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◆第一章
19.「交換条件」
しおりを挟むオレ的に楽しい発見をして、なんだかとっても楽しい食事を終えたところで、オレは琥珀に聞いた。
「それで、実際何をするの?」
「術師に言われたものを探して集めて帰る」
「それって?」
「集めるものは、水晶だ」
「水晶……」
「色々なところに散らばってる。大体の場所を提示されてるから探して集める」
「へー……」
なんだろう、それ。誰かが水晶を置いてるってこと?
術師てこと?
なんか昔やった自然教室とかのオリエンテーションみたいな……?
いまいち分からないけれど、なんとなくそれで納得して、オレは頷いた。
「五つ集めて持ち帰る」
「ふうん?……大変だねぇ……」
よくわかんないけど。
「――――……お前、他人事だと思ってるだろ」
「?」
だって他人事だし。そりゃそうだけど……?
「すぐには見つからないようなところにあるらしいから、色々調べたり探さないといけない」
「例えば?」
「山の頂上とか。滝の裏側とか? 父上はそんなようなことも言ってたな」
「……え、どうやっていくの、そこ??」
「まあ、オレ、少しは飛べる」
「――――……へー……」
「……とにかく獣人と人間の国は、つながっていて結構密接なんだ。空間を開けてつなげることができるのはわずかな仲間だけだが、王になるからには、この国をよく知っておく必要もあるらしい」
「ふむふむ……」
「だから五つ探す間に、色んな所を回って、色んな所を知って、その上で、王になれってことだから……別に誰かの邪魔が入るとかもないし。そんなにきつい試練ではない」
「そっかぁ……。じゃあ、頑張ってきてね? ……てことは。夜はこの家に帰ってくるってこと?」
住まいと食事、提供しろって言ってたもんね……。
そう聞いたオレに、琥珀は、ちらっと視線を投げかけて、ため息とともに。
「――――……お前も一緒に行くんだけど」
そう言った。
「え?」
一瞬、何を言われたら、分からない。
「オレのエサが一緒に行かないで、どーすんだ?」
「エサ……?」
「例えば山登りとかで魔法を使ったら、魔力が足りなくなる」
「もう山の中ならオオカミの姿でいいじゃん……それなら魔力減らないんでしょ?」
「あのなあ、オレにとって、オオカミの姿は、変身後、なんだよ」
「……」
「本来の姿は、獣人の世界での獣人の姿。それ以外は、変身。分かる?」
「――――……え、オレも一緒に行くの? それで、昨日のみたいのに、付き合うってこと?」
「あたり」
「う……嘘でしょ?? もういっぱい、つきあったじゃん!」
焦って答えると。
「あれは昨日と今朝の分だろ」
「……え、待って? どれくらい、必要……」
「まあ。最悪減らしても、毎晩とか? まあ朝昼は、普通の食事でも耐える」
「耐えられるなら、全食それにしたらいいじゃん!」
「それをしたら、人型ではいられない」
「……っ」
「あと魔力もなくなるから、不便だ」
「――――……っえ、待って、オレ、まさかずっと水晶が見つかるまで、毎晩あれに……?」
恐る恐る確認すると、琥珀はにやりと笑った。
「もうあれだけしたら、覚悟できたろ? 諦めろ」
「……っえ、マジ、無理無理……」
「無理じゃねえよ。お前はオレのエサだろ?」
「いやいやいや……」
プルプル首を振り続けていると、琥珀は、ため息をついた。
「じゃあ、交換条件を出そうか?」
「――――……一応、聞くだけ聞くけど、何……?」
しぶしぶ、そう質問を返すと。
「無事に見つかってオレが王になる時には」
「…………」
「獣人の国に招待してやる」
「――――……え。」
「行ってみたいんだろ? もちろん、向こうに居る間の安全は、オレが保証してやる」
「――――……」
「人間がオレたちの国に来れるなんて、すげえ貴重だぞ」
「……っ……」
「即位式。見たくないか? オレの大切な客人という立場で、最前列で」
「――――……っっ」
え、見たい。
……すげー見たい。
どうしよう。
興味が抑えられない。
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