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22 夏休み side 命
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「ごめんなさぃ、姉上」
肩を落として謝る僕の頭を、姉上は優しく撫でて微笑む。
三枝君は僕達二人のやりとりを見て、「めっちゃ仲良しやなぁ」とけぇちゃんの袖を摘まんで話しかけている。
けぇちゃんは、「そうですね」と頷いていた。
樟葉家は、代々αとΩが揃って宮司に嫁ぎ番う血筋だからね。
樟葉のαは、Ωの弟や妹にとても優しい。
それは、血を分けた兄弟だからという人もいれば、いつか始祖の末裔の災厄を受ける大切な身として扱っているだけの人もいて実はバラバラな想いが裏にあったんだ。
でも姉上は、間違いなく僕のことを弟として可愛がってくれている。
可愛がって、庇って、一緒に棘の道を進んでくれてる。
僕が物心つくころには、慣習を破ったΩの元神子として僕の存在さえ赦せないと考える大人のαが周りにいたんだ。
α家系に生まれたαの子どもは、定期的に同世代が親好を深める会を催してね。
α社会の横の繋がりや、自分の身の丈を知るための重要な社交性を身に付けるんだよ。
御珠神社は、その会場が定期的に回ってくるんだ。
そのときは、孕上や僕、それに僕の後を継いで舞うことになる樟葉の血を受け継がない神子が神楽を披露しているんだけど。
親から、僕が御三家の許可を得たとはいえ、誉れ高い神子職を降りることを受け入れたと聞かされていた子どもの中にはね。
僕のことを、祖神様を裏切った人間だって糾弾する子もいてね。
大人が言えば、御三家の決定に逆らうことだから畏れ多くて問題になることでも、子どもなら咎めはないって焚き付ける親がいるんだよ。
狡いよね。
姉上は、僕が絡まれるといつも助けに来てくれた。
それが格上のαでも、父上達が止めに入るまで一歩も引かなかった。
それに。
実際姉上から言われてはないけど、大学の進路は僕のために選んでくれたんだと思う。
僕が神子じゃなくなったことで責められ続けるなら、自分もその責めの一部を引き受けようとしてくれてるんじゃないかな。
宮司を婿に迎えるんじゃなくて、自分が史上初の女性宮司になる。
そう宣言した姉上を、父上も先代宮司のお祖父様も応援している。
「わざわざ婿を取らなくても、私がすればいいじゃない」って、「α女性のプライドよ」って。
他にもいろんな理由を話していたけど。
「姉弟揃って御珠神社の歴史を変えましょうね」
僕を抱き締めて話してくれたこの言葉が、一番の理由だと思うんだ。
肩を落として謝る僕の頭を、姉上は優しく撫でて微笑む。
三枝君は僕達二人のやりとりを見て、「めっちゃ仲良しやなぁ」とけぇちゃんの袖を摘まんで話しかけている。
けぇちゃんは、「そうですね」と頷いていた。
樟葉家は、代々αとΩが揃って宮司に嫁ぎ番う血筋だからね。
樟葉のαは、Ωの弟や妹にとても優しい。
それは、血を分けた兄弟だからという人もいれば、いつか始祖の末裔の災厄を受ける大切な身として扱っているだけの人もいて実はバラバラな想いが裏にあったんだ。
でも姉上は、間違いなく僕のことを弟として可愛がってくれている。
可愛がって、庇って、一緒に棘の道を進んでくれてる。
僕が物心つくころには、慣習を破ったΩの元神子として僕の存在さえ赦せないと考える大人のαが周りにいたんだ。
α家系に生まれたαの子どもは、定期的に同世代が親好を深める会を催してね。
α社会の横の繋がりや、自分の身の丈を知るための重要な社交性を身に付けるんだよ。
御珠神社は、その会場が定期的に回ってくるんだ。
そのときは、孕上や僕、それに僕の後を継いで舞うことになる樟葉の血を受け継がない神子が神楽を披露しているんだけど。
親から、僕が御三家の許可を得たとはいえ、誉れ高い神子職を降りることを受け入れたと聞かされていた子どもの中にはね。
僕のことを、祖神様を裏切った人間だって糾弾する子もいてね。
大人が言えば、御三家の決定に逆らうことだから畏れ多くて問題になることでも、子どもなら咎めはないって焚き付ける親がいるんだよ。
狡いよね。
姉上は、僕が絡まれるといつも助けに来てくれた。
それが格上のαでも、父上達が止めに入るまで一歩も引かなかった。
それに。
実際姉上から言われてはないけど、大学の進路は僕のために選んでくれたんだと思う。
僕が神子じゃなくなったことで責められ続けるなら、自分もその責めの一部を引き受けようとしてくれてるんじゃないかな。
宮司を婿に迎えるんじゃなくて、自分が史上初の女性宮司になる。
そう宣言した姉上を、父上も先代宮司のお祖父様も応援している。
「わざわざ婿を取らなくても、私がすればいいじゃない」って、「α女性のプライドよ」って。
他にもいろんな理由を話していたけど。
「姉弟揃って御珠神社の歴史を変えましょうね」
僕を抱き締めて話してくれたこの言葉が、一番の理由だと思うんだ。
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