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5月
7−2スミちゃんの名案
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宿泊研修の話し合いは翌週も続き、その日は講師への質問についてや二日目に行われる遠足のルート確認をしていた。
その終盤、和気あいあいと話していたマリの二班では、班長になったスミちゃんが「よし!」と言って頷き、メンバーに呼びかけた。
「当日までに班のみんなの親睦を深めよう!」
「「親睦?」」
「どうやって?」
ダブケンやヨナが返事をしながら首を傾げる。マリもそれに合わせて首を傾げた。
スミちゃんが全員の視線が集まったのを確認して、にんまりと笑う。
「じゃ~ん! 日曜日、ここ行こうよ!」
そして、スミちゃんはスマートフォンの画面を差し出した。そこには隣の県にある遊園地の公式ページが表示されていた。
「ユナイテッド・ランド・リゾート?」
「そう! 天気もいいみたいだし、日曜なら部活とかも休みでしょ? どう?」
マリや新堂、二班のメンバーたちは顔を見合わせた。
そして、全員でスミちゃんを見て口角を上げた。
「いいね」
「その日、空いてる」
「俺も」
「俺らも!」
「じゃあ決まりね!」
そう言ってスミちゃんが時間の話などを詰めようとメンバーの輪に入り、二班のメンバーは日曜日の予定について話し合いを始めた。
マリは清流館に転入して以来、ユージ経由以外でクラスメイトと出かけるのは初めてだ。日曜日が楽しみな反面、みんなに馴染むことができるか不安でもあった。
「俺、休みの日に誰かと出かけるの久しぶりだ」
「え?」
隣にいた新堂がマリにだけ聞こえる声で呟く。マリが新堂に顔を向けると、彼は野暮ったい前髪をくしゃくしゃと掴んだ。
「しかも遊園地とか難易度高いな。ちゃんと馴染めるか心配だよ」
マリは新堂が自分と同じように不安を感じていることを驚きつつ、仲間がいたことに安心した。
「私もそう思ってた。ユージたち以外と出かけるなんてほとんど初めてなの」
「じゃあ、お互い仲間がいると思って楽しもう」
「うん!」
新堂の口の端が上がっている。マリはそれを見て同じく笑みを浮かべた。
彼とはつい最近知り合ったばかりなのに。まるで見えなに何かで繋がっているように、それ以上に元々ひとつだった何かを分け合っているように、同じ気持ちを同じタイミングで抱えている。
マリは新堂が隣にいることの心強さを感じながら、日曜日が待ち遠しくてたまらなくなった。
一方、賑やかな二班の様子を見ていたユージは誰にも聞こえないように呟いた。
「うーん。そろそろ軌道修正しておかないとな」
視線の先には、マリの笑顔とそれを向けられている新堂の姿があった。
その終盤、和気あいあいと話していたマリの二班では、班長になったスミちゃんが「よし!」と言って頷き、メンバーに呼びかけた。
「当日までに班のみんなの親睦を深めよう!」
「「親睦?」」
「どうやって?」
ダブケンやヨナが返事をしながら首を傾げる。マリもそれに合わせて首を傾げた。
スミちゃんが全員の視線が集まったのを確認して、にんまりと笑う。
「じゃ~ん! 日曜日、ここ行こうよ!」
そして、スミちゃんはスマートフォンの画面を差し出した。そこには隣の県にある遊園地の公式ページが表示されていた。
「ユナイテッド・ランド・リゾート?」
「そう! 天気もいいみたいだし、日曜なら部活とかも休みでしょ? どう?」
マリや新堂、二班のメンバーたちは顔を見合わせた。
そして、全員でスミちゃんを見て口角を上げた。
「いいね」
「その日、空いてる」
「俺も」
「俺らも!」
「じゃあ決まりね!」
そう言ってスミちゃんが時間の話などを詰めようとメンバーの輪に入り、二班のメンバーは日曜日の予定について話し合いを始めた。
マリは清流館に転入して以来、ユージ経由以外でクラスメイトと出かけるのは初めてだ。日曜日が楽しみな反面、みんなに馴染むことができるか不安でもあった。
「俺、休みの日に誰かと出かけるの久しぶりだ」
「え?」
隣にいた新堂がマリにだけ聞こえる声で呟く。マリが新堂に顔を向けると、彼は野暮ったい前髪をくしゃくしゃと掴んだ。
「しかも遊園地とか難易度高いな。ちゃんと馴染めるか心配だよ」
マリは新堂が自分と同じように不安を感じていることを驚きつつ、仲間がいたことに安心した。
「私もそう思ってた。ユージたち以外と出かけるなんてほとんど初めてなの」
「じゃあ、お互い仲間がいると思って楽しもう」
「うん!」
新堂の口の端が上がっている。マリはそれを見て同じく笑みを浮かべた。
彼とはつい最近知り合ったばかりなのに。まるで見えなに何かで繋がっているように、それ以上に元々ひとつだった何かを分け合っているように、同じ気持ちを同じタイミングで抱えている。
マリは新堂が隣にいることの心強さを感じながら、日曜日が待ち遠しくてたまらなくなった。
一方、賑やかな二班の様子を見ていたユージは誰にも聞こえないように呟いた。
「うーん。そろそろ軌道修正しておかないとな」
視線の先には、マリの笑顔とそれを向けられている新堂の姿があった。
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