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四章 結実
---奏視点⑧---
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夏期講習が始まり、朝から夜まで塾で過ごすようになった。
家で一人で勉強している時と違い、少し詰まったところもすぐ質問して先に進められるのは良いなと思った。
授業が終わった後も自習室を使うことが出来、静かな環境で勉強出来るため、冬季講習も利用したいと思った。
早く茉莉絵とビデオ通話したいなと思いながらも、家に帰ると疲れてしまって、茉莉絵を気遣ったりできなさそうだったから、いつも通り『お疲れ』とメッセージを送って眠りについた。
塾は駅前にあり、ゲームセンターの前を通って通っているが、ちょうど目に入ったUFOキャッチャーに羊のぬいぐるみが……
茉莉絵、羊好きだったよな。ちょっと取ってみるか。
いや、流石にいらないか……そう思いながら素通りしようとしたが、結局取りに戻ってしまった。
手に持った羊のぬいぐるみを見つめ「これ……いるかなぁ」と一人ごちる。
一応今度会う時、持っていってみるか。
夏期講習も最終日になると、流石に勉強漬けの毎日で疲労が溜まっていたようで、帰ってベッドに寝転んだら思いの外熟睡してしまい、目が覚めたら二十三時だった。
「うわ……まじかよ。寝過ぎだろ」
でも、まだ眠いからこのまま寝れそうだけど……どうするか。
やっと夏期講習も終わったし、茉莉絵の顔がみたいが、もうこんな時間だしな。どうするか。
少しだけなら許されるか? そう思って、メッセージを送るとすぐに大丈夫だと返信きた。
勉強してただろうから、邪魔にならないようにさっさと切ろうと心に決め、テレビ通話を繋げた。
茉莉絵の明るい笑顔を見ただけで、疲れが取れる気がした。
こんな時間だけど、メッセージ送って良かった。
茉莉絵と話した後は、良い夢が見れそうな良い気分のまま眠りについた。
あれだけ寝たのに寝れるか心配だったが、朝までぐっすりだったため、思ったより疲れてたんだなと思った。
◆ ◆ ◆
約三週間ぶりに会う茉莉絵は少し焼けていた。
いつも透けるように白い肌が綺麗だと思っていたが、少し焼けたのも健康的な感じがして良いなと思った。
Tシャツにショートパンツが、よく似合う。足長すぎないか?
あまりジロジロ見ないようにしないとと思うものの、自然と目がいきそうになり、その都度意識を逸らす。
もしかして、俺って脚フェチだったのか……
こんなこと思ってるとは知らない茉莉絵は、俺のためにアイスを作ってきたと言った。
気にしなくていいのに、こういう律儀なところ良いよなと思う。
してもらってばかりじゃなくて、返したいと思う気持ちが嬉しいよな。
俺の彼女は出来た子だな……いや、まだ彼女じゃない。
付き合ってるようなもんだけど、まだ名言できないんだよな。
今付き合ったとしても、普通の恋人たちみたいに構ってやれないと思うし……
はぁ、早く受験終わらねーかな。
あ、今ぬいぐるみ渡すのにちょうどいいんじゃ……そう思い、鞄から取り出して茉莉絵に渡す。
また両手で大事そうに受け取る様子を見て、やっぱり羊が好きなんだなと思った。
次またどこかで見つけたらプレゼントしよう。
また次会えるのは一週間後かと思うと、物足りなさを感じてしまい、毎週水曜日にテレビ通話をしようと提案してしまった。
俺ってこんなに積極的だったのかと驚く。
今まで自分からこんな提案とかしたことないんだけどな。茉莉絵が相手だと新しい自分を知ることができる。
水曜日になり、通話を繋げると部屋着のラフな感じと柔らかい髪をゆるく編んでいるのが可愛すぎて、勉強に集中できなさそうだと思った。
真面目に勉強しないと、茉莉絵が勉強の邪魔になってるんじゃないかと気にしそうな気がするから、気持ちを切り替えて問題集を解いていく。
すると「うーん……」と考え込む声が聞こえたため、画面の向こうを覗いてみると、ペンが止まり悩んでいるようだった。
どこかわからないところがあるなら教えてあげられるかもしれないと声をかけ、ノートに公式を書いて説明していく。
こちらの画面を見ているのに、なぜか話を聞いてる感じがしないなと思っていると、俺の字が綺麗でそちらに気を取られていたと。
小学校六年間通わされたからな。嫌々行ってたから中学に行くタイミングで辞めさせてくれたが。
その時のことがこうやって役に立ってるなら通ってて良かったなと今更ながら思うのは現金すぎるか。
◆ ◆ ◆
「やばい。流石にそろそろ真面目に勉強しないとだよな」
「透は、受験生っていう自覚が足りなさすぎるだろ」
「いや、まぁ、なんか勉強ってする気が起きないんだよな。お前はなんでそんなに毎日コツコツと勉強できるんだよ」
「習慣化すればいいだけだろ。後は……まぁ、その、落ちたら格好悪いだろ」
茉莉絵と同じ高校に行きたいし、茉莉絵だけ受かって俺が落ちるなんて格好悪すぎて無理だ。
絶対受かってやる。そう意気込んで毎日コツコツと勉強を続けていた。
「うわ……茉莉絵ちゃんに良いとこ見せたいってやつ?」
「相沢さんな?」
「細か……」
気安く名前で呼ぶなって前に言ったのに、全く。
「俺にも勉強教えてくれよー」と嘆いてる透の声を遠くに聞きながら、窓の外をみると、木が赤く染まり、秋だなと実感する。
