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22 夏休み side 命
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御珠神社へ戻ると、石橋を渡って直ぐの一の鳥居の脇に巫女姿の姉上が立っていた。
浴衣姿の人が多いから道は彩りに満ちているけれど、その中でも白に赤の色彩はとても目立っていて写真撮影を頼まれてはそれを断っているようだった。
僕の姿を見つけると、姉上は慌てて駆け寄ってきたので何事だろうと心配になる。
僕のことで、また揉め事が起こってしまったんだろうか?
普段は冷静沈着な姉上だから、僕の隣を歩いていた三枝君はその見慣れない気迫にのまれてしまっている。
「く、樟葉先輩、どないしたん?」
「命が倒れていたと聞いて待っていたんですっ
この格好では目立ちすぎるし、父上からは柴田君から連絡がないのだから大丈夫だろうと言われたんですが・・・
何があったの?
誰かに絡まれた??」
身を屈めて、僕の両腕を震える手で握った姉上。
僕に異常がないか、僅かなことも見落とさないと身体の隅々、提灯に照らされた顔色も目を凝らしてじっくりと観察される。
その瞳は、心なしか濡れている。
あぁ、また迷惑をかけてしまっている。
姉上の顔を見ているだけで、ズキッと胸の奥が痛んだ。
姉上には、ずっとずっと、これからもずっと。
迷惑をかけてしまうのに。
「大丈夫だよぉ、菊川君に緊張しちゃって・・・」ボソボソと理由を話すと、張りつめていた糸が切れたようにその場に姉上はしゃがんでしまった。
「そう、それなら、良かったわ」
「ごめんなさぃ、心配かけて」
「私の方が、ごめんなさい。
せっかく、祭りを楽しんでいたのに雰囲気を壊してしまったわね」
はぁーっと息を大きく吐いて立ち上がる姉上。
サラサラと、腰まで伸びた黒髪が動きに合わせて綺麗に流れる。
きっと、警備の誰かが僕が倒れたことを父上達に報告して、それを聞いた姉上が心配してわざわざここまで出てきてくれたんだ。
浴衣姿の人が多いから道は彩りに満ちているけれど、その中でも白に赤の色彩はとても目立っていて写真撮影を頼まれてはそれを断っているようだった。
僕の姿を見つけると、姉上は慌てて駆け寄ってきたので何事だろうと心配になる。
僕のことで、また揉め事が起こってしまったんだろうか?
普段は冷静沈着な姉上だから、僕の隣を歩いていた三枝君はその見慣れない気迫にのまれてしまっている。
「く、樟葉先輩、どないしたん?」
「命が倒れていたと聞いて待っていたんですっ
この格好では目立ちすぎるし、父上からは柴田君から連絡がないのだから大丈夫だろうと言われたんですが・・・
何があったの?
誰かに絡まれた??」
身を屈めて、僕の両腕を震える手で握った姉上。
僕に異常がないか、僅かなことも見落とさないと身体の隅々、提灯に照らされた顔色も目を凝らしてじっくりと観察される。
その瞳は、心なしか濡れている。
あぁ、また迷惑をかけてしまっている。
姉上の顔を見ているだけで、ズキッと胸の奥が痛んだ。
姉上には、ずっとずっと、これからもずっと。
迷惑をかけてしまうのに。
「大丈夫だよぉ、菊川君に緊張しちゃって・・・」ボソボソと理由を話すと、張りつめていた糸が切れたようにその場に姉上はしゃがんでしまった。
「そう、それなら、良かったわ」
「ごめんなさぃ、心配かけて」
「私の方が、ごめんなさい。
せっかく、祭りを楽しんでいたのに雰囲気を壊してしまったわね」
はぁーっと息を大きく吐いて立ち上がる姉上。
サラサラと、腰まで伸びた黒髪が動きに合わせて綺麗に流れる。
きっと、警備の誰かが僕が倒れたことを父上達に報告して、それを聞いた姉上が心配してわざわざここまで出てきてくれたんだ。
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