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第四章

1.「抱き締められて」*真奈

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◇ ◇ ◇ ◇
お知らせ♡ 後でブログに移しますがとりいそぎ…♡

とてもとても素敵な絵を描かれる、大好きな絵師さんのわかめちゃん(@fuesugiruwakame)が「promise」の表紙を描いて下さいました。

瞳や手や色使いや…全部素敵で。
作者ですが、俊輔に一目惚れでした。真奈も可愛くて。
手錠は二人の関係性から描いて下さいました✨

今さっき、表紙をさしかえさせていただきました……(^^
これからも作品とともに、新しい表紙も、よろしくお願いします♡

2022/12/29


◇ ◇ ◇ ◇





「……?……」
 
 薄暗い部屋の中、目を覚まして、自分の居場所を考える。
 ほんの二か月位だけど、かなり見慣れた天井が、今自分がどこに居るのかを思い出させてくれた。
  
 ……俊輔の部屋、だ。
 オレ、戻ってきたんだ……。
  
 途中、車の中で眠っちゃったんだ……。記憶、全然無い。
 運ばれて、ここに居るんだろうけど、その間全く気づかずに寝てたのか、オレ……。

 まだ、暗いし。何の物音も、しない。……すごく、静か。
 ずいぶん眠った気がするけれど、きっとまだ、真夜中かな……。 
  
 ……俊輔は……?
 今更な事に気づいて、ふ、と視線を横に流す。
 
 ……? 前が見えない。視界が、すごく狭い気がする。
 
「……真奈?」
 
 すぐ近くから、俊輔の声。
 ふ、と声の方に目をあげると、思ったよりもかなり近くの俊輔と目があった。
  
「……どうした?」

 何だか……この体勢って、まるで、腕の中に居るかのようで、オレは完全に、固まった。
 肩を抱いてるみたいにしてた、俊輔の手がオレの額の冷却シートをはがしてから、直に触れた。

「……まだ熱いな……」

 静かな声で言ってから、俊輔は枕元に置いてたらしい新しい冷却シートをオレの額に貼った。冷たくて、少し肩を竦める。

「……何時?」

 声が掠れる。

「……二時半だな」
「……起き、てたの……?」

 何だか喉が張り付いてるみたいで、声がうまく出ない。
 すると、俊輔がまたゆっくりと動いて体を起こすと、サイドテーブルから水のペットボトルを手に取った。
 
「水飲めよ。声、掠れてる」
 
 ありがと、と受け取った。起き上がって、一口水を口に含んだ。
  
「……?」

 じっと見つめられてる事に気づいて、ふ、と隣に座ってる俊輔に視線を向けると。
 ゆっくり手が伸びてきて、ふわりと頬に触れられた。
 
 そのまま数秒、停止。
 
「――――……」

 ……何だ……これ。
 どうして良いか分からずに、ペットボトルを握りしめたまま固まってしまう。
 
 
「……」

 しばらくしてようやく手が離れる。何も、言わずに。
 困って、もう一度水を飲んで、蓋をしめた。

「……もういらないか?」
「ぅん」
 
 頷くと、手の中のペットボトルを受け取って、サイドテーブルに置く。

「トイレは?」

 全然飲んでなかったからか、行きたくはないので、首を横に振る。
 すると、俊輔に手をとられて、そのまま引き寄せられたまま、寝転がって……。
 早い話、ベッドの上で、抱き締められた。
 
「……寝ろよ」
「……う、ん」
 
 ただ抱き締められて眠るなんて、当然だけど、今までそんなことは無い。

 いつもほとんど気を失うみたいに眠りについて。朝目覚めると、俊輔はいつも出かけた後。
 考えてみると、俊輔の寝顔を見た記憶も、ほとんど無い。
 
 
「……俊輔……」
「……ん?」
 
「……あの……」
「……ん」
 
  
「……黙って出ていって…… 怒って、ないの……?」
 
 俊輔の態度を見てると、ただ心配していただけに、見える。
 でも普通は怒るとこだろうと思うし。俊輔なら、余計怒りそうなのに。
 
 
「オレ、怒ってるように見えるか?」
「……」
 
 逆に聞かれて首を横に振った。
 
 ……再会してからもずっと、怒ってはいないように見える。
 でも、普通は、勝手に逃げ出したんだから。

 ……怒らない理由がよく分からない。
 いっそものすごく怒ってた方が、その理由も分かりやすい、というか……。
 
 
「……お前にひどいことしたのは分かってる」
「……」 
 
「……オレが怒るトコじゃねえだろ」
 
 
 なんだか、頷くことも出来ず、ただ黙っていると。
 俊輔は軽く、息をついた。
 
 
「このことで、お前に怒ったりは、しねえよ」
「――――……」


「いいから、寝とけ……」
 

 穏やかな声で、そう言われて。
 
 もうそれ以上聞きたいことも無くて、ただ頷いた。
 そのまま瞳を伏せる。
 
 
 抱き締められて眠る、なんて。
 男である以上、普通は無いよなぁ、なんて思うけど。

 ……抵抗する気も、なぜか全く起きない。
 

 最初は、慣れなくて、多少寝づらくはあったけれど、次第に眠気に襲われて。

 …… いつの間にか、また、眠りについていた。
 
 
 
 


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