とか川の名前とか。
検索して、ひっかからないものを使います(^^♪

それから、少し前から、サブタイトルに日本語名つけてるのですが、
時間のある時に、それ以前のもつけていきますので…♡