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第2章

◇ミルクティー*拓哉

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 マンションにたどり着いた時は、もう結構遅い時間だった。

「ただいまー」
「織田、先にシャワー浴びちゃいな」
「いいの?」
「いいよ。着替えも持ってくから、入ってて」

 ありがとーと素直に言いながら、織田がバスルームに直行していく。
 可愛いなぁ、ああいう感じ……。そんな風に思いつつ、スーツを脱いでハンガーにかける。部屋着や下着など、色々準備して脱衣所に置いた。

「織田、もう洗い終えた?」
「うん、もう出るよー」
「バスタオル、置いとくから」
「ありがと」

 織田が出てくるのと入れ替わりでシャワーを浴びて、リビングに戻ると、ちょうど織田がドライヤーを終えたところだった。

「あったかいもの、飲んで寝る?」
 そう言うと、うん、と織田が微笑む。

 お水を入れて電気ポットのスイッチを入れたところで、椅子の所で立って待ってる織田に、「ドライヤーかけてあげるから座ってー」と言われた。
 織田の前に座ると、スイッチが入って、暖かい風と、優しい手。

「気持ちいい?」
「ん」
 頷くと、そかそか、と織田がのんきな声で頷いている。
 しばらくドライヤーをかけてくれてる間、ふんふん鼻歌を歌ってる。

 ドライヤーの音でちゃんとは聞こえなんだけど、ご機嫌な感じなのは分かるから、ふと、顔が綻んでしまう。

「はい、乾いたよ~」
 そう言って、織田がドライヤーを止めた。

「ありがと」
「うん」
 頷きながらドライヤーを片付けてる織田から少し離れて、紅茶を淹れる準備。牛乳を電子レンジで温め始めた。
 ティーポットとカップに熱湯を入れて温めて、一度お湯を捨ててから茶葉を入れる。
 ドライヤーを片付けてきた織田が近づいてきて、「紅茶?」と嬉しそう。

「ミルクティーにする。砂糖いる?」
「ううん。砂糖はいいや。……良い匂いー」

 すうすう息を吸って、幸せそうにしてる織田を見ると、自然と笑ってしまう。

「ほっとするね……」
「そだな」

 綺麗な色がポットの中に広がるのを見つめていると。

「なんかね、オレさ」
「ん?」

「……ちょっと油断してたかも。仕事」
 少し静かな声で、織田がそう言う。

「ずっとそんなにミスしないでやってきたからさ。しかも納期……何回もミーティングとかもするし、色んなとこにも書くし、間違えてるはずがないっていう思い込みというか……」
「うん。……まあ、あるよな。思い込みも、慣れてきたからこその、油断も」
「……うん。でもさ、納期なんて一番守らなきゃいけないとこだしさ」

 珍しく、ちょっと落ち込んでるのかなと思って話を聞いていると。

「だから、事態が分かった時は、ほんと、めちゃくちゃ落ち込んだんだよね」
「ん……そっか」
「うん。そーなの」

「今も落ち込んでる?」
「ううん。今は平気」

 まあそうだと思ってたけど。
 微笑んでしまいながらオレは、紅茶をカップに注いでいく。温めたミルクも注いでかき混ぜて、織田に渡した。

「飲も?」
「ありがと」

 受け取って、織田が、ふわりと嬉しそうに笑う。


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