あと三ヶ月もすれば本番か。気を緩めず行こうか。
家で一人で勉強している時と違い、少し詰まったところもすぐ質問して先に進められるのは良いなと思った。
授業が終わった後も自習室を使うことが出来、静かな環境で勉強出来るため、冬季講習も利用したいと思った。
早く茉莉絵とビデオ通話したいなと思いながらも、家に帰ると疲れてしまって、茉莉絵を気遣ったりできなさそうだったから、いつも通り『お疲れ』とメッセージを送って眠りについた。
塾は駅前にあり、ゲームセンターの前を通って通っているが、ちょうど目に入ったUFOキャッチャーに羊のぬいぐるみが……
茉莉絵、羊好きだったよな。ちょっと取ってみるか。
いや、流石にいらないか……そう思いながら素通りしようとしたが、結局取りに戻ってしまった。
手に持った羊のぬいぐるみを見つめ「これ……いるかなぁ」と一人ごちる。
一応今度会う時、持っていってみるか。
夏期講習も最終日になると、流石に勉強漬けの毎日で疲労が溜まっていたようで、帰ってベッドに寝転んだら思いの外熟睡してしまい、目が覚めたら二十三時だった。
「うわ……まじかよ。寝過ぎだろ」
でも、まだ眠いからこのまま寝れそうだけど……どうするか。
やっと夏期講習も終わったし、茉莉絵の顔がみたいが、もうこんな時間だしな。どうするか。
少しだけなら許されるか? そう思って、メッセージを送るとすぐに大丈夫だと返信きた。
勉強してただろうから、邪魔にならないようにさっさと切ろうと心に決め、テレビ通話を繋げた。
茉莉絵の明るい笑顔を見ただけで、疲れが取れる気がした。
こんな時間だけど、メッセージ送って良かった。
茉莉絵と話した後は、良い夢が見れそうな良い気分のまま眠りについた。
あれだけ寝たのに寝れるか心配だったが、朝までぐっすりだったため、思ったより疲れてたんだなと思った。
◆ ◆ ◆
約三週間ぶりに会う茉莉絵は少し焼けていた。
いつも透けるように白い肌が綺麗だと思っていたが、少し焼けたのも健康的な感じがして良いなと思った。
Tシャツにショートパンツが、よく似合う。足長すぎないか?
あまりジロジロ見ないようにしないとと思うものの、自然と目がいきそうになり、その都度意識を逸らす。
もしかして、俺って脚フェチだったのか……
こんなこと思ってるとは知らない茉莉絵は、俺のためにアイスを作ってきたと言った。
気にしなくていいのに、こういう律儀なところ良いよなと思う。
してもらってばかりじゃなくて、返したいと思う気持ちが嬉しいよな。
俺の彼女は出来た子だな……いや、まだ彼女じゃない。
付き合ってるようなもんだけど、まだ名言できないんだよな。
今付き合ったとしても、普通の恋人たちみたいに構ってやれないと思うし……
はぁ、早く受験終わらねーかな。
あ、今ぬいぐるみ渡すのにちょうどいいんじゃ……そう思い、鞄から取り出して茉莉絵に渡す。
また両手で大事そうに受け取る様子を見て、やっぱり羊が好きなんだなと思った。
次またどこかで見つけたらプレゼントしよう。
また次会えるのは一週間後かと思うと、物足りなさを感じてしまい、毎週水曜日にテレビ通話をしようと提案してしまった。
俺ってこんなに積極的だったのかと驚く。
今まで自分からこんな提案とかしたことないんだけどな。茉莉絵が相手だと新しい自分を知ることができる。
水曜日になり、通話を繋げると部屋着のラフな感じと柔らかい髪をゆるく編んでいるのが可愛すぎて、勉強に集中できなさそうだと思った。
真面目に勉強しないと、茉莉絵が勉強の邪魔になってるんじゃないかと気にしそうな気がするから、気持ちを切り替えて問題集を解いていく。
すると「うーん……」と考え込む声が聞こえたため、画面の向こうを覗いてみると、ペンが止まり悩んでいるようだった。
どこかわからないところがあるなら教えてあげられるかもしれないと声をかけ、ノートに公式を書いて説明していく。
こちらの画面を見ているのに、なぜか話を聞いてる感じがしないなと思っていると、俺の字が綺麗でそちらに気を取られていたと。
小学校六年間通わされたからな。嫌々行ってたから中学に行くタイミングで辞めさせてくれたが。
その時のことがこうやって役に立ってるなら通ってて良かったなと今更ながら思うのは現金すぎるか。
◆ ◆ ◆
「やばい。流石にそろそろ真面目に勉強しないとだよな」
「透は、受験生っていう自覚が足りなさすぎるだろ」
「いや、まぁ、なんか勉強ってする気が起きないんだよな。お前はなんでそんなに毎日コツコツと勉強できるんだよ」
「習慣化すればいいだけだろ。後は……まぁ、その、落ちたら格好悪いだろ」
茉莉絵と同じ高校に行きたいし、茉莉絵だけ受かって俺が落ちるなんて格好悪すぎて無理だ。
絶対受かってやる。そう意気込んで毎日コツコツと勉強を続けていた。
「うわ……茉莉絵ちゃんに良いとこ見せたいってやつ?」
「相沢さんな?」
「細か……」
気安く名前で呼ぶなって前に言ったのに、全く。
「俺にも勉強教えてくれよー」と嘆いてる透の声を遠くに聞きながら、窓の外をみると、木が赤く染まり、秋だなと実感する。
あと三ヶ月もすれば本番か。気を緩めず行こうか。
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