ヘタレαにつかまりまして 2

三日月

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18 運命の人

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咄嗟に両耳を押さえたが間に合わず、キーンと耳鳴りが頭に響く。
三枝が受けた衝撃の強さを物語るような絶叫だった。
それは、そうだろう。
いくら仲良くなっていても、友達と番では根本的に違うからな。

あの笹部と番になるようなことをするなんて、三枝には考えられないだろう。
俺なら、いくらΩにされた相手とわかっても他のαを探す。
一生を託す相手が、迂闊で馬鹿なαなんて冗談じゃない。

さぞショックを・・・受けて、ない?

三枝のハイトーンボイスに、椅子から落ちかけた樟葉を引き上げ振り返ると。
そこにいたのは、キラキラ、キラキラ・・・
背後にも瞳にも、輝く星が散りばめて見えるくらいにうっとり陶酔しきった表情の三枝だった。
朱に染まった両頬を手で押さえ、その指先まで全身を紅潮させた三枝が椅子にちょこんと座っていた。

これではまるで、恋する乙女じゃないか?!
Ω向け恋愛小説を語るときの三枝よりも、二次元、いや、異世界に浸りきって焦点が合っていない。
頼子さんと道成さんは、その反応に「「あれ?」」と困惑。


「え、渡、まだ知らんかったん??」

「しっしっしっしっしっ知ぃらんよぉぉおおっ」


頬を抑えた状態で、ブンブン左右に首を振る。
潤んだ瞳、艶々な唇、血の気が戻りすぎているリンゴのような頬。

ちょっ、ま、まさか、喜んでいるのか?!
性格も家柄も、遥かに笹部より良い桂木から告白されたときは、あんなにあっさりと断っていたのに!


「おい、三枝っ
笹部だぞ?
あの、笹部なんだぞ?」

「はぅぅ~、かなちゃん、止めてぇ~
もぅ、何回も言わんとってえなぁ~
恥ずかしぃぃ」


なんでだ!

身体をくねらせて恥じらう三枝に、開いた口が塞がらない。
三枝が相手に気付いていなかったことを知り、驚いていた頼子さんと道成さんも、その反応にはニヤニヤ、してやったりと満足げだ。
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