ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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37 牙 side 渡

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膝くらいまである草を掻き分けて、陸を追いかける。
陸が歩く速さを俺に合わせてくれてて、あとチラチラついてきてるかも確認もしてくれてるから置いてかれんですんだわ。

一度も迷うことなく道なき道をテクテク歩いてく背中は頼もしい。
言うても、どんなときでも陸は格好良ぇし頼もしいんやけどな。
俺みたいに、草に足が引っかかったり、枝が頭に当たったりもせぇへんで。

俺には草が茂ってるだけにしか見えへんけど、陸には道が見えてて、どこに何があるかもわかってるんやろな。
陸は、毎年Ωにした俺のことを思い出して今から行くとこに来てたんやって。
そのころのことを話す陸は、なんやいろんな感情ごちゃまぜな複雑な顔をいつもしてるねん。
それでな。
俺を見る目が、一段と甘くて優しく緩んで眩しそうに細めんねん。
正直、そんな顔をさせてしまう昔の俺に正直ジェラシーめらめら。

なんで記憶がなくなったんかなぁって、千里さんに聞いてみたらな。
きっと変異するときの高熱と雨に降られて川に落ちたショックが重なってストレスがかかりすぎたんじゃないかって冷静に分析してくれた。
写真の中の丸こい陸と遊んでた記憶、村を案内して貰ったのになんにも蘇らへん。
スコンと、どっかに置き忘れてきたみたいや。

周りは見上げるくらいおっきくて太い木ばっかり。
こんだけ大きいなら、俺と陸が小さいとき遊んでたんも見守ってくてたんやろなあ。
思わず、近くにあった木を撫でながら歩いてしまう。
危ない木、皮膚がカブれるのとかは陸が伐採してるし無いんやて。

ザラザラした木の感触、ぬくもり、なんやホッとするな。
葉っぱがようさん茂ってるから、日差しも柔らかくて風も涼しい。
小さいときの俺やったら、そんなん気付かずに夢中で陸と遊んでたんやろな。

暫く歩いたら、草の丈が低くなってきて陸の歩みが止まった。
俺が追い付くと、向かい合ってこの先の話をしてくれた。


「渡、あと少し歩くと川に出る。
そこから、川の上に掛かった丸太を渡って川沿いの道を進むがお前一人じゃ心元ねぇ」


進み先を右手で指差して、左手の人差し指と中指でその上を歩く仕草。
ま、丸太・・・それはぁ、うん、自信ないわぁ。
川沿いは、手ぇ繋いでくれたら行けると思うけど・・・水面がギリギリまで来てなかったら。
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