上 下
42 / 46
四章 結実

---奏視点⑨---

しおりを挟む
 「なぁ、次の土曜日、うちこないか?」

 「まさか……」

 「新作のゲーム買っちゃったんだよなー。一緒にやろうぜ」

 「透、俺たち受験生って分かってるか?」

 「分かってるって。でも、たまには息抜きも必要だろ?」

 「お前の場合、息抜きの方が多いんじゃ……」

 「まぁ、まぁ、いいじゃん。くるだろ?」

 んー……土曜日は茉莉絵と会おうと思ってたけど、たまには透とゲームで息抜きするのもいいかもな。
 
 「分かったよ。その代わり、ゲーム終わった後は、勉強な。問題集も持っていくから」

 「うわっ、マジかよ」

 「勉強みてやるから」

 「いや、まぁ、助かるけど……分かった! 俺も腹を括ろう。ゲームの後は勉強な」

 まったく。どちらかといえば、勉強の方をメインで考えて欲しいもんだな。
 流石に透にも第一志望に受かって欲しいと思っている。
 学力的に同じ高校に行くのは難しいが、それでも中間くらいの高校は頑張れば受かると思っている。

 夜、茉莉絵とビデオ通話の時に、今週末は会えないと伝えたところ、反応が微妙だった。
 俺に会えなくて寂しいって思ったかな。でも、毎週会ってるし、水曜日もこうやってビデオ通話してる。
 友達と遊ぶことに難色を示すような子じゃないはずだけど……なんかマズったか。

 土曜日になり、十時ごろ家を出ようとしたところで母さんが話しかけてきた。

 「あれ、今日はその格好で行くの? もうちょっとお洒落したら?」

 「は? なんでお洒落するんだよ」

 「え? だって、今日はデートでしょ?」

 あぁ、今日は土曜日だから、茉莉絵と会うと思ってたのか。

 「今日は、透の家に行く約束してるから、茉莉絵とは会わないけど」

 「えっ⁉︎」

 「何……?」

 なんでそんなに驚くんだよ。別に透と遊ぶのなんて普通だろ。

 「あんた……今日クリスマスなのに……」

 「……っ⁉︎」

 うわっ、まじか……。行事とか全く気にしてなかったから、今日がクリスマスだって忘れてた。
 だからあの時、茉莉絵の反応が微妙だったのか。
 クリスマスだから会いたかったってことなのか。

 「今年のクリスマスは土曜日だから、てっきり茉莉絵ちゃんと会うんだと思ってたのに」

 「いや、クリスマスなんて忘れてた……」

 「もう、プレゼントも用意してないんでしょ。まぁ、中学生だからちょっとしたものでいいとは思うけど、何もあげないのはどうかと思うなー」

 「だよな……」

 付き合ってないとはいえ、両思いの状態なのに、クリスマスプレゼントがないのは流石にな……
 透には、午後からに予定を変更してもらい、すぐに駅前のショッピングモールへと向かう。
 何か良いものはないかと、女性向けのフロアでアクセサリーや髪飾りなどをみていく。

 どれがいいのか……そう思いながら、歩いていると、白と水色の石を使ったブレスレットが目に留まる。

 これ……茉莉絵に似合いそう。水色も好きそうだったしな。
 プレゼント用にラッピングしてもらい、すぐに茉莉絵にメッセージを送った。 

 丁度、クッキーの散歩をしていたところだったようで、公園に向かうともこもこと着込んだ茉莉絵がいた。
 いつもは防寒しながらもスタイルがいいなと分かるような格好だったため、このもこもこと着込んだ姿が新鮮で可愛いなと思った。

 急遽買ったものだったから、気に入ってもらえるか心配だったが、その場で腕につけて嬉しそうにする茉莉絵の顔を見たら、来年はもっといいものをプレゼントしようと思った。
 
 来年はバイトもする予定だから、ペアリングとか買ったりするのも……ってキモいか?
 下手に自分で考えるより、何が欲しいか聞いて、一緒に買いに行くのもいいかもな。

 大体二時間散歩してるはずだから、後一時間は一緒に公園で過ごして送っていくかなと思っていると、茉莉絵も家にプレゼント置いてあると言った。

 あぁ、だからあの時反応が微妙だったのか。
 俺のためにクリスマスプレゼントを前もって準備してくれてたのに、当日会えないなんて……茉莉絵の気持ちを考えると申し訳ない気持ちが湧き上がる。

 まじでごめん……

 家に着くと、急いで部屋に駆け上がっていく茉莉絵を見ながら、そんなに急がなくても逃げないのにと笑いが込み上げる。

 茉莉絵がくれたものだと思うと包装紙まで綺麗に解こうと思ってしまうのだから、不思議だ。
 これ、綺麗に畳んで持って帰って引き出しにしまっとこうかな。

 プレゼントはネックウォーマーで、俺の好きな色を意識して選んだのが分かるものだった。
 中々センスが良いプレゼントで、日常使いができていいなと思った。

 俺もこういうのにすれば、学校に行く時も使ってもらえたのにな。
 流石にブレスレットは休みの日とか出かける時くらいしかつけられないもんな。

 次からはもう少し考えてプレゼントを選ぼう。

 
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

榛名の園

ひかり企画
青春
荒れた14歳から17歳位までの、女子少年院経験記など、あたしの自伝小説を書いて見ました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

歌にかける思い~Nコン最後の夏~

ユキウサギ
青春
学校の中でも特に人気のない部活、合唱部。 副部長の時田 優良(ときた ゆら)は合唱部がバカにされるのが嫌だった。 気がつけばもう3年生。 毎年出てたNコンに参加するのも、もう今年で最後。 全部員11名、皆仲がいい以外に取得はない。 そんな合唱部の3年生を中心に描いた、Nコンにかける最後の夏の物語。

GIVEN〜与えられた者〜

菅田刈乃
青春
囲碁棋士になった女の子が『どこでもドア』を作るまでの話。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

@パラソル ~ドタバタ少年少女奮闘記~

あお飴
青春
「パラソル」いわゆるなんでも屋で少年少女はドタバタ全力フルパワーで生きてます!仕事募集中。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

脅され彼女~可愛い女子の弱みを握ったので脅して彼女にしてみたが、健気すぎて幸せにしたいと思った~

みずがめ
青春
陰キャ男子が後輩の女子の弱みを握ってしまった。彼女いない歴=年齢の彼は後輩少女に彼女になってくれとお願いする。脅迫から生まれた恋人関係ではあったが、彼女はとても健気な女の子だった。 ゲス男子×健気女子のコンプレックスにまみれた、もしかしたら純愛になるかもしれないお話。 ※この作品は別サイトにも掲載しています。 ※表紙イラストは、あっきコタロウさんに描いていただきました。

処理中です...