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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
104. 女神の贈り物(ギフト)
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女神の贈り物(ギフト)
このこぢんまりとした小屋に、大の大人の男性が6人も入っているのだ、狭いに違いない。
やや広めの、キッチンとおトイレもある女性独り暮らしワンルームマンションの一室、くらいのものである。
内緒の話をするのに、ここがいいとのことで、ハルカスさんとベーリングさんはカインハウザー様の後ろに立っているし、ドルトスさんはお屋敷から一人掛け用のソファを持ち込んだ。お気に入りなんだそうだ。
椅子の数が足りないので、小屋の裏に置いてあった、薪にするには太いが男の人の椅子にするには細い切り株を、サヴィアンヌの妖精魔法で簡単な椅子に変えた物に、キーシンさんとロイスさんは、座っているのだ。
目上で班長さんのハルカスさんや、ベーリングさんが立っているのに、若い二人が座っているのは、勧められたからと、ハルカスさんとベーリングさんが、カインハウザー様の背後に、護衛のように立つ事を希望したからでもある。
もしかしたら、キーシンさんは貴族だからかもしれない。衛士としての階級はお二人の方が上でも、国の制度としての階級は、キーシンさんが優先される場合もあるのだろう。
手狭だけど、サヴィアンヌの妖精魔法で、誰も立ち入れないし、ここでの会話は外には漏れないように、結界が張られたのだ。
現状、ここへ入ったり会話を聴いたりできるのは精霊だけである。
手捻りのティーカップでお香茶を啜り、優雅にテーブルに戻すと、カインハウザー様が、話を再開させる。
「それで、不安というのは?」
「え、あ……の、」
「心配ない。サヴィアンヌのおかげで、ここでの会話は外には漏れないし、今ここに居る人間はみな、口は硬い。ロイスも、一度他言無用となったら絶対に口にはしないさ」
「なんで、俺を引き合いに出すんですか」
「なんでだと思う?」
リリティスさんに質問返しされて、涙目で黙るロイスさんだった。
「いえ、それは、疑ってませんが……」
「なら、大丈夫だろう? 話してごらん」
カインハウザー様に促され、一度お香茶で喉を潤してから、自分でも整理しきれない感情を少しづつ言葉にして、舌に乗せる。
「自分でも、よくわからなくて、うまく言葉に出来ないんですけど……」
「構わないよ。わかるところからゆっくりでいいから」
瘴気を浄化できた事は、純粋に、嬉しいし安心できる事だ。
でも、彼女達が浄化できるようになったのに、その事も、美弥子達の存在自体をいつまでも公表しないのはなぜなのか。
瘴気を浄化できなければ、人が住めない、封印された土地ばかりになるのではないのか。
「確かに、その通りだよ。浄化出来るのを国王にも国会にも伝えず、彼女らを秘匿する行為は、本来あり得ない事なんだ」
「今回の浄化も他言無用とは、大神官はなにを考えているのか」
「巫女を独占したいんですかね?」
「そんな事をして、なんの得がある?」
誰も、その答えを持ち合わせていない。
美弥子達が、浄化出来るようになったのは、喜ばしい事なのだ。
なのに、不安が拭えない。
「今回浄化をして、アリアンが光弾を撃ち込んだ事や、大精霊が瘴気と闇落ちを串刺しにした過程に、私がいた痕跡などは、彼女達や神官達に悟られたでしょうか」
「たぶん、神官達は大丈夫だろう…… あれらは、鈍い。契約した精霊しか見えていないようだし、シオリの霊力や魔力を正しく測れないからこそ、放り出したのだろうからね」
カインハウザー様は、たぶんとは言いつつも、確信があるようだった。
「美弥子に、私は穢れてるんだと、顔も見たくないと言われて、彼女が不安定になったから……
美弥子に仕事をさせるために、美弥子を優先するために、私を棄てたんじゃ……」
声が震える。カインハウザー様の顔がぼやけて見えなくなっていく。
リリティスさんが立ち上がって、柔らかく温かいお胸に、私の頭を抱えてくれた。
「違うね」
冷静に、キッパリとカインハウザー様が否定してくれる。
「え? 何……が、ですか?」
「確かに、ミヤコの機嫌をとらなくてはいけないだろうし、態々手を尽くして手に入れた聖女だ、最優先するだろう」
一口香茶を含み、唇と喉を潤してから、続ける。
「だが、もし君の能力に気づいていたら、精霊に愛される女神の祝福を感知していたら、いかに聖女が君を排除したいと言っても、絶対に手放さなかっただろう」
「間違いないね」
ドルトスさんも同意した。
「なぜ?」
「聖女や巫女は、国の、人々の、大切な生命線だ。最優先される。だが、浄化能力を最優先するというのなら、それは、シオリ、君も同じだ」
「わ……たし? 浄化出来ません、けど」
「今はね。だが、女神の祝福と精霊に愛されるという女神の加護は、あの聖女達より遥かに、多様な可能性がある。げんに、アリアンロッドを生み出したじゃないか」
ワタシ? と言いたげに、アリアンがカインハウザー様の肩にくっついて、顔を覗き込む。
「君が、花畑を妖精達を助けたいと望んだだけで、大精霊達が動き、瘴気と闇落ちを串刺しにし、活動を停止させた。そこには、なんの代償も要らない、純粋な精霊の好意だ。
