【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

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52 オルクス公爵家の未来

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 それからというもの月に二回になったお茶会はキャリーナとメイロッテが交互に参加するようになる。
 メイロッテに対してのルナセイラはきっちりと一線を引いており、城内を案内するもエスコートはせず隣に並び歩くだけだし、笑顔も然程見せることがなかった。王城王宮の者たちはメイロッテへの印象は『次期王妃陛下となるアリサの相談役になるべく勉強をしている者』という前向きで応援すべき対象者となっていった。それゆえ、メイロッテの質問には喜んで答えたし、時には騎士団の訓練にも参加できるようにまでなっていた。

 サンビジュムもメイロッテの立場には気を使い、ルナセイラを含めたお茶の時間はサンビジュムの執務室脇の応接室で過ごしその部屋にはサンビジュムが信用する側近だけが残るようにした。そのおかげでその時間だけはルナセイラは満面の笑顔でメイロッテに接し、そういうきちんとした心配りとギャップによってメイロッテは心をゆるすようになっていく。

『親しい友人くらいにはなれたかな? ここで急いでは仕損じる。あくまでもズバニール君とメイロッテ嬢との婚約が解消されるまでは紳士でいなくては』

 恋愛に鈍感で責任感が強いメイロッテはルナセイラを異性として見ることはなかった。

 そしてアリサたちが入学した。

 〰 〰 〰

 アリサとケネシスはワイドン公爵家へ向かう馬車の中でケネシスは改めて婚約者としてアリサの手を取れた喜びを噛み締めていた。

『学園でクラスメートになれた時にはとても幸せだと感じていましたが、それは序章に過ぎませんでしたね。アリサと婚約できるだなんて。これほどの感動が待っているとは本当に神にでも悪魔にでも感謝したいくらいです』

 照れてそっぽを向いてしまっているアリサの横顔をケネシスは幸せそうに顔を緩めて見つめている。テッドがその様子を見たら驚愕の雄叫おたけびを上げたに違いない。
  
『それもこれもエイミー義姉上ねえさんがワイドン公爵家を後継してくれるおかげです。そしてオルクス公爵様が女性後継者を認める法案を通してくれたおかげですね。
アリサはずっとオルクス公爵家の行く末を気にしていて、王妃にならなかったらオルクス公爵家の秘書官になると宣言していましたからね。ズバニール殿を支えるつもりだったということでしょう。そうなったとしても、ズバニール殿がアリサの助言を素直に耳に入れるとは思えません。
オルクス公爵はよく女性当主法案をこれほど迅速に通したものです』

 ケネシスは義父となるカイザー・オルクス公爵がアリサとメイロッテが婚約者と仲良くする姿に渋った顔を思い出し苦笑いをした。

『義父に焼きもちをやいてもらえるくらいにはアリサと仲良くなれたということですかね』
 
 それに気が付いたアリサが首を傾げる。

「大したことではないですよ。僕には偉大な義父親ちちおやが二人になるのだと感慨に浸っていたのです」

「そうね。わたくしたちもお父様に負けないよう領地を盛り立てましょうね」

「もちろんです」

 アリサとケネシスが決心を固めていた頃、カイザー・オルクス公爵は自室で一人ワインを飲んでいた。

「旦那様。ほどほどになさってくださいませ。まだ夕餉にはお早いお時間です」

「今日のところは許せ」

 カイザーはあおるようにグラスを飲み干した。初老の執事長がため息とともにグラスにワインを注ぐ。

「あれはどうしている?」

「奥様でしたらズバニール坊ちゃまのお側で励ましておいでです。お二人共かなり憔悴しょうすいしております」

「ワシらが甘やかした結果だというのにまだなお甘やかすか……」

「母親でございますればしかたありません。アリサお嬢様は幼き頃よりしっかりとなさっておいででしたので、尚更ズバニール坊ちゃまに傾倒なさることになってしまわれたのでしょう」

 カイザーはアリサとズバニールの思い出をよみがえらせた。 

「…………そうか。確かに親としては頼られることは嬉しくないはずはないな」

「はい、そのようです。奥様はズバニール坊ちゃまとともに男爵領へ行かれるご決意をなさったご様子です」

「だろうな。ワシもズバニールが学園を卒業するまでには男爵領へ移るつもりだ」

「では数カ月後には?」

「イヤ、二年後だ。ズバニールは東部学園の一学年に編入させる。たった半年ほどでは東部での人脈作りなどできまい。
それまではこれまで同様ワシがここから指示を出し管理人に任せる」

「それは大変に素晴らしいご判断かと思います」

「お前にはアリサとケネシスを頼んだぞ」

「ホッホッホ。わたくしもそれほど長くは務められませぬゆえ、そろそろ孫を本格的に指導してまいります。二年後には使えるようになりましょう」

 執事長の息子はオルクス公爵家の持つ飛び地の管理人をしていて孫はオルクス公爵邸の執事の一人である。執事長は領地を持たない男爵位を賜っているため息子も孫も王都学園を卒業している。

 カイザーの自室の壁に立つ執事がひっそりと肩を落としたのは誰にも気が付かれななかった。
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