麗しのマリリン

松浦どれみ

文字の大きさ
26 / 32
5月

8−5彼の元へ

しおりを挟む
『みなさん、お疲れ様でした~! 撮影した写真は出口に表示されますので、ぜひご購入ください。お忘れもののないよう、お願いいたします』

 コースターはゆっくりと発着場に戻った。目まぐるしく変わる景色やスリリングなスピード感。マリは意外とハマりそうだと思いながら安全バーが上がるのを待った。

「新堂?」
「…………」

 バーが上がって隣を見ると、そこには血の気の引いた新堂が。声を掛けるが返事はない。白い肌が不健康に青白くなっており、顎からは汗が落ちている。

「新堂!」

 マリは慌てて新堂の名を呼び、彼の肩と手に触れた。指先が冷え切っている。こんなに暖かい日におかしい。

「新堂、大丈夫? 私スタッフの人呼ぶね」
「待って……」

 マリがスタッフを呼ぼうと立ち上がると、新堂に引き止められる。彼は力無くマリの手を掴んでいた。

「でも、具合悪いんでしょう?」
「大丈夫……酔っただけ」

 不安そうに見下ろすマリに新堂は静かに返事をした。喉がカラカラに渇いていて、声がうまく出せず掠れる。

「新堂? どうした~?」
「大丈夫か~?」
「酔ったって言ってるんだけど……」

 先に降りてやってきたダブケンがマリと新堂の座席を覗き込む。マリは眉を寄せながら彼らに状況を説明する。
 すると、新堂がふらふらと立ち上がった。

「ごめん、大丈夫……」
「本当か~? とりあえず肩貸すから掴まれよ」
「俺も俺も、ほら気をつけて……」

 マリは先にコースターを降り、入れ替わりにダブケンが立ち上がった新堂を支えながらコースターから降ろすのを見守った。

「え、新堂具合悪いの?」
「スミちゃん、そうみたい。酔ったって……」
「大丈夫かなあ?」

 最前列にいたスミちゃんとヨナも降りてきて、ダブケンとアトラクション出口に向かう新堂の背中を心配そうに見送る。マリも彼女たちと共に出口に向かった。

 マリがアトラクションを出ると、近くのベンチに新堂が座るところだった。依然、彼の顔色は青白く体調は悪そうに見え、急いで駆け寄る。

「新堂……」
「マリ……驚かせてごめん」

 力無く消え入りそうな声で返事をする新堂。マリは勢いよく頭を左右に振る。

「そんなのいいから、本当に酔っただけ?」
「ああ、少し休ませて貰えば平気だから……あとで合流するよ」

 全員新堂を置いていくことを嫌がったが、彼自身の「大丈夫だから気にせず楽しんできてほしい」という言葉に、頷き次のアトラクションに向かった。

 しかし、マリはやはり新堂のことが心配で、道中で足を止めた。

「みんな、あの、私やっぱり……」
「行っておいでよ」
「うん、ついててあげてほしい」

 マリの言葉に、スミちゃんとヨナが優しい笑顔で後押しする。

「新堂のこと、頼みます!」
「よろしく!」

 ダブケンも揃って笑顔を見せていた。

「ありがとう、あとで連絡する!」
「「いってらっしゃい!」」

 マリは来た道を引き返すべく、見送ってくれる彼らに背を向け走り出した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

処理中です...