ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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22 夏休み side 命

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姉上は、花火を観覧するための関係者席まで一緒に歩いてくれて。
僕が椅子に座るところまで確認してから戻っていった。
お祭りに来た人の中には、御珠神社のお守りや御札を求める人もいるから授与所は時間を延長。
花火が終わるまでは応じるから忙しいんだ。

僕も手伝えたら良いんだけど。
テキパキ動くのも苦手だし。
せっかく出来た友達と遊んでいらっしゃいって、家族の皆から勧められたんだよ。


「待たせたな!」

「わぁー、かなちゃん、すごい量やん!
いっぱい並んできたん?」


花火の打ち上げが始まる前に、菊川君は両手に膨れた白いビニール袋を下げて、かなちゃんはリンゴ飴を手に戻ってきた。
菊川君を見ないように、かなちゃんの顔に集中、集中っ
関係者席には、御珠神社の神事に携わるαもいれば、僕を煙たがっているαもいるからね。
こんなところで気を失って騒ぎになったら、後で何を言われるかわからないよ。

かなちゃんからリンゴ飴と大判焼きを受け取って、代金を支払う。
まだ、花火の打ち上げまで時間があったから、けぇちゃんと一緒に父上と姉上のところまで届けたよ。

神社の敷地には、森のように年輪を重ねた木々が生い茂っているんだけど。
関係者席以外にも、木々の切れ間があって空を見上げることが出来る場所がいくつか在る。
そこに人が集中していて、所々通りにくかったからね。
とても荷物を持っては、一人では辿り着けなかったな。

けぇちゃんに手引っ張って貰いながら、高揚した祭りの雰囲気に頬が綻ぶ。


「・・・みこ、大丈夫ですか?」

「大丈夫だよぉ」


キョロキョロしていて歩くのが遅れると、直ぐにけぇちゃんは心配そうに僕を振り返ってくれる。
提灯の切れ間で、明かりが届かない人混み。
闇夜に溶け込むような漆黒の肌から、けぇちゃんの温もりが伝わってくる。

代々御珠神社の衛士を任されている家の中で、偶然同い年だというだけで僕の護衛役になってしまったけぇちゃん。
心配性で、優しくて。
でも、僕を「みこ」と。
「神子」と呼んで、一線を越えないように戒めてるけぇちゃん。
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