精霊術士だとて、霊力と魔力を代償に、契約を結んだ精霊だけが手を貸す」
君のギフトに気づかない神官達は、間違いなく無能で愚かだよ。
このこぢんまりとした小屋に、大の大人の男性が6人も入っているのだ、狭いに違いない。
やや広めの、キッチンとおトイレもある女性独り暮らしワンルームマンションの一室、くらいのものである。
内緒の話をするのに、ここがいいとのことで、ハルカスさんとベーリングさんはカインハウザー様の後ろに立っているし、ドルトスさんはお屋敷から一人掛け用のソファを持ち込んだ。お気に入りなんだそうだ。
椅子の数が足りないので、小屋の裏に置いてあった、薪にするには太いが男の人の椅子にするには細い切り株を、サヴィアンヌの妖精魔法で簡単な椅子に変えた物に、キーシンさんとロイスさんは、座っているのだ。
目上で班長さんのハルカスさんや、ベーリングさんが立っているのに、若い二人が座っているのは、勧められたからと、ハルカスさんとベーリングさんが、カインハウザー様の背後に、護衛のように立つ事を希望したからでもある。
もしかしたら、キーシンさんは貴族だからかもしれない。衛士としての階級はお二人の方が上でも、国の制度としての階級は、キーシンさんが優先される場合もあるのだろう。
手狭だけど、サヴィアンヌの妖精魔法で、誰も立ち入れないし、ここでの会話は外には漏れないように、結界が張られたのだ。
現状、ここへ入ったり会話を聴いたりできるのは精霊だけである。
手捻りのティーカップでお香茶を啜り、優雅にテーブルに戻すと、カインハウザー様が、話を再開させる。
「それで、不安というのは?」
「え、あ……の、」
「心配ない。サヴィアンヌのおかげで、ここでの会話は外には漏れないし、今ここに居る人間はみな、口は硬い。ロイスも、一度他言無用となったら絶対に口にはしないさ」
「なんで、俺を引き合いに出すんですか」
「なんでだと思う?」
リリティスさんに質問返しされて、涙目で黙るロイスさんだった。
「いえ、それは、疑ってませんが……」
「なら、大丈夫だろう? 話してごらん」
カインハウザー様に促され、一度お香茶で喉を潤してから、自分でも整理しきれない感情を少しづつ言葉にして、舌に乗せる。
「自分でも、よくわからなくて、うまく言葉に出来ないんですけど……」
「構わないよ。わかるところからゆっくりでいいから」
瘴気を浄化できた事は、純粋に、嬉しいし安心できる事だ。
でも、彼女達が浄化できるようになったのに、その事も、美弥子達の存在自体をいつまでも公表しないのはなぜなのか。
瘴気を浄化できなければ、人が住めない、封印された土地ばかりになるのではないのか。
「確かに、その通りだよ。浄化出来るのを国王にも国会にも伝えず、彼女らを秘匿する行為は、本来あり得ない事なんだ」
「今回の浄化も他言無用とは、大神官はなにを考えているのか」
「巫女を独占したいんですかね?」
「そんな事をして、なんの得がある?」
誰も、その答えを持ち合わせていない。
美弥子達が、浄化出来るようになったのは、喜ばしい事なのだ。
なのに、不安が拭えない。
「今回浄化をして、アリアンが光弾を撃ち込んだ事や、大精霊が瘴気と闇落ちを串刺しにした過程に、私がいた痕跡などは、彼女達や神官達に悟られたでしょうか」
「たぶん、神官達は大丈夫だろう…… あれらは、鈍い。契約した精霊しか見えていないようだし、シオリの霊力や魔力を正しく測れないからこそ、放り出したのだろうからね」
カインハウザー様は、たぶんとは言いつつも、確信があるようだった。
「美弥子に、私は穢れてるんだと、顔も見たくないと言われて、彼女が不安定になったから……
美弥子に仕事をさせるために、美弥子を優先するために、私を棄てたんじゃ……」
声が震える。カインハウザー様の顔がぼやけて見えなくなっていく。
リリティスさんが立ち上がって、柔らかく温かいお胸に、私の頭を抱えてくれた。
「違うね」
冷静に、キッパリとカインハウザー様が否定してくれる。
「え? 何……が、ですか?」
「確かに、ミヤコの機嫌をとらなくてはいけないだろうし、態々手を尽くして手に入れた聖女だ、最優先するだろう」
一口香茶を含み、唇と喉を潤してから、続ける。
「だが、もし君の能力に気づいていたら、精霊に愛される女神の祝福を感知していたら、いかに聖女が君を排除したいと言っても、絶対に手放さなかっただろう」
「間違いないね」
ドルトスさんも同意した。
「なぜ?」
「聖女や巫女は、国の、人々の、大切な生命線だ。最優先される。だが、浄化能力を最優先するというのなら、それは、シオリ、君も同じだ」
「わ……たし? 浄化出来ません、けど」
「今はね。だが、女神の祝福と精霊に愛されるという女神の加護は、あの聖女達より遥かに、多様な可能性がある。げんに、アリアンロッドを生み出したじゃないか」
ワタシ? と言いたげに、アリアンがカインハウザー様の肩にくっついて、顔を覗き込む。
「君が、花畑を妖精達を助けたいと望んだだけで、大精霊達が動き、瘴気と闇落ちを串刺しにし、活動を停止させた。そこには、なんの代償も要らない、純粋な精霊の好意だ。
精霊術士だとて、霊力と魔力を代償に、契約を結んだ精霊だけが手を貸す」
君のギフトに気づかない神官達は、間違いなく無能で愚かだよ。
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