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5話 ユニークモンスター

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 それから数分もしない内に先ほど戦ったゴリラもどきの場所に来る。

「あ、あそこがそうだよ!」
「すごい、こんなに早く来れるなんて……」
「早速戦う?」
「え? でもスキルとか準備がまだ……」
「あ、もう入っちゃった」
「え!?」

 私は走りながら彼女に聞いた為、そんな事を話す前にシルバー……なんたらのいる場所に入ってしまった。

 そして、先ほどいたゴリラもどきがいる場所には、何だか違うゴリラがいた。

「あれ? 何だろ」
「ちょっとちょっとちょっと! 待った待った待った待った!」
「どうしたの?」
「どうしたのじゃないわよ! あれシルバーバックゴリラじゃ」
「あ」
「おぼ?」

 ドオン!

「おっぼっ!」
「あ! ごめんなさい!」

 ぶつかってしまったシルバーなんたらにいつもの癖で謝ってしまう。

 シルバーなんたらは私の突撃を腹に受けてしまったからか、思いっきり仰向けに倒されてしまっている。

「あれ? でもシルバーなんたらじゃない?」

 そのゴリラはゴリラなんだけれど、全身真っ黒な毛を生やしている中に赤いラインが何本も入っていた。そして、背の高さも以前の奴の1.5倍くらい高く、体つきもかなりごつい。体当たりした時の感触も何となく違ったような気がする。

「何てことするの! 体当たりしちゃったらもう逃げられないじゃない!」
「逃げるなんてことはしないよ! 当たって砕けろだよ!」
「貴方一人で砕けるならいいのよ! 私まで巻き込まないで!」
「そんなこと言わずに、一緒にゴリラをしばこうよ!」
「しばかれるのは私たちよ! 『胞子シールド』!」

 ガイン!

 ナツキがスキルを叫ぶと、私の上で何かが防がれたような音がする。

 私がそちらを見ると、ゴリラが拳を私目掛けて振り下ろしていた。

「わ!」

 私は急いで逃げるように走り出す。このまま戦っているのはきっと良くない。

「どうしよう。なんか強そうなんだけど」
「なら何で仕掛けたのよ!?」
「勢いは大事かと思って」
「だからってユニーク個体に挑むとか頭おかしいんじゃないの!? 私たちでどうやって勝つっていうのよ!」
「えー何とかならない?」
「なるならこんな怒ってないわよ!」
「まぁまぁ落ち着いて。折角の艶が台無しだよ?」
「誰のせいで……。はぁ、まぁいいわ。もう戦いになっちゃったんだし。どうせやるしかないか」
「そうだよ。それで、さっき言ってたユニーク個体って?」

 私は落ちついてくれたナツキに赤い進入禁止の魔法陣が出る縁を進みながら聞く。サイズは以前とどうやら同じようなので、特に問題はないようだった。

「ユニーク個体は普通には現れないレアなモンスターのことよ。そして、あいつは多分シルバーバックゴリラを倒した後にここに再び来ると、稀に出ることがある特殊なモンスターよ。普通は一回倒しただけじゃほぼ出ないようなモンスターで、何十回と挑み続けて出てくるモンスターなんだから……」
「へー、じゃあラッキーなんじゃない?」

 そんな珍しいモンスターに出会えるなんて、開始そうそうついているとしか思えない。

「何言ってるのよ!? まだ私のレベルは5レベルなのよ!? シルバーバックゴリラですら7レベルはあるのよ? っていうことは、あのユニーク個体はそれ以上に強いのよ!」
「あーだからさっきの体当たりもあんまり効いている感じがしなかったのか」
「さっき? さっきも同じ様に突進したの!?」
「そうだよー。始めて直ぐに走り回るのが楽しくってさー。だからまだチュートリアルも受けてないんだよねー。スキルとかも使い方分かんないし、どうやってやればいいんだろう」
「そんな初歩の初歩をこんなところで話さないでくれる!?」
「いやー、つい」
「ついじゃないのよ!?」
「おっぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!!!」

 ゴシャア と。近くに何かが着弾した様な音が聞えてくる。

「何今の!?」
「岩かなんかを投げて来たわよ!」
「岩!? さっきは糞を投げつけてきてたのに!」
「そうなの?」
「うん。正直かなりヤバかったよ。鼻が曲がって死ぬかと思ったもん」
「それは……やばいわね」
「でも岩でよかったよ。こうやって走ってれば多分当たらないし」

 私は横目でゴリラもどきの動きを確認する。

「おぼっぼぼぼぼっぼ!!!」
「ほっと」

 飛んでくる岩の軌道が私に当たりそうだったので速度を落とさないように何とか躱す。

 ゴシャァ!

「きゃ!」
「大丈夫?」

 私は横目で見て、来ることが分かっていたから大丈夫だけど、ナツキは分かっていても怖いようだった。

「だ、大丈……夫じゃないかも。どうしよう」
「うーん。かと言ってどうやればいいんだろう。もう一回突っ込む?」

 遠距離攻撃はないし、どこかで突撃しなければならない。ああ、こんな時に鋭い牙があればなぁ。

「ダメダメダメダメ。それだけはダメ!」
「どうして?」
「このまま突っ込んでもきっと殴られて終わりよ! だから何か策を考えないと」
「そんなことしてたら時間無くなっちゃうよ?」
「え?」
「ほら、岩が残るみたい」

 私達はさっき投げて来られた岩を躱しながらナツに聞く。

「おっぼぼぼぼぼぼ!!!」

 ゴシャア!

 こうやって話している間にもドンドンと岩が投げてこられる。岩はどこから出しているのかと思ったら、地面から無尽蔵に出てくるようだった。

「ね?」
「ね? ってもううううう!!! せめてスキルくらいは使いなさいよ! 何が使えるのよ!」
「知らない」
「へ!?」
「スキルの使い方知らないって言ったじゃない? まずスキルとかステータスの見方すら知らないんだ」
「そんなのでシルバーバックゴリラを良く倒せたわね!」
「勢いでいけたんだもん。バスターゴリラって称号もゲットしたよ?」
「何の称号よそれは!? ってそんなこと言ってる場合じゃないのよ。まずはステータスオープンって言ってみなさい!」
「それ、走りながらでも大丈夫?」

 そういうのをやる時は足を止めて安全を確認してからってばっちゃんが言ってた。あ、じっちゃんも言っていたかもしれない。

「大丈夫よ! それ……」
「分かった! ステータスオープン!」
「最後まで聞きなさいよ……」

 私がステータスオープンと言うと、私の目の前に半透明のステータス画面が出てくる。

名前:ハル
種族:イノシシ
レベル:8
ステータス
HP:40/40
MP:0/0
STR:52
VIT:29
INT:3
DEX:5
AGI:41
スキルポイント:80

スキル:突進、ぶちかまし、疾走、嗅覚強化
魔法:
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