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18 運命の人

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三枝は、「ふわぁ」だの、「ひゃぁ」だの、高ぶった感情のままに声を漏らしながら、机に放り投げた写真をうっとりと眺めている。
まさか、このコロコロした姿まで格好良いとか、可愛いとか言い出すんじゃないだろうな。

ただの肥満児が、縁側で両手にスイカを持って食い散らかしているだけだぞ?
うっとりと眺める要素はどこにもないぞ?


「そっかぁ、笹部君かぁ」


樟葉はこの事実に、「ほうほう」と頷いているだけで特に個人の感想はないようだ。
笹部とは、二年生でクラスも別れたしな。
樟葉と笹部が二人で話す姿を見た覚えがないから、笹部のことをあまり分かっていないのかも知れないな。

触れて欲しくない所を抉じ開けて晒そうとするは、ヤマの歯形がついた俺のうなじに触れようとするは、三枝を泣かすは、とんでもない馬鹿だと言うことを後でしっかり教えておこう。
わざわざ触れ回るようなことでは無いと言わずにいたが、あの馬鹿の馬鹿ぶりの酷さはαを疑いたくなるレベルだからな。


「あぁ、うちらしくじってしもたなぁ。
お互いに惹かれあうんやったら、先入観持たせんのも嫌やったし、こっちからはなんも言わんときましょって千里さんと決めてたのに」

「渡が自分でΩだって言ってきたから、てっきり陸君が気付いたのかと思ったいたんだけどなぁ」


頼子さんも道成さんも、自分達の演出が失敗したことを嘆いているようだが。
これは、舞台じゃないっ
三枝の人生がかかってるんだっ


「あの、どういうことなんでしょうか?!
笹部の近くにいれば、三枝にいつ発情期が来てもおかしくなかったんですよね?
茅野学園で、他のαに襲われたらどうするつもりだったんですかっ」


バンッバンッと、怒りに任せて机を叩く。
Ωの自覚がない三枝を、あんな場所に送り込むなんてどうかしてる!

この音で、流石に三枝も我に返った。
夢から覚めたばかりの心もとない顔だったが、写真から顔をあげる。
お帰り、三枝っ
ロマンチックに浸る時間は終わりだ!
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