麗しのマリリン

松浦どれみ

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5月

7−1彼の日記5

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 ※※五月中旬、彼の日記より抜粋

 席替えから、順調に彼女との関係は縮まっていた。

 そんなときに今度は宿泊研修でも一緒の班に。

 当日多少の邪魔は入りそうだが、彼女との関係が良好であれば影響はないだろうと彼は思っていた。

 さらに良いことは重なるもので、班のメンバーの一言で、彼と彼女は学校の外で会うことになる。

「よし、当日までに班のみんなの親睦を深めよう!」

 そう言ったあの子には感謝しかないなと彼は思った。

 惰眠を貪り、家事をして本を読むだけの週末が一変する。

 休日にわざわざ待ち合わせをするなんて、何年ぶりだろうか。

 明日が楽しみで眠れないなんてまるで小学生みたいだと、誰が見ているわけでもないのに意外と幼い自分のことが恥ずかしくなった。

 彼女と言葉を交わすたびに。

 彼はゆっくりと、ゆっくりと、失われつつあった感情を呼び覚ましていった。

 それは同時に麻痺させていた痛みも呼び覚ますことになる。

 それらを全て乗り越えて、彼はいつか彼女に、出会った頃の話をしたいと思っていた。
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