上 下
489 / 911
18 運命の人

22

しおりを挟む
「お前らには、今後の参考に知っとく方が良いと親心で同席させてんだ!
どこでも盛るなっ、バカ息子っっ」

「サンダル投げることないだろ?!」


ヤマはギラリと目を光らせ陽太さんに噛みつこうとしたが、慌ててその腕に抱きついて止めさせた。
陽太さんは、ヤマにだけ怒っているんだが俺も間違いなく同罪だ。
ついうっかりヤマに乗ってしまったし、まさか、あんなことでヤマがフェロモンを漏らすなんて思ってなかったんだ。

学校や離れではいつもフェロモンに包まれていたが、この屋敷でヤマはフェロモンを引いていたからな。

ヤマは、陽太さんにぶつけられことに気が収まらず苛立ちを隠さない。
俺を包み込んだフェロモンは、陽太さんへの敵意に満ちたものに塗り替えられていた。


「ヤマ、ごめん。
俺が悪いから、陽太さんにやり返すなんてしないでくれ」


宥めて気持ちを収めてもらう。
床に落ちたビーチサンダルを拾い、不貞腐れた顔のヤマの手を引っ張って駆け寄った。

陽太さんにビーチサンダルを返すと、陽太さんは履き直さずに右手に握りしめたまま今度は清人さんの頭に向かって振りおろした。

スパーンッ

泣いていた清人さんの頭に容赦なく当たり、小気味良い音がして俺もヤマもこれには唖然。
綺麗すぎて、ガラスケースで保護しておきたいくらいの清人さんに、思いっきり当てたぞ?
手加減無しのフルスイングだったぞ?
遥馬さんも、悲鳴をあげた。


「よよよよよ陽太さん?!」


αにとってはプライドと同じくらい大切な頭を、サンダルで直接叩かれたからな。
今までなんの反応も示さずに泣いていた清人さんも、黙ってはいなかった。


「てんめぇ、何しやがる?!」


その場で立ち上がり、陽太さんを見下ろす双眸は冷えきって殺意も混じる。
陽太さんは動じないどころか鼻で嗤い、清人さんに向かって遥馬さんの背を押した。


「明日、病院に連れていってやれよ。
来年にはパパだぜ?」


陽太さんを睨みながらも、咄嗟に遥馬さんを優しく抱き止めた清人さん。
さらりと告げられた言葉に、すっと感情が表情から消えた。


「え"ぇ"ーーーっ」


ヤマの方が先に驚きの声をあげていた。
しおりを挟む
感想 961

あなたにおすすめの小説

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

国王の嫁って意外と面倒ですね。

榎本 ぬこ
BL
 一国の王であり、最愛のリヴィウスと結婚したΩのレイ。  愛しい人のためなら例え側妃の方から疎まれようと頑張ると決めていたのですが、そろそろ我慢の限界です。  他に自分だけを愛してくれる人を見つけようと思います。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

処理中です...