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第2章
「皆と」
しおりを挟む「なんかソラ、ちょっと久しぶりな感じ」
キースがオレに笑いかける。
ちょっと離れてただけなのに、オレもそう思ってた。
キースの言葉に反応して笑ってると、ゴウも、オレに顔を寄せてきて。
「うまかったぞ、差し入れ。ありがとな」
頭、ぐしゃぐしゃに撫でられる。
と。例によって例のごとく。ルカがゴウの手からオレを奪い返して、自分の手元に戻しながら。
「ほんとこりねーな、触んなって言ってんだよ」
呆れたような口調でルカが言う。
可笑しそうに皆が笑うのもいつも通り。
「――――……皆も、ソラを受け入れてるみたいですね」
ただ1人。多分、様子見でオレを見てるレジーが、オレ達のやり取りを見て、なるほど、と言う顔。
「ルカ、レジーに話したのか、ソラの事」
ゴウが苦笑い。ルカが頷くと。
「急に宙から現れたとか、見てなきゃなかなか信じないよな?」
ゴウがレジーにそう聞いた。
「そうですね――――……でもそれよりも」
レジーが、顎に手をかけて、考え深げに、そこで話を止めるので、皆がレジーを見てしばらく無言。
「王子が、べた惚れのようなのが、謎で」
数秒静まり返った後、皆がどっと笑う。
ルカは、「分かったんなら良いけど」とか言ってるだけだし。
オレは、なんだか、すごく恥ずかしくて、黙ってるけど。
「まあ、レジーが謎なのも分かるー」
と、リアが言う。
「あたし達だって、何日も過ごして、やっと、そういうルカに慣れてきたんだもん」
レジーは「とりあえず分かりました」と、微笑している。
「つーか、お前ら、何でこっち来たんだ?」
ルカが3人に向けてそう聞いた。
「あたしが迎えに行って、ルカとソラが城に居るって言ったら、2人も行きたいっていうから、そのままこっちに来ちゃった」
「ちょっと久々だしな」
「魔王の前からだから、結構帰ってなかったしね」
ゴウとキースが言うと、ルカは、ふ、と笑う。
「遊びに帰ってきたっつー事か」
ルカがそう言うと、皆、肩を竦めて笑ってる。
「どうせ明日の朝、アランのとこ行くなら、それと一緒でいいだろ」
ゴウのセリフに、ルカは、ああ、と頷いた。
「あ。――――……なあ、ソラ」
ゴウがオレを見て。ニヤ、と笑った。
「ルカの部屋、行った?」
「え? あ、うん」
頷くと、ゴウだけじゃなくて、キースとリアも、ああ、そう、みたいに面白そうな顔で頷く。
「……何?」
「いやいや、あのなー」
ゴウが楽しそうに話し出した所で、オレは、ルカにひょい、と引き寄せられた。
「さっきしたろ、オレの部屋に誰も入れてないって話。――――……お前が入ったか、確認してんだよ」
「――――……」
ああ、なるほど……。
――――……ルカ、皆に聞いてみろって言ってたけど。
もう聞くまでもないな……。
こんな面白そうな顔になっちゃうほど、他の人、入れてないんだ。
「やっぱりソラは入れるのかよ」
「でも皆も入ってるんでしょ?」
「オレらは、入るよ。作戦会議とかは、むしろあそこだからね」
キースがそう言ってから、くす、と笑う。
「――――……それ以外の誰も、入ってない場所だよ」
「――――……」
……何て答えればいいんだろう。
――――……ていうか。
そんな大事な場所で、さっきしてた事を考えると、何とも言えない気分に陥るのだけれど。
……でも、ルカは、あそこで抱きたかって言ってたしな。
うーん……?
オレが答えに悩んでると、リアがくす、と笑った。
「それで? ここで、ソラの事、何か分かった?」
リアが話題を変えてくれて、レジーとルカを見てそう言う。キースとゴウの視線も2人に集まった。
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