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第2章

「結界ごと」

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「ソラは、どれ作った?」
「それそれ、野菜のサラダ。あとそっちのお肉も焼いた、あと、スープ……」

 膝の上のミウに、もぐもぐごはんを食べさせながら、ルカの質問に答える。

「ん」

 ふ、と笑いながらルカが食べ始める。


「ん、うまい」
「ほんと? ありがと」

 食べて笑ってくれると、やっぱり嬉しい。

「イチャついてねーで、オレのも食え」

 アランが呆れたように笑いながら言うと、ルカが「言われなくても食うから」と返してて、周りの皆が笑ってる。

 ……イチャついては、ないけどね。
 つか、恥ずかしい事わないでよ。アランはいっつもそうなんだから。

 オレは反応はせずに、ミウにモグモグ食べさせつつ。
 作ったサラダを食べてみた。


「あ、美味しいじゃん」

 思わずそう言うと、ルカが隣でクッと笑う。

「マズイと思って作ってたのか?」
「そうじゃないけど」

 謎の葉っぱだったから。さっき何もつけないで食べたら苦かったし。

「苦いのが意外となくなってたから」
「ああ、それさっき、しばらく塩水に付けたろ?」

 アランがオレにそう言いながら、サラダを口にする。

「うまいじゃん」
「うんうん」

 えへへ。
 アランに言われて喜んで、ふと気づくと膝のミウも同じように笑ってる。

「ミウとソラってさ」

 正面に座ってたリアが、じーっとこちらを眺めながら笑う。

「兄弟みたいね」

 ……兄弟……?
 ちょっと複雑な顔をしてると、皆が周りで可笑しそうに笑う。

「どっちが上だろうな?」
「オレ――――……? じゃないのかな? ミウ長生きなんだっけ?」

 ルカの言葉に即答しようとしたけど、途中で勢いを失ったまま、ミウと見つめあっていると。


「みゃ」

 めちゃくちゃニコニコ笑われて。 
 なんかもうどうでもよくなって、ナデナデしまくってしまう。


「可愛いよ~」

 むぎゅ、と抱き締めてると、ルカがちょっとこっちをちら見して。


「……寝る時は、ミウはリアんとこな」

 その発言に、オレも含めて皆は、は?と一気に固まって。
 あーはいはい、と誰もはっきり言わず、ただ、おかしそうに笑っている。

 
 何なんだ。もう。 恥ずかしいな!!
 今言わなくたって、良いじゃん、大体皆、そうなるだろうってバレてるし!
 もう!!

 思った瞬間、だった。


 ガタン!と船が揺れて、スープが零れた。


「わ……っ」

 そのままがたがた揺れて。
 ふっと気づいた時には、ミウごと、ルカの腕の中に居た。


「ルカ……」
「ちゃんと捕まってろよ。行ってくるから。アラン、こいつ頼む」

「了解」

 
 ルカの手から、アランの手に、渡される。
 いつも、アランに、触んなって言うのに。
 

「ソラ、捕まってな。揺れるかも」
「……オレは、ここに居た方が、いい?」
「うん。多分。オレら居ても、戦えないから」


 魔物の声と。
 ルカ達の声と。
 上からずっと聞こえてる。

 オレは、ミウを抱き締めて、とりあえず転がらないように、踏ん張る。
 アランは側に居てくれるけど。

 魔物が見えても怖いけど、何も見えないって、心配で、ドキドキする。


「これって、その、探してる奴なの?」
「あーどうだろ。――――……ちょっと待ってて。大丈夫? ソラ」

「うん、大丈夫」


 アランが離れて、階段を上って行く。
 そろそろ上に着くかなという辺りで、すごい、叫び声がした。

 あ。倒した、のかな。
 ひー、怖いー……。声だけで怖すぎるー。

 ……ていうか、オレ、さっき、こんなんで寝てたの?
 相当ヤバいな……。


 ドキドキしながら、ミウを抱き締めたまま、階段を上っていくと。
 もう静か。オレが顔を出すと、皆がオレを振り返った。


「ソラ。大丈夫か?」

 ルカがオレを見て、そう言う。

「……おかしくない? それ、オレのセリフ……」
「お前、転がってどっかぶつけてそうだから」

 ははっと笑って、ルカがオレの隣に来る。

「ぶつけてねえ?」
「ぶつけてません……」

「ん」

 クスクス笑って、ルカがオレを見下ろす。


「……倒したの?」
「倒した――――……っつか。なあ、あれ、さっきも倒したよな?」

 ルカが言うと、皆が頷く。


「……まさかと思うけど、波を出してる魔物って、あれがものすごい数居るとかじゃねえよな?」
「――――……」

 皆、嫌そうに口を閉ざしている。


「強いの??」
「――――……なんつーか……結界張ってて剣がきかねえし、魔法もなかなかきかねえし……」
「どうやって倒したの?」

「……こないだやったろ、お前を掴んで飛んだ魔物。結界ごとぶったぎったやつ」
「あ。うん」

「――――……あれやるしかねえな。それか、魔法で少しずつ……か」

「結界ごとっていうのは、あんまり出来ないの?」
「……そんな多用できねーな。すげえ使うから。力」

「そう、なんだ……」


 よく分からないオレでも、なんだか、うーん、と考えてしまう。
 皆も、なんかちょっと困った顔をしている。


 そっか、結界ごとっていうのは、ルカしかできないんだろうなぁ……。
 それは大変かも……。


「まあ、考えてもしょうがねえから、戻って飯くおうぜ」

 何だか重い空気の中。ルカがケロッとしてそういうから、皆は、ふー、と息を吐きながら、頷いた。


 わー、そうだ、ご飯、なんか色々零れちゃってたかも。
 大丈夫かな。

 ルカ達の倒さなきゃいけない魔物も心配だったけど。
 とりあえずの心配は、ご飯たち。


 一足先に階段を下りて、キッチンに戻った。






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