【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
20 / 57

20 三学年進級

しおりを挟む
 アリサたちは三学年になったがクラス編成変更は数名に留まりアリサと友人二人とケネシスとテッドはAクラス、ズバニールはCクラス、パレシャは安定のEクラスであった。

 アリサがケネシスとテッドにアドバイスする。

「例のご令嬢にはある程度相手になって差し上げれば納得するようですわ。お二人があの方を避けてお二人の印象が他の生徒のみなさんに悪くなってしまわれるより少しだけあの方のご希望に答えてあげた方がよろしいのですわ」

 学園は社交界への入り口に違いないので二人の印象というのは将来にとって大事なものになっていく。

「それならばアリサ嬢もあれの希望を叶えてイジメをするなどしては印象が悪くなるのではないのですか?」

「わたくしはイジメというよりは正論を並べて差し上げようと考えておりますの。女の世界では正論の言い方次第で相手への攻撃にも自分の失態にもなりますのよ」

「深いですね…」「おそろ…しい…」

 片方はにやりと笑い、片方は肩を震わせた。

 こうしてケネシスは図書室で時々パレシャの勉強を見てやるようになり、テッドは目の前で転ぶパレシャに手を差し伸べてやるようになった。テッドの場合はパレシャが時折派手に転びすぎて太ももをさらけ出すこともあるため手を差し伸べるではなく大急ぎでパレシャを持ち上げてしまうこともあった。ただしお姫様抱きではなく脇の下に手を入れ大きな人形を持ち上げるがごとくな扱いだ。
 アリサからのアドバイスとは知らないパレシャはすこぶるご満悦で二人の好感度が瀑上がりだと思っている。

「どうしてあそこまで飲み込みが悪いのか理解しがたい…」
「どうしてあのように転倒を繰り返すのか全くわからない……」

 二人の嘆きにアリサをはじめとした周りの者たちは苦笑いで二人を応援している。

 そんなある日、パレシャが廊下で飾り紐で作れらたブックバンドを落とした。通りすがりの女子生徒がそれを拾ってパレシャに渡す。

「わっ! 大事なものなのよ! 返して!」

 ブックバンドなのだからそれが単体で落ちるのはおかしなことだし、大事なものにしては乱雑に抱えているだけのようにしか見えないが、拾ってくれた女子生徒にお礼も言わず奪い取るようにして睨みつけ踵を返して離れていった。

 そんなパレシャの態度よりもブックバンドに使われている金具の紋章が気になった女子生徒は図書室へ急いだ。

 翌日の朝、アリサは執事服の男とメイドと革の胸あてを付けたガタイのいい男を伴い三年Eクラスに来た。誰に用事があるのかわかりきっている生徒たちは様子を見守るだけである。

「ユノラド男爵令嬢様。少々よろしいかしら?」

「アリサ! じゃなくてオルクス公爵令嬢様。何の用?」

『みなの前では名前は呼ばないということだけはできるようになりましたのね。ですが敬語が使えておりませんわ。マナーの先生のご苦労が不憫でなりませんね』

 アリサは気を取り直してパレシャの机の上を見てインク瓶を持ち上げそれを確認するように見た。

「ユノラド男爵令嬢様は紋章の価値についてお考えになったことはございますか?」

 パレシャは何もわからずに首を傾げる。

「紋章は各家毎に全て異なりすなわちそれはその家の証であります。ですからその紋章を使用することはその家の者であると言っていることと同意なのです」

「はあ?」

「貴女はなぜ我が家の紋章の付いた物をお使いになっていらっしゃるのですか?」

 クラスの者たちは正しく理解しているためどよめきが起きた。パレシャは不思議そうにキョロキョロしてからアリサに向き直りアリサの手の中のインク瓶を指差す。

「え? あ、これ? ズバニールにもらったの!」

 話がわかっていないパレシャは自慢気に報告した。

「やはりそうでしたのね。我が家門を貶めることになりかねませんのでこれらは没収させていただきます」

「え? なんで?」

「徹底的に探して」
「かしこまりました」

 ガタイのいい男がパレシャを椅子ごと持ち上げて机から離すと下ろした地点でパレシャの肩をがっしりと抑えた。メイドがパレシャの机の中などを確認する。

「ちょっと! 人の荷物に何してんのよ! こんなこと許されるわけないじゃん」

「ご安心なさい。我がオルクス公爵家として家門の名誉を守るため正式に学園に調査を申請し回収する旨をご許可いただいております」

 アリサが目配せした廊下の方には担任の男性教師と衛兵が待機して様子を見守っている。パレシャは驚きで目を見開いた。

「みんなでグルなの?!」

「グル? ここは貴族の矜持やマナーや常識を学ぶ場所ですわ。そのための処置ですので教育の一環と言えますから学園長様もたいへん積極的に賛成なさってくださいましたわ」

 パレシャが足をドタバタさせ何やら喚いている間にメイドによってどんどんと出されていく。 
 ノートやらブックバンドやら鉄製栞やら革ブックカバーやらペン先やら…あらゆるものが没収されることになった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

侯爵令嬢に転生したからには、何がなんでも生き抜きたいと思います!

珂里
ファンタジー
侯爵令嬢に生まれた私。 3歳のある日、湖で溺れて前世の記憶を思い出す。 高校に入学した翌日、川で溺れていた子供を助けようとして逆に私が溺れてしまった。 これからハッピーライフを満喫しようと思っていたのに!! 転生したからには、2度目の人生何がなんでも生き抜いて、楽しみたいと思います!!!

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

ぼっちな幼女は異世界で愛し愛され幸せになりたい

珂里
ファンタジー
ある日、仲の良かった友達が突然いなくなってしまった。 本当に、急に、目の前から消えてしまった友達には、二度と会えなかった。 …………私も消えることができるかな。 私が消えても、きっと、誰も何とも思わない。 私は、邪魔な子だから。 私は、いらない子だから。 だからきっと、誰も悲しまない。 どこかに、私を必要としてくれる人がいないかな。 そんな人がいたら、絶対に側を離れないのに……。 異世界に迷い込んだ少女と、孤独な獣人の少年が徐々に心を通わせ成長していく物語。 ☆「神隠し令嬢は騎士様と幸せになりたいんです」と同じ世界です。 彩菜が神隠しに遭う時に、公園で一緒に遊んでいた「ゆうちゃん」こと優香の、もう一つの神隠し物語です。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

婚約者はこの世界のヒロインで、どうやら僕は悪役で追放される運命らしい

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
僕の前世は日本人で25歳の営業マン。社畜のように働き、過労死。目が覚めれば妹が大好きだった少女漫画のヒロインを苦しめる悪役令息アドルフ・ヴァレンシュタインとして転生していた。しかも彼はヒロインの婚約者で、最終的にメインヒーローによって国を追放されてしまう運命。そこで僕は運命を回避する為に近い将来彼女に婚約解消を告げ、ヒロインとヒーローの仲を取り持つことに決めた――。 ※他サイトでも投稿中

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

処理中です...