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◆第一章
22.「早く見つけよう!」
しおりを挟むまだしつこく笑いながら、琥珀はオレを見下ろす。
「金、渡しとこうか?」
「……もういいよ、別に。そんなにお金かかんなそうだし。すごいかかるもの買うならもらう。……あれ? そういえば、琥珀って服は持ってるの? 昨日のリュックには、そんなに服入ってなかったよね??」
「今着てるこれだけ。買えばいいかと思って来た」
「……分かった、じゃあ大学の駅に服売ってる店結構あるから、買ってから、山行く?」
「そうだな」
なんかよく分からないけど、また少し笑いながら頷いてる琥珀を見ていると、またムッとしてくる。
なんで、こうさらっとオレを騙して楽しそうなの。
むかつくなぁもう。
あれ、そういえば……なんか、オオカミ少年ってお話あったよなあ。
オオカミって嘘つきなのか???
どんな話だっけ。
えーと。
オオカミが来るぞーって嘘つきつづけて、村人をだまして面白がってたら、ある日ほんとにオオカミが来た時には、助けてもらえなかったんだっけ。……羊がたべられちゃったんだっけ??
……って、ああ、あれは、別にオオカミが嘘つきってわけじゃ無いのか。
……ああもう、考えてることが意味が分からなくなってきた。
「……ねー、琥珀」
「ん?」
「ほんとに、ちゃんと連れてってくれる?」
「即位式?」
「うん」
「連れてくよ」
「それは、騙してない?」
そう聞くと、琥珀は、ぷ、と笑って。
「騙してると思うか?」
クスクス笑いながら見つめられると。
「……もう、どっちか分かんないし」
ほんとにもう……と怒ってると、琥珀はまた、可笑しそうに笑いだす。
「連れてくって。それはほんと」
「絶対だかんね?」
至近距離の琥珀を見上げると。
「分かったって」
クスクス笑いながら、琥珀は、なぜか、突然。
オレの頭を撫でた。
「え」
なんかあやされてるみたいな。
よしよし、みたいな感じで。
「……っ なんなの、恥ずかしいから、やめてよ」
オレが何だか恥ずかしくなって、そう言うと、琥珀も「ああ悪い。なんか自然と……」と、すこし驚いたみたいな顔で、自分の手を見てる。
「自然と子供みたいに撫でないでよ……」
本当に、意味分かんない。
ぷんぷんしていると、琥珀はまた笑って、オレを見つめる。
「とりあえず、出発してみるか」
「……うん。いーよ」
よーし。
もうこうなったら、めっちゃくちゃ協力して、なんなら五日間で全部見つけてやる位の勢いで頑張ってやるー!
でもって早く、自分の国に帰ってもらって、でもって、即位式の時には、呼んでもらうんだ!!
頑張れオレ!
「あ、琥珀、絶対耳しまってね?」
「分かってるっつーの」
ふ、と笑って、琥珀が頷いた。
こうして。
琥珀とオレが出会って、とんでもない一夜を過ごしてから。
水晶探しが始まることになった。
そういえばもうすぐオレ。誕生日だし。
それまでには絶対探して解放してもらおう。
早く終わらせて、さっさと帰ってもらうんだ。
精気取られるとかも、あれヤバいから、最小限の回数で済ませてもらおう。
でもって、琥珀と別れられたら、
夏休みは友達と遊ぼう。うんうん、そうしよう。
オレは心に誓った。